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今日は夫の【長い返事をくれたこと】に恋をした。― 送信ボタンを押した、7月3日の朝。― |2026.07.03

はじめに

このエッセイは、

国際結婚と、海外生活と、マルチリンガル育児の中で、

私が日々つまずきながら、

「わたしらしく生きる」ための実験の記録です。

「毎日、夫に恋する生活を。」

2026年の元旦に、そう決めて、

「今日の夫の好きなところ」を、

一つだけ、言葉にしています。

それだけで、同じ一日が、

少し違って見えることがあります。

完璧な妻でも、理想的な母でもありません。

それでも、結婚と子育てを通して、

女性として、妻として、母として、人として、

成長していきたいなと。

今日もこの記録が、

誰かの生活の中の、

小さな呼吸になりますように。


朝、スマホを開いた

7月3日の朝。

昨日の夜のことが、

まだ全部残ったまま目が覚めた。

隣で夫はまだ眠っていた。

私はスマホを開いて、

そのまま書き始めました。

昨日、うまく言葉にできなかった。

そう打ったところから、止まらなくなった。

口では、いちばん浅いところしか出てこない

言い合いになると、

出てくるのは

いつも表面の話だけでした。

さっきの言い方のこと。

昨日のこと。

先週のこと。

でも私が本当に抱えているのは、

そこじゃなかった。

もっと前から、

もっと下のほうにあるものだった。

19歳で大阪を出た日に、

何が見えていたのか。

なぜあんなに働いたのか。

母の人生を近くで見て、

自分は何にはならないと決めたのか。

そして今、

その決めたはずの場所に

自分が立っている気がしていること。

これを口で説明しようとすると、

まったく追いつかない。

私たちの会話は英語です。

お互いにとって、母語ではない言語。

感情のほうが先に来て、

語彙が遅れてやってくる。

そして遅れているあいだに、

もう次の言葉が返ってきている。

国際結婚のいちばんしんどいところは、

文化の違いじゃなくて

これかもしれないと思っています。

言いたいことがあるのに、

それを言うための言葉を、持っていない。

書くなら、時間がある。

言い直せるし、

AIもサポートしてくれる。

だからその朝、私は書きました。

送信ボタンの前で

書き終えたとき、

かなり長い文章になっていました。

スクロールしないと最後まで読めないくらい。

送る前に、正直かなり迷った。

こんなに長いものを、

読んでもらえるとは思っていなかった。

読んだとしても、

「また始まった」で終わるかもしれない。

それに、書いた内容は

夫を責めるものだけじゃなかった。

自分がいま、

どれだけ空っぽになっているか。

自分のことを

どれだけ手放してきたか。

それを認めて文字にするのは、

相手に読ませる以上に、

自分に読ませるのがつらかった。

それでも、押しました。

週末には、フランスに発つ。

このまま3週間、

義実家で過ごすことになる。

そう思ったら、

もう先延ばしにできなかった。

返ってきたのは、同じ長さだった

返事は、その日のうちに来ました。

そして、同じくらい長かった。

反論ではなかった。

言い訳でもなかった。

こういう意味で言った、

でもそれは間違っていた、

そのときの自分には見えていなかった、

いま読んで、見えた。

そういうことが、順番に書いてあった。

しかもそこには、

私が気づいていなかった

夫の側のしんどさも書いてありました。

変わろうとしてきたけれど、

何をしても足りないと言われている気がしていたこと。

聞いたあとに何か言おうとすると、

いつも途中で遮られていたこと。

同じ喧嘩が繰り返されるうちに、

少しずつ距離を感じるようになっていたこと。

読みながら、

ああ、この人にも

言えていなかったことがあったんだ、と思いました。

私は、

言えていないのは自分だけだと思っていた。

それでも、夜は壊れた

正直に書くと、

その日の夜は、うまくいきませんでした。

あんなに長い文章を交換したのだから、

今日はきっと落ち着いて話せる。

そう思って、1日を過ごそうとしたんだけど、

結局私が感情的になって、また言い合いになってしまった。

私は泣き出してしまって、

家では、ほとんど言葉を交わさないまま

夜が終わった。

書いたものは届いたのに、

口を開いた瞬間、

また元に戻ってしまった。

わかったこと

その夜、布団の中で思ったのは。

夫婦の問題は

向き合って、目を見て話すもの。

ずっとそう思っていました。

だからなんのフィルターもかけずに、ぶつけあってきた。

それを受け入れれない自分たちが

未熟なんだと思っていた。

でも、書けば届いた。

話せば壊れた。

同じ日に、同じ相手と、同じ内容で、

結果が正反対だった。

第二言語同士で結婚した私たちには、

たぶん書くほうが合っている日だっていいのかもしれない。

それだけのことだったのかもしれません。

そしてもうひとつ。

長い文章を送るというのは、

相手を試すことでもあるなと思っています。

読むか、読まないか。

読んで、返すか、返さないか。

この人は、読んで、返してきた。

同じ長さで。

夜は壊れたけれど、

朝に交換したものは残りました。

出発の、2日前でした。

今日の夫の好きなところ

【長い返事をくれたこと】

朝、スマホで長い文章を書いた。

口では一度も言えなかったことを、全部。

19歳のことも、

母のことも、

いま自分がどこにいるかも。

読んでもらえないかもしれないと思いながら、

送信ボタンを押した。

返ってきたのは、

同じくらい長い文章だった。

反論でも、言い訳でもなくて、

見えていなかった、と書いてあった。

その夜はまた壊れたけれど、

朝に届いたものは消えなかった。

今日の夫の好きなところは、

【長い返事をくれたこと】


▼ 「痛いところを、言ってくれたこと」昨日の話はこちらに。

今日は夫の【痛いところを、言ってくれたこと】に恋をした。

▼ このシリーズを最初から読む。

毎日、夫に恋する生活を。|Day 1〜

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