よもすえ団のみなさんが、ゆるゆると地球を侵攻中です!(改訂版)その6
【よもすえ団結成と地縛霊出動!】
青白く輝く水晶玉と、ふわふわ浮かんでぼんやり光る人魂と。
それら霊子の光に照らされる中、5匹のお子様お目目ぱちくりお口をあんぐり。
目の前の出来事に興味はあるけど、実はちょっとコワかった。
彼らがが持つ、ほんの少しの好奇心。
それがこんな形になるなんて。
当の本人たちが一番びっくりしてました。
水晶玉に最初に触れたももちゃんですが、お目目を丸くしたままでした。
それからびっくりし過ぎてばたんきゅー。
ずちころねんがあわてて彼女を介抱します。
多次元精神体の力で構築された霊界映像が、想念スクリーンに現れます。
そのうち興奮してきたぱふんとちょこぺんは、室内をバタバタ走り始めます
空間に映し出されたのは、完全に事故を起こして大騒ぎする霊界放送局のスタジオでした。
『しばらくお待ちください』
急にスクリーンに映し出される映像が変わります。
「あれ?なんだこれ、つまんねーの」
走り回るのをやめて、ぱふんがテロップを見て言いました。
「事故だな。こりゃ、放送は打ち切りかも知れん」
ちょこぺんもぱふんの側で呟きます。
「ねーねー。別なチャンネルにしてよ。ちぃたん【しゅごれいさんといっしょ】が観たい」
それはどうやら、高次元世界の幼児番組の様です。
高次元多層空間の異世界からやって来た、謎の生き物5匹のちびっ子。
無邪気でピュアな生き物です。
無邪気だからこそ、それは予測不明なカオスです。
選別されない、意図されない純粋な存在。
これは観測者が触れた、無限世界の一つの側面。
何が起きるのか。
どこへ向かうのか。
誰にも分からない。
ただ言えるのは。
すべては愛するべき世界の、位相の形の一つです。
そうこうしているその間に、ももちゃんが息を吹き返しました。
「にゃぁ~ん。ちょっと失敗しちゃった」
「何をのんきなことを。お前のせいで、辺りの様子がおかしくなってきてるんだぞ」
賢いずちころねんが、おひげをピンピンと動かしながら、ちょっと難しい顔になってます。
「えぇ?何それ。ももちゃん何にも知らなぁ~い」
ずちころねんに向かって文句を言いつつ、おててをブンブン振りました。
おおっと!
うっかり水晶玉に手が触れて。
空間映像変わります。
光速で番組タイトルが流れていきます。
【今週の生命創造ランキングトップ10!】
【簡単1億年で出来る魂に優しい高次元クッキング】
【良く判る量子宇宙船操縦技術者養成講座】
【多次元農場収穫情報】
【お子様の霊性を高次レベルでチューニングする教材特集】
色々番組あるけど、ももちゃん興味が無いみたい。
見向きもせずに知らんぷり。
「つまんない、つまんない、つまんな~い!」
ちぃたんも猛烈アピール、抗議します。
「やれやれ。お前たちは本当に子どもだなぁ……」
ちょこぺんは眉間をフリッパーで押さえました。
「そういうちょこぺんだって、ちぃたんと変わんないよ~」
自分の事をちぃたん言う。
ちぃたんはそういう女の子。
生まれてやっと3千年。
ぴょこぴょん跳ねてももちゃんの側に座ります。
「へぇ。これが時空リモコンになってるの?」
そう言って、そっと水晶玉に触れました。
空間映像が切り替わり、濃ゆいお顔の男の人がアップで映し出されます。
映像の中で男の人がため息ついて言いました。
「やっぱ、マグロばっか食べてる奴はダメだな」
なぜかちぃたん、その人物を見るなり言いました。
「あ~!ちぃたんこの人知ってますぅ。見た目は大人、おつむは子供。ちきゅうの侵略に失敗した異星人さんですぅ」
侵略という言葉に、魂がぴくぴく反応した他のちびっ子達。
ポツリとももちゃん呟きます。
「侵略って……おもしろそう」
はしゃぎ始めて、またまたうっかり。
今度は笑い転げて、水晶玉をパンパン叩き……
ブォン、ブォン、ブォン……
水晶玉は急に不安定な明滅を繰り返し、そして。
ちびっ子たちがやってきてから、溜まりに溜まったエントロピー。
ついに限界突破です。

どっかぁーーん!
爆発して、木っ端みじんになってしまいましたとさ……って?
あ~~れ~~!
これ以上、実況を続けることが出来ないようです
皆さん、さようなら、さようなら、さ~よ~う~な~ら~
後任はこのお屋敷にとりついてる、地縛霊さんにお任せします!
4649,夜露死苦!
大穴の開いた天井裏から這い出した、地縛霊が遂に活動開始する。
『え?俺がナレーター?マジ?』
って、おい!
こんな話聞いてねぇぞ、こらぁ。
……って、もう仕方ねぇな。
ほんとは俺、ここにいるちび共を脅かす担当よ?
まぁいいか。
あ~あ~。テステス。
先任ナレーターの奴、多層次元ぶち抜いて吹っ飛んでったもんなぁ。
今頃、高次元霊体療養所に収容されてこの映像観てるかも知れねぇ。
ガハハ。
てぇ事で、ここからは家付き地縛霊のこの俺が仕切っていくけど、
文句は言わせねぇからそのつもりで聞いてくれ。
さて、下の様子はどうなってる?
水晶玉が爆発したせいでちび共全員、目ぇ回してやがる。
仕方ねぇ、起こしてやるか……
適当に水でもふっかけてやるか。
どうせ雨が降ればあちこちで雨漏りする屋敷だ、問題ない。
最初に意識を取り戻したのは通称「脳筋族」のぱふんだった。
さすが、頑丈な身体をしてやがる。
真っ先に目が覚めたぱふんは、他の皆を小さな手でぺちぺち叩いて起こして回った。
「ううう……ここはどこ?わしは生きてるのか?」
頭を振り振りちょこぺんが、意外と間抜けな事を言う。
「違うよ、ちょこぺん。ここはさっきの屋敷の中さ。天井は抜けてしまったみたいだけど」
「ええと……あぁ、ももちゃんのせいだっけ」
ぱふんに説明され、ちょこぺんは記憶が復活。
「そうそう。ももちゃん、いつも考えなしで行動するから」
そう言うぱふん、お前も十分考え無しだと思うけどね。
ぱふんとももちゃん。
どっちもどっち。
「しかし、こんな部屋では落ち着かん。別な部屋に行ってみよう」
年長組のずちころねんが提案すると、他の皆は意義無いようで揃って部屋を後にする。
廊下に出て周囲を見渡し、まだ見てない部屋のうち扉の上に【夢幻の間】と書かれた部屋の前。
ずちころねんが扉を開けて中の様子を伺った。
ちなみにさっきの部屋、通称「虚像の間」の天井に穴が開いたせいで、屋敷内に溜まっていたエントロピーは綺麗さっぱり無くなっていた。
俺も危うく消されるところだったが、なんとか持ち堪えられたぜ、うぇ~い。
おっと、話を進めよう。
何も危険が無い事を確認したずちころねんは、先に一人で室内に入り嬉しそうな様子でみんなに声かけた。
4匹はその声に応じ、部屋の中に入っていった。

室内は古い畳の和室だった。
長年使われていない割には掃除もしっかり行き届き、飾られた調度品も落ち着きを感じる部屋だった。
「ふぅ。やっと落ち着いて茶が飲める。お!菓子まで用意されておる」
テーブルにあった茶器セットから湯のみを取り出し、ちぃたんが人数分のお茶を入れる。
「でさ。どうすんの、これから」
菓子入れのお菓子を摘まみながら、ぱふんが話題の口を切った。
「うーん、それなんだがな。わしらが宇宙の歪から落っこちてここに来た理由。それは一体何か……」
ちょこぺんはお茶をすすりながら、困惑していた。
「時空回廊からオーロラ銀河への近道、そこを通過したとこまでは覚えてる。そこから先が」
手にした湯飲みの中をじっと覗き込む。
茶柱が立っていた。
「忘れちゃったんだにゃぁ~ん」
ももちゃんはお菓子をテーブルの上でくる来るさせながら、いつもはまん丸に見開いている目を細めて言った。
「すまん、ワシとしたことが。祭の会場ではなく、こんな名前も分からん次元世界に来てしまうとは」
自分のミスを素直に認めたちょこぺんは、茶柱入りのお茶を一気に飲み干した。
「仕方にゃいよね。時空の歪に入れば、普通はすべての事を忘れちゃうんだもん。自分が何者か知ってるだけでもマシだにゃん」
お茶を配り終えたちぃたんが鼻をひくひくさせながら、ももちゃんの説明に聞き入っていた。
それからちょっと小首をかしげて、何かを思い出したかのようだった。
「ちぃたんね、皆がここに来た理由知ってるかも」
「え”?!」
驚いて大声を上げたずちころねん。
みんなに「しーっ!」と注意され、首をすくめながら小さな声で言い直した。
「それはどういうこと?ちぃたん、お前が知ってるってどういうこと?」
一番小さなちぃたんが、そんな「オトナの答え」を知るわけはない、そう思っていたずちころねん。
意外過ぎて今にも目玉が落っこちそうになっている。
「あのね。ちぃたんたちはこの星に落っこちてきたの。だからちぃたん達は異星人なの。異星人のお仕事はね……侵略すること!」
ずちころねん以下、全員がずっこけた。
「なんで、そーなるのっ!」
「ぶしゅーっ!」
呆れてちょこぺんが言い、ぱふんは飲みかけていたお茶を吹いた。
「それはねぇ……面白いんだって、楽しいんだって。いたずら一杯し放題だって、雑誌に書いてあったんだもん」
そう言ってちぃたんは、亜空間から一冊の幼児雑誌を取り出した。
『夏休みの自由研究・惑星侵略』
「あのねぇ、ちぃたん……はぁ~これってもう、よもすえだよ。確かに大人がやってるの全部失敗してっけど」
雑誌を手に取りちぃたんにお小言を言おうとしたちょこぺんだが、急に何かを思い付いたらしくそのまま口をつぐんでしまう。
その隣でずちころねんは目をつぶり腕組みをして黙想していた様子だが、くぁっと刮目すると大声で叫んだ。
「それだー!」
「うわぁ、びっくりした!何だよずちころ、いきなりでかい声出して」
両耳をふさいでぱふんが文句をたれた。
「よもすえ団。我ら、僕たちのチーム名だよ!ちぃたんが言うとおり、僕らがここへ来た目的はイタズラに違いない。僕の閃きがそう言ってる」
あー、はいはい。
君たちどうせただもんじゃなさそうだしね。
見た目はアザラシやペンギンやウサギだけど、人語を話す動物なんてこの星にはいねぇから。
いや、まぁ地縛霊の俺が言っても説得力はねぇけど。
そうして『よもすえ団』と名乗りを上げた5匹のちび共は、結成祝いだと言って番茶をすすりながら、イタズラを仕掛ける為の作戦会議を始めるのだった。
頼むから、この屋敷をこれ以上破壊しないでくれ。
(第1章・了)
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『作者の呟き』よもすえ団の物語、以上で第1章の終了となります。突然のナレーション交代劇という、前代未聞の展開で度肝を抜かれた方が多いと思いますが、何せイタズラ大好きよもすえ団ですから、何が起こるか作者にも解りません。この先の展開がどうなるのか気になる方は、今後も是非お付き合いくださいますよう、お願い致します。
今回も読んでくださった読者の皆様、ありがとうございました。<(_ _)>
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