「貯金が減る恐怖」が消える──純粋意欲で生きるための「無収入トレーニング」のススメ
「好きなことをして生きていきたいけど、お金はどうする?」
どんな人でも一度は直面するであろう、この問い。自分の純粋意欲にしたがって生きていくことができたら理想だけど、現実問題としてお金のことをまったく考えないなんてことはありえない。
「純粋意欲ラボ」でも、「純粋意欲で生きる」ためには、何もしない「余白」の時間を日常にして、自分史上最高に健康な一日の過ごし方を試行錯誤するのが第一ステップだと説明しました。
でも、「余白」の時間を確保しても、何もしなかったら生活するためのお金がどんどんなくなってしまう。お金の不安があるからこそ、多くの人は「余白」を確保することを躊躇してしまうのではないでしょうか。
お金の「稼ぎ方」については世の中に色々な情報が出回っています。「純粋意欲で生きる」となると、純粋意欲によって「稼ぎ方」も十人十色。
なので、今回のnoteでは「純粋意欲で生きる」ために大切な、お金についての「考え方」のトレーニング方法をひとつご紹介したいと思います。
その名も、「無収入トレーニング」。
「無収入トレーニング」という名前はわたしが考案したものではなく、個人事業の大先輩である空想地図作家の地理人さんこと今和泉隆行さんが名付けた考え方です。
昨年、『高校生に教えていた“探究”を、自分の人生に本気で使ってみた』というnoteを書いたときにも、Xスペースでこの「無収入トレーニング」について対談しています。音声で聴きたい方は、24:30あたりからぜひ。
— まなみ|純粋意欲ラボ (@manamiedu) July 15, 2025
それでは、「純粋意欲で生きる」ために必要なマインドセットを鍛える「無収入トレーニング」について説明していきます。
「無収入トレーニング」とは一体なんなのか
一見怪しいネーミングの「無収入トレーニング」。これは一体なんなのでしょうか。
「無収入トレーニング」とは、あえて数ヶ月間を無収入で過ごすことで、日々どのくらいのお金が必要で何に時間を使うのか、自分自身を観察するトレーニングのことを指します。
このトレーニングの目的は「お金のために働く」のではなく、「純粋意欲を発揮する時間のために活動する」ことができるようにトレーニングすることです。
たとえば、みなさんにもこんなことはないでしょうか。
「もっと自由に働きたい!」と思って会社を辞めてフリーランスになったにも関わらず、日々のお金を得るために時給のアルバイトを探し、気づいたら自分の一日が時給の仕事でいっぱいになってしまっていたことが。
もともと自由に働きたかったのに、結果的に会社員のときのようにお金を使い、けれど会社員ほど待遇は良くなくて行き詰まるということがあるかもしれません。
ここで大切なのは、単に「月いくらあれば節約して生きていけるか」という最低限のコストを算出することではありません。
多くの人が「好きなことで生きていきたい」と願いながら踏み出せないのは、「預金残高が減っていくことそのものへの恐怖」がブレーキになっているからです。
サラリーマン時代の「毎月一定額が入ってきて、残高が増え続けるのが正解」という思考のままだと、いつまで経っても「稼ぐこと」以外に意識を向けられません。
「稼ぐ時期もあれば、大きく使う時期もあっていい」。 そう思えるようになるために、減りゆく残高をあえて眺めることで、自分の中の「お金の呪縛」を解くトレーニングが必要なのです。
「純粋意欲で生きる」ためには、無収入トレーニングを通して自分の中の次の価値観を知ることが大切になります:
・何も仕事をしなかったら、自分の残高は毎月いくら減るのか
・毎月の支出の中で、どうしても自分に必要なものは何か、惰性や消費で使ってしまっているものは何か
・残高が減っていったとしても、自分がやりたい活動は何か
無収入トレーニングの事例(今和泉さんの場合)
空想地図作家の今和泉さんが、「無収入トレーニング」の必要性に気づいたのは、20代で2年間働いていた会社員を辞めたとき。
自分に合う働き方は「自営業」なのか「雇われ」なのかがわからず、2年間かけてどちらの方が合っていそうか検討することにしました。
当時は「自営業」、特に空想地図で食べてはいけないと思っていたので、アルバイトや知り合いの手伝いで日々のお金を稼いでいました。でもあるときアルバイトを辞めて新たなアルバイトを探し始めたときに、ふと思ったそうです。
「あれ、自分ってそもそもなんで仕事を辞めたんだっけ?」
当時、今和泉さんには貯金がありましたが、何が起きるかわからないので、その貯金を絶やしてはいけないと思い込んでいました。
そんな中、同じくフリーランスになった知り合いに会ったところ、収入が不安定なのにも関わらず、「アメリカに行ってくる!」と宣言して飛び立ったそうです。収入の確約もないのに、なぜあえて貯金を削るのか。
今和泉さんはそのときはじめて、「これが先行投資か!」と気づきました。先行投資は役に立つかもしれないし、役に立たないかもしれない。でも少しでも役に立つ可能性があったら、試さない理由はない。
翻って、自分は貯金があるのになぜ今もお金を稼ごうとしているのか。本当はどういう活動に時間を使いたいのか。
今和泉さんはもともと会社員だったので、毎月収入が入って貯金が大幅に減ることもない身分でした。でも自営業になると、収入がない月もあるかもしれないし、いきなり投資に使うこともあるかもしれない。
預金残高が減る状態に慣れないと、そもそも自営業としての生き方はできないのではないか。そう考えて、1〜2ヶ月、何もしないで減りゆく預金通帳を眺める。それが無収入トレーニングの期間だったそうです。

無収入トレーニングの事例(まなみの場合)
わたし自身も、預金残高が減る状態に慣れるということが、「純粋意欲で生きる」ために大切だと身をもって体験しました。
それは2022年から1年間、海外大学院に留学したとき。
『高校生に教えていた“探究”を、自分の人生に本気で使ってみた』でも書きましたが、当時はビザの関係で留学前に1200万円を用意し、1年間かけてそのお金をひたすら食いつぶしていくという生活でした。
追加で借金をしたくなければ、1年間で使える金額の上限は1200万円。家賃や学費や食費や交際費で、毎月少しずつこの金額は減っていきます。
でもこの経験を通して、お金に制約があったとしても、自分は何に最低限お金を使いたいのか知ることができました。
留学に行く前は、会社員としての生活を送るためにある程度のブランド服を買い、時間がないので頻繁に外食をして、オフィスに通勤しやすい地価が高い場所に住んでいました。
会社から給料として支払われる金額は決まっていましたが、その生活を維持するための固定費もある程度決まっていたのです。
留学中に場所と時間に制約がない生活をしたことで、自分は衣食住について世間一般的なこだわりはないことに気づきました。毎日楽な服で快適だし、食事は自分でつくったり育てたりできるし、川の近くに住むことができれば十分。
その代わり、学びの機会である交際費、交通費、書籍代にはよくお金を使っていることがわかりました。でもこれらの費用はお金が少ない時期がきたら節約すれば、命に関わるものではありません。
加えて、日本だと考えられないような物価高のアメリカで1年間生き延びることができたことは、自分にとって自信になりました。家族もいて、国民としての福利厚生も色々享受できる日本では、よっぽどのことがなければ飢え死ぬことはなさそうです。
帰国後、東京の日野市に移り住んだ今の生活でも、このトレーニングの感覚は生きています。
よくあるミニマリストの本のように「月10万円以下で完璧に自給自足!」といったストイックな生活をしているわけではありません。わたしはパートナーがいるため、自分のこだわりを押し通すのではなく、相手の生活水準に合わせる場面もあります。
それでも「なんとかなる」と思えているのは、自分の譲れないポイントを絞れているからです。
<最低限の衣食住について>
・洋服(衣): 会社員時代のようなブランド服は必要なくなり、自分にとって心地よい服を長く着る。
・食事(食):家族も時間があるので、健康的な自炊ご飯が基本。でも、疲れているときや気分転換が必要なときは、外食もする。
・住まい(住): オフィスに通う必要がないので、自分が好きな川の近くでのびのびと暮らせる家を選ぶことで、家賃を都心の半額に抑える。
<こだわりの学びの機会について>
・交際費(人):時間の自由が効き、健康的な生活を送りたいので、夜の飲み会に行きたいと思わなくなった。代わりに、平日昼に日野のお店や畑に人を呼んでいる。将来的には、自分が持つ場に人を呼べるようになりたい。
・交通費(旅):今の住まいがとても気に入っているので、ストレス発散のために旅する必要がなくなった。時間の自由が効くので、旅するときも旅費が上がって人混みもひどい繁忙期を避けられるように。
・書籍代(本):執筆業と一箱本棚業をはじめたので、書籍代は増えた。でも、自分がつくった本を売ることもできるようになった。本を介してお金を循環させることができるのは、自分にとって嬉しくて一番納得感がある。
完璧な節約を目指すのではなく、「家族との関係性の中で、無理のない範囲で自分を観察する」。家族がいても、そのバランスの中で「自分の幸せに必要なコスト」を知ることは十分に可能です。
留学中に通帳の数字が減っていくのを経験したからこそ、「あ、意外とこのくらいの支出でわたしは満たされるんだ」という肌感覚が、今のわたしの自由な活動を支えてくれています。
このマインドセットによって、「純粋意欲を発揮するために人生の時間をどのくらい使えるだろうか?」ということに集中できるようになったのです。
無収入トレーニングが教えてくれること
「余白」の時間を持とうとすると、お金のことが心配になる気持ちはわかります。
でもお金はどんなに稼いでも、常に「足りない」ものです。
大富豪でも事業に投資したり、生活水準を上げたりすれば、稼ぐより速いスピードでなくなります。子どもが産まれたとしても、子どものニーズや家族としての生活水準によって、出費が大きく変わってきます。
ということは、見方によってはお金は「いつも必要な分はある」と考えることもできるのではないでしょうか。
コップに水が半分入っていたときに、それを「足りない」と見るのか、「足りている」と見るのかという違いです。
自分が最低限何にこだわりをもってお金を使っているのか知ることで、その分のお金を稼ぐために必要な時間がわかり、その他の時間を純粋意欲を磨くことに使うことができます。
日本の外を見渡すと、「無収入トレーニング」の機会は意外と存在します。海外では、学生がギャップイヤーを取ることや、リストラ時に多額の退職金をもらい期間を空けて転職活動をすることも一般的です。
お金が少ない時期があっても、自分の暮らしに必要なものを取捨選択し、「なんとかなる」という自己信頼を持つこと。
無収入トレーニングを通して「残高の減り幅こそ自由度の幅」というマインドセットを鍛えることで、「純粋意欲で生きる」ことに近づいていくのです。
👇ここまでの「純粋意欲ラボ」のnoteはこちらのマガジンから読めます
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