スタートアップに投資する側だった私が、TikTokに賭ける側になった理由
私はもともと、TikTokに全然興味がありませんでした。
個人としては、本や映画、ドラマなどの尺の長いコンテンツの方が好きでした。同じような方も多いかもしれません。
そんな私が5年前にTikTok特化の事務所・代理店の2代目社長になりました。
そんな私がなぜTikTokに人生を賭けようと思ったのか。
当時の想いを振り返りながら書きたいと思います。
なくなりそうだったTikTok
「TikTokが使えなくなったらどうするのか?」
私がstudio15に最初にかかわり始めたのが、2020年。その時のTikTokは、第1次トランプ政権でTikTokの利用禁止が議論されていた時期でした。それ以降繰り返される議論でしたが、当時は初めてのタイミングだったので、真剣に存続するのか議論され、クライアントからも冒頭のような質問は何度も受けていました。
当時は瑛人の「香水」や「きゅんです」、などTikTok発で楽曲やミームが盛り上がったり、書籍がTikTok売れするなど、若年層中心にユーザー側の行動の圧倒的な勢いがある一方で、ビジネスパーソンにはあまり重視されておらず、広告媒体としての活用もごくわずかにとどまっていました。
なんとなく流行っているけど、大人からはまだまだ怪しさを伴って見られているような状況だったと思います。
当然、当時はTikTok特化で事業を行う会社も、まだ数社程度に限られていた状況でした。
「意外ですね」
私のキャリアを聞くと多くの方から言われます。
高校までハンドボール部での活動に全てを捧げていた私はその反動で、大学の経済学科で経済・金融の勉強にハマり、大学時代は自分で本を買ったりして大学生にしては結構勉強をしていました。
その流れで、新卒で大和証券グループの大和アセットマネジメントという上場企業に投資をしたりする会社に入りました。その後、2017年にstudio15の親会社である株式会社セレスの経営企画室に入り、スタートアップ投資やM&Aなどの経営企画業務を行っていました。
TikTokとは無縁のキャリアだったと思います。
そんな私ですが、セレスで投資を行う中で、徐々にTikTokに近づいていきます。セレスはポイントサイト「moppy」やアフィリエイトASP「AD.TRACK」などを運営しているので、その近接領域で投資を行う中で、メディア、SNS、インフルエンサー、D2C、クリエイターエコノミー、ブロックチェーン等の領域での投資が増えていきました。
その活動を通して、徐々にSNS、インフルエンサーの持つ力の大きさを感じていました。
当時、トリドリに投資をしていたので、Instagramアフィリエイトが伸びているのを見ていたり、D2Cの複数の投資先がインフルエンサー施策を活用して事業を伸ばしていたので、メディア構造の変化を感じていました。
そんな中で、次のメディアのフォーマットは何だろうと下記の本等を読んでいた時に、短尺×動画×レコメンド(受け身)というフォーマットを体現するTikTokなのかなと思うようになりました。
新聞、ラジオ、テレビ、SNSとフォーマットは変えつつ、基本的に人間は情報がリッチな方に、楽な方に、流れてきたからです。
そういう意味で、TikTokを超えるリッチで、楽なフォーマットが思いつかない以上、スマホというデバイス環境の前提においてはTikTokは最終終着点のように思えました。
studio15との出会い
TikTokへの思いをとどめきれなくなり、投資先候補としてTikTokの会社を探しはじめました。
実際に何社か連絡して会い、その中の1社がstudio15でした。当時、studio15の役員には別の投資先で役員をやっていた方が入っていて縁がある会社でした。しかも、当時の社長と私は誕生日が同じで運命的なものを感じました。
一方で、まだまだTikTokは広告媒体として全然売れるものではなく、当時のstudio15は、社員がインターンを入れて3人の会社で売上が年間で数千万円というような会社でした。
当時は、今となっては懐かしいエフェクトを使ったダンスチャレンジや、インフルエンサーを起用した楽曲のPR、動画制作などでマネタイズをしていました。たまに試験的に活用されるような広告媒体だったと思います。

投資、M&A、そして社長へ
勢いとポテンシャルを感じる一方、足下の市場や会社としてはまだ確信が持ちにくい状況。
ただ、投資をする立場で様々なメディアの勃興やスタートアップの成長に触れ、新しいものの定着は想定しているより時間がかかるのを見てきたので、TikTokの勢いと構造的なポテンシャルがある限り、時間の問題だと思っていました。
「よく当時判断できましたね」とよく言われますが、個人的には特に迷いもなく、決断していました。(とはいえTikTok Shopの実装まで5年も待つとは思いませんでしたが、、、)
また、当時中国版TikTokのDouyinでは、今のTikTok ShopにあたるEC機能がすでに実装されていて、購買のあり方を大きく変えていたので、いずれ日本のTikTokに実装されたときには大きく世の中を変えるだろうなとタイムマシン経営的なものを感じていました。

当時から口紅王子等ライブコマースで記録的な売上を上げていた
そんな中で、当時のstudio15経営陣と会話し、マイノリティ出資ではなくM&Aでの売却を考えているとのことだったので、2020年にマイノリティで出資、2021年にM&Aで完全子会社化することにしました。
M&A時の資料を振り返ると、TikTok Shop(EC)やクリエイターエコノミー的な事業展開等、当時想定していた将来像が今につながっていて懐かしいです。

また、個人のキャリアとしても、投資をしていろいろな会社と関わる中で、投資ではなく事業側に回りたいなと考えるようになっていました。TikTokに大きな可能性を感じている中で、セレスの都木社長に自ら代表になりたいと思っていることを伝え、代表になることになりました。
結果として、ソーシングから出資、M&A実務だけでなく、自ら代表までやることになりました。
ちなみに、M&A時のプロジェクトネームは、当時のオフィスが渋谷の桜丘町にあったので、Cherryでした。笑
個人として好きなコンテンツは本や映画、テレビでしたが、自分の好きなことを仕事としてやるより、大きく成長していくものに取り組んで成長させていくことに仕事として興味があるので、個人のキャリア観としてもTikTokはすごくしっくり来て人生を賭けていく価値のあるテーマだなと思っていました。
M&A時の想定とリアル
M&A時の想定の一つに、垂直統合によるシナジーがありました。
親会社のセレスでは、累計250万足販売の「ピットソール」等のD2Cブランドを多数自社で展開しているほか、投資先にもD2Cブランドが多いです。また、「AD.TRACK」としてアフィリエイト代理店事業も展開しています。そのほか、インフルエンサーマーケ事業を展開する投資先などもありました。
そのため、代理店・メディアのレイヤーであるstudio15と各商流のリソースを連携していくことを想定していました。

もう一つに、セレスでは、クリエイターエコノミー領域のスタートアップへの投資も複数行っているほか、暗号資産(NFT)領域の事業・投資も行っているので、studio15のクリエイター事務所機能と連携したクリエイターエコノミー文脈での連携も想定していました。
今になって振り返ると、すべて想定通りにいっているわけではなく、認知・ブランディング領域のクライアントが多いstudio15に対して、成果報酬領域のクライアントが多いセレスでうまく連携できていない部分もまだ大きいです。
ただ、2025年に始まったTikTok Shopを皮切りにstudio15でも成果報酬領域の事業展開が増えており、下記の記事等のように、ようやく事業連携が進んできたなという感じで、これからいよいよシナジーを効かせた事業拡大ができそうで楽しみなところです。
社長になってからの5年間
そんな感じで2021年10月にM&A・社長就任しましたが、広告代理店の勤務経験もクリエイター事務所の勤務経験もないので、最初は見よう見まねで営業をしたり、クリエイターにDMしてクリエイターとMTGをしたり、いろいろやりながら覚えていきました。
当時、声をかけて入ってくれたイケメンズは俳優としてのスキルを活かして、今では「ドラマみたいだ」等、studio15のショートドラマ事業の制作や出演で活躍をしてくれています。今となっては主力事業の一つであるショートドラマ事業もイケメンズがいなければ出来ていなかったので、感慨深いです。

高橋は元YouTuberで当時一般社員として入社

ここに至るまで、うまくいかない時期や、人が一気に辞めてしまった時期もありました。その一方で、2022年ごろからはTikTokの市場も拡大し始め広告利用が増え始めたり、2023年ごろからはショートドラマ市場が誕生し、studio15としてもショートドラマ事業に取り組んだりもしました。
良いこと悪いことそれぞれこなしながら、市場とともに会社としても成長してきたなという感じです。
一方で、これまでのTikTok市場の成長は認知・ブランディングでの広告活用によるものが大きく、想定していたTikTok Shopは2025年になってようやく日本で実装されました。
下記の記事に書いたように、これからがいよいよ本番だなという感覚です。
大きな市場は長い時間軸で取り組む必要があるからこそ、やりがいがあるなと思います。
最高の瞬間
TikTok事務所をやっていると、上記のイケメンズの他、様々な思いを持ったクリエイターと一緒に仕事をします。
studio15では、オフィスで一緒に働いてくれているクリエイターがいたり、動画の制作等でクリエイターと一緒に仕事をすることが多いです。
クリエイターと日常的に時間を過ごすことが多く、ランチや飲み会も含めてクリエイターが身近に常にいます。
そんな中で、会社設立間もない初期のころから事務所に所属してくれているきょんぺいが、この前結婚式を挙げ、会社のメンバーと一緒に参加し、主賓挨拶までさせていただきました。
長年一緒にやってきたクリエイターが、カップルクリエイターから、夫婦となる瞬間を見届けられるのはこの仕事ならではの魅力だなと思います。

物事に長く向き合い続けてきた時間が人生を豊かにします。
TikTokはこれからが本番です。TikTokには長く向き合い続けるだけの市場の大きさ、懐の深さがあります。
是非キャリアを飛躍させたい方の応募をお待ちしています!
note、Xを始めたばかりなのでぜひフォローお願いします!
1本目の記事ではTikTokに2025年に生じた大転換について書いています。
岩佐琢磨(studio15株式会社 代表取締役)
・大和アセットマネジメントに新卒で入社→2017年より東証プライム上場企業の株式会社セレスにて経営企画室でスタートアップ投資・M&Aを担当
・2020年にstudio15へ出資、2021年10月にM&Aによる完全子会社化と同時に代表取締役就任
・studio15は2019年設立。TikTok特化の広告代理店・クリエイター事務所(所属クリエイター約300組)
・これまで500社・5,000件以上のTikTok施策を支援(2026年6月時点)
・TikTok Shop認定代理店(TSP/TAP/CAP/ISV)
・TikTok GO認定エージェンシー
・累計6億再生のTikTok ショートドラマアカウント「ドラマみたいだ」運営
・TikTok for Businessが提供する公式の認定資格「TikTok Media Buying Professional」保有
