涙が出るほど美しい仏像たち ー東京国立博物館「空海と真言の名宝」展へ
1年前から楽しみだった、上野・東京国立博物館で開催中の「空海と真言の名宝」展へ。

7月中旬からの開催だったが、8月に奈良から仏像先生がお越しになって解説してくださることになっていたので、それまでずっとガマン。先に見てもモチロン良いし、あえて知識をなんにも入れずに感覚のまま見仏するのも楽しいけれど、もっと知っておけば見仏がもっと楽しくなるのも確か。
7月は暑さと忙しさにヤられていたので、全部を集中させたくて、この日を楽しみに生きてきた(笑)生きがいダイジ。

仏像先生のお話は、いつ聞いても勉強になる。説明の噛み砕き方がとても上手だし、難しい話は一切なくて、笑いとオチも忘れない。天性の才能だな、といつも唸ってしまう。
講座は休憩を挟んで3時間の長丁場。終了後は、各自ナイトミュージアム(金・土曜は閉館時間を延長してくれている)に行きましょう、という流れだった。
2023年に空海の生誕1250年を迎え、奈良国立博物館で「空海 KUKAI」展を皮切りに、東京国立博物館(以降、通称"トーハク")でも、空海が14年過ごした「神護寺」展を開催。記念展が続いてきた。
今回も空海展なんだー!と思っていたら、これまでの展覧会と趣旨が違うらしい。
そもそも空海とはどんな人?
空海は唐で密教を学び、日本に真言密教を伝えた僧侶だ。
そして、難しい教えを「絵」や「仏像」によって目に見える形にして伝えようとした人でもある。ここが今回の展覧会を見るポイントだったりする。
31歳のとき遣唐使として唐へとわたり、わずか2年で難しい密教の奥義をマスターして、勝手に日本に帰ってきちゃった人でもある。
おま!勝手すぎるよ!ということで、しばらく太宰府に留め置かれ、そこから都に呼び戻されるまでにいろいろな場所に足跡を残したので、各地のお寺に爪痕が残っている。

(と思ってこの写真出したけど石碑の文字が切れてた……涙)
密教は、とにかく複雑で難しい。
だから図画(アート)を使って教えを広め、唐から持ち帰った曼荼羅をもとに「高雄曼荼羅」(神護寺)を制作した。
それでも絵だけじゃわかりにくい。
じゃあ、立体にしちゃえば!
そうやって造られたのが、京都・東寺の「立体曼荼羅」だ。
ただ、空海が入定、つまり亡くなってからは、どうやって密教が広まっていったのだろうか?
今回の展覧会の主旨は、
空海がこの世に居なくなったあと、その教えがどう広がっていったか?を観る特別展ということだ。
だから第1章のスタートが、江戸時代に作られた金剛峯寺の秘仏=ご本人の像なのか……!と納得した。

「神護寺」展では直筆の書が読めたり、高雄曼荼羅や使用していたとされる仏具が展示され、空海が生きてきた証を感じた。
けれど今回の出品目録を確認すると、空海が生きた年代よりも、かなり先に造られた作品が多い。
出陳数も88なのも不思議だった。
トーハクの平成館って本館より広いから、出陳数のボリュームが多い展示の印象なんだけどなー?と思っていたら、しっかりその理由もあった。四国遍路八十八ヶ所霊場にちなんで、88件にしたらしい。
エッ、なんなの?
粋じゃない?
主催元の皆様、粋すぎる!
そして少ない分、凝縮されている。
国宝15件、重要文化財60件。
さらに、一生わたしたちが、どうやったって観ることが叶わない、超貴重な秘仏が
各地から
9件11体
もお越しだ。
展示内容が本当に素晴らしい……。
もう、一言でいうなら、
京都と奈良の仏師たちの心意気。
あの時代だから造れた発想と技術力の高さを、これでもかと見せてくる。訴えかけてくる。
仏像先生の講座の中で知ったのは、慶派誕生のドラマだ。
平安遷都後、朝廷と公家が持つ豊かな財力のもとで技術と表現を磨いた「院派」や「円派」の仏師たち。その陰で、奈良に留まり愚直なまでに仏像の修理・復元に打ち込んだ者たちがいた。彼らは東大寺の南都焼討という試練を経て、鎌倉時代に「慶派」として一気に花開くことになる。
今回の特別展の仏像たちは、院派・円派・慶派の結集。
1200年も前の人たちが、これだけのものを作った。
そして、それを1200年後に生きるわたしたちが東京で見ている。
そう考えたら、ありがたさで泣けてきた。
表現の裏側に、名もない人たちが技術を磨き続けた時間がある。
そういう、表には出てこないストーリーが、いい……。
今回の展示では撮影が可能だった場所が2つあった。
多くの方がSNSに載せておられる山梨・放光寺 愛染明王。

鏃の向きが天に向かっていて、形としてとても珍しい。放光寺の公式サイトによると、全国でもこの子を含めて3体のみしか残っていないそうだ。
注目するポイントは、もう一つあって、それはあとに。
もう一つは、京都山科にある、
安祥寺・五智如来

大きい……。本当に大きい。

5体残っている五智如来としては、日本最古のものとのこと。
最後に安置されていてフォトスポット状態になっているけれど、
国宝で写真撮影が可能というのがサプライズ。

江戸時代以降は、現伽藍の多宝塔内に安置されていたが、明治39年の多宝塔火災より前に五智如来を博物館へ寄託していたため、難を逃れたそう。
すごい。運命だ……。
明治の廃仏毀釈でお寺が存続危機となり、博物館に預けたタイミングだったのかな?と想像してしまう。
「空海と真言の名宝」展。
職人たちの技術、1200年間繋いできた祈りが凝縮したレベルの高い展示だった。
仏像好きなので、仏像ばかりを追っているけれど、足を止めてじっくりと眺めた仏像、美術品がいくつも。「何故こんなに気になるんだろう」と思いながら、しばらくその前から動かずにジッと眺めたものもある。
そのあたりは、もう少しじっくり書きたいので、別の記事にしたいなと思います。
8月11日(火)から後期展示スタート
展示替えがあるので、前期に行った方も後期に足を運ぶ価値は十分。わたしもお盆休み明けに改めて行く予定です。
館内とても混み合ってます。
部屋順に巡るのではなく、集中して観たい部屋を決めてから突撃するのがいいのかも。わたしは第4章の仏ゾーンがメインどころですが、第2章の二間観音もしっかり眺めたいので、次回は集中箇所をしっかり計画しようかな。
気になった仏像たちの記事はこちら
空海と真言の名宝
東京国立博物館 平成館 特別展示室
2026年7月14日(火) ~ 2026年9月6日(日)
休館日 月曜日
開館時間:午前9時30分~午後5時
*毎週金・土曜日は午後8時まで
*入館は閉館の30分前まで
特別展だけじゃもったいない
実はトーハクでは、毎回特別展にちなみ、常設展も展示変えをしてくれていて、現在、本館2階13室(8月30日まで)にて、特別展とリンクした展示がされている。
特別展のチケットで無料観覧できるので、帰りに本館へも寄るのがオススメです。
慶派仏師の康円の晩年の作品、神護寺から愛染明王坐像が2024年「神護寺」展以来の再登場。
特別展で展示されていた山梨・放光寺の愛染明王と見比べるのも楽しいです。
本館13室の展示目録はこちら
トーハク内にある、飛鳥時代の金銅仏が日本で一番集結している、法隆寺宝物館もオススメ
毎月通いつめている、法隆寺宝物館のことはこちらの記事でどうぞ。
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