あらすじ検索禁止!?なぜこの小説は、SFではなく文学なのか――エルヴェ・ル・テリエ『異常(アノマリー)』【読書記録97】
こんにちは!🍦マオ¦読書記録 です。
2026年4冊目に読了したのは、エルヴェ・ル・テリエさんの『異常(アノマリー)』(早川書房)でした。

良心の呵責に悩みながら、きな臭い製薬会社の顧問弁護士をつとめる
アフリカ系アメリカ人のジョアンナ。
穏やかな家庭人にして、無数の偽国籍をもつ殺し屋ブレイク。
鳴かず飛ばずの15年を経て、
突如、私生活まで注目される時の人になったフランスの作家ミゼル……。
彼らが乗り合わせたのは、偶然か、誰かの選択か。
エールフランス006便がニューヨークに向けて降下をはじめたとき、
異常な乱気流に巻きこまれる。
約3カ月後、ニューヨーク行きのエールフランス006便。
そこには彼らがいた。
誰一人欠けることなく、自らの行き先を知ることなく。
圧倒的なストーリーテリングと、 人生をめぐる深い洞察が国際的な称賛をうける長篇小説。 ゴンクール賞受賞、フランスで110万部突破、 ベスト・スリラー2021(ニューヨーク・タイムズ、パブリッシャーズ・ウィークリー)
「あらすじ検索禁止」
こんな強い注意書きが、これほどまでにしっくりくる小説があるだろうか。
今回読んだのは、フランスの作家 エルヴェ・ル・テリエ による小説、『異常』(原題 L’Anomalie)。
(個人的)新年記念🎍紅白本企画・紅組として、積んでいた本の中から手に取った一冊だけれど、
正直に言うと、私は海外文学×SFがあまり得意ではないタイプです😣
それでもこの本を読もうと思ったのは、
「とにかく何も知らずに読んでほしい」という声が、あまりにも多かったから。
結果から言うと——
なるほどです。
これは、すごい小説でした。
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▫️前半180ページ、群像劇の試練
物語には「飛行機」が出てきます。
それだけは事前に知っていました。
乱気流に巻き込まれる飛行機。
そこから何かが起きる——
そんな想像をしながら読み始めたのだけれど、実際に待っていたのは、
ひたすら続く乗客たちのプロフィール紹介でした😇
職業、家族構成、人生の来歴、信仰、価値観。
まさに群像劇。
外文初心者には、正直かなり骨が折れます。
私は、180ページ読むのになんと5時間かかりました😂
本当に。
自分でも信じられなかった……。
「これ、いつ動くんだろう……?」
そう思いながらも耐えて読み進めたのは
「183ページまで頑張って!」という友達書店員の言葉に縋って、でした。
▫️中盤の混沌と、それでもページをめくった理由
物語が転がり始めてからも、決して読みやすくなるわけではありません。
神学的、数学的、国際的、宗教的。
とにかく情報量が多く、思考の負荷が高い。
「難しいな」と感じる場面は、何度もありました。
フランス文学を読み慣れていないので、文体が馴染まないなーと苦悩したり。
それでも私は、途中で投げ出さずに読了しました。
なぜかというと、
この小説がずっと、読者に問いかけ続けてくるからです。
「こういうことが起きたとき、あなたならどうする?」
▫️思弁小説とは何か、を体感する
早川書房の営業さんに
「『アノマリー』は思弁小説です」と言われたことがあります。
思弁?
正直、そのときはよく分かっていませんでした。
でも読み終えた今なら言える。
私は、思弁しました。非常に。
たとえば、『残像に口紅を』。
「この世から文字が少しずつ消えていったら?」という実験的設定が、
読む側の思考を否応なく動かす小説ですよね。
『異常』も、それと同じ系譜にある気がします。
詳しいことは言えない。
言えないけれど、とにかく——
「自分だったらどうする?」
「世界はどうなる?」
その問いが、読後もずっと頭から離れないのです。
▫️なぜSFではなく、epi文庫なのか
この作品は 早川書房 の
ハヤカワepi文庫 から刊行されています。
epiとは、
〈すぐれた文芸の発信源(epicentre)〉という意味。
ジャンル的にはSFに分類されてもおかしくない。
それでもあえてepiに収められている理由が、
読後にははっきり分かるのです。
これは、
「設定が奇抜な物語」ではなく、
人間と世界を考えさせる文学だから。
▫️点と点が、時間を越えてつながる読書体験
一年前、
逢坂冬馬さんが書店訪問で来てくださったとき、
「『アノマリー』は……」という話をされていた。
当時の私は未読で、
正直、分かったふりで頷いていました(やめろ)。
でも今なら、分かる。
あのときの言葉の意味が、
時間を越えて自分の中でつながりました。
読書って、こういう瞬間があるから素晴らしい。
今これを読んで、「何を言っているんだろう?」と思っている方が
いつかこの作品を読んだとき、こういうことか!とと繋がってくれる未来があるといいなと思います😌
▫️こんな人におすすめ
✔「もし自分だったら?」と考え始めると止まらなくなるタイプの人
✔SFは苦手だけど、文学として“考えさせられる物語”には惹かれる人
✔読みやすさより、読後に残る問いや違和感を大切にしたい人
✔一冊読み終えたあと、誰かと語り合いたくなる小説を探している人
▫️まとめ
正直、簡単な本ではない。
読みやすさを求める人には、向かないかもしれない。
それでも、読み終えたときの私は、
とても晴れ晴れとした気持ちでした。
2024年12月に文庫化されたばかりのこの作品。
「ちょっと挑戦してみようかな」と思っている人には、
ぜひ手に取ってほしいです。
あらすじは、調べなくていい。
むしろ、調べないでほしい。
ページを閉じたあと、
きっとあなたも、思弁しているはずです。
🏵メンバーシップコラム🏵
この作品がなぜSFではなくepi文庫(すぐれた文芸の発信源)と位置付けられているのか、
読んでいるうちに納得した、「この文章すてき!!」となった文章たちを紹介します💁♀️
「あらすじ検索禁止」とされている部分のネタバレには触れないよう抜き出しているので、未読の方でも大丈夫です🙆♀️
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