見出し画像

【小説・ヴィーナス症候群】[571]冬のギャル

「オシャレは我慢、ってよく言うよね?」

歌舞伎町のショットバー「FOLLY」で、カウンターの中にいるバーテンのソータが、いかにも分かった風な顔で言った。

サイセイ義肢で「トルソーさん」として働く割出結菜は、幼なじみでネイリストのナナセに連れられて、最近この店に顔を出すようになっていた。(458

「まあ、うちらもさ」
ナナセがグラスを揺らしながら言う。
「冬の金沢で、普通に生足出してたよね」

「ギャル高の意地?」
結菜が苦笑いする。

「でもさぁ」
結菜は自分のタートルネックを軽く義手の指で叩いた。
「肩肘張らない友達と一緒の時は、私も平気でタイツとかレギンスとか履くんだけどね」(509

「てか、そもそもスカート履かねえし」
ナナセが即座に返す。

ソータはグラスを磨きながら、ふたりの会話を黙って聞いている。

「でもね」
結菜は話を続けた。
「私、義肢屋だからさ。研究会とかで、結構いろんな所に出張行くの」

「へえ」
「この前なんて、札幌」

「寒そ〜」
ソータが思わず口を挟む。

「でしょ? 札幌ぐらいになると、さすがの私でも最初からタイツ履いてくわけ。110デニールとか160デニールとかの分厚いやつ」
結菜はそう言ってから、少し間を置いた。
「ところがさ、夜になってススキノの飲み屋開拓しようと思って歩いてたら──」

「いたの?」

「いたの」
結菜は頷く。
「生脚ショーパンで、脚の肉ブヨンブヨンさせながら吹雪の中歩いてる子」

「うそでしょ」
ナナセが吹き出す。

「私もさすがに『凍傷ならないの?』って思ったよ」
結菜は肩をすくめた。
「だってさ、私が凍傷になって、脚まで切断したらさ……」

一拍置いて、

「もうダルマなるしかないじゃん」

ナナセが腹を抱えて笑い出す。
「ギャハハハハハ!」

ソータは、磨いていたグラスを止めた。

「……ちょっと、笑っていいのか分かんねえわ、それ」

#AI小説 #小説 #ヴィーナス児 #ヴィーナス症候群 #近未来小説
#割出結菜
#お疲れカツカレー

いいなと思ったら応援しよう!