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【新人船員向け】機関室で最初に覚える工具10選(現役機関士メモ)

※内容は船の機関室を前提に書いていますが、工具の運用については工場の整備・保全の現場でも共通するはずです。

新人として乗船して、「機器整備」より先に覚えるべきは「工具」です。

先輩から「〇〇持ってきて」と言われても、初耳の工具名だと何を持っていけばいいのか分からない。

物は分かっても保管場所が分からない。

保管場所が分かっても、今度はサイズ感が合わず、先輩が想定していたものと大きく外れた物を持ってきてしまう。

これは新人あるあるですが、ここを早めに潰すだけで現場の動きやすさが一気に変わります。

今回は、新人がまず覚えるべき工具を10個に絞って、それぞれの注意事項も含めてまとめます。


新人が最初に覚える工具10選


1) スパナ

基本中の基本です。
機器のほとんどはボルト・ナットで固定されているので、分解・組立にはスパナが必須になります。

種類もいろいろあるので、まずは代表的なもの(両口・片目片口など)を押さえておきましょう。

そして、いずれはボルト・ナットを見ただけで「これは17mmのスパナが必要だな」とサイズ感を養っていきましょう。

2) ノギス

寸法を測る頻度は意外と多いです。

とくに部品の摩耗量計測や、現物合わせの場面で活躍します。

ノギスの読み方は「学校で習っている前提」で先輩も話してくることが多いので、乗船前に一度復習しておくと楽です。

3) ブローバック

清掃や異物除去で使います。

整備時の掃除、油漏れトラブル対応などで使用頻度は高めです。

もし油用と水用で使い分けされている船なら、水用で油を吸わないように注意してください。

内部に残った油が混ざると、その後の水側の吸引・処理がやりづらくなります。

4) ハンマー

固着した部品に軽い衝撃を与えたり、位置合わせに使います。

鉄ハンマー、プラスチックハンマー、中ハンマーなど種類があるので、対象物に合わせて使い分けていきましょう。

新人が扱う時は極端に恐る恐る叩く人が多い印象がありますが、ハンマーはインパクトの瞬間に力がしっかり伝わるようにスナップを効かせて振りましょう。

ただし周囲の人、対象物を押さえている手、配管や計器などに当てないように、叩く前に必ず周りを確認してください。

5) ドライバー

プラス/マイナスの使い分け、サイズ感に注意して、適切なドライバーを選びましょう。

ネジ頭に対してドライバーサイズが小さすぎるとネジ頭をなめやすい(潰しやすい)し、大きすぎるとそもそも入りません。

6) 六角レンチ

六角穴付きボルトに必須です。

差し込みが浅いまま回すと舐めやすいので、奥まで確実に入れてから回すのが基本です。

また、ミリとインチがあるので、ミリだと思ってミリの六角レンチを無理やり入れると、ボルト穴を舐めることがあります。注意です。

7) モンキーレンチ

サイズ調整ができる万能枠です。

ただし極力、対象のボルト・ナットのサイズに合ったスパナを使った方が無難です。

固いボルトに対してサイズの合っていないモンキーで力を込め過ぎてボルト頭を舐めると怒られます。

また、現場では「モンキー持ってきて」と略して言う人がほとんどです。慣れておきましょう。

8) チェーンブロック

重量物の吊り上げ・位置合わせに使います。

結構な頻度で新人が操作を任されることがあるので、「上げ/下げ」「どっち側のチェーンを引くとどう動くか」を確実に覚えましょう。

また、必ず指揮者の指示に従って、勝手な上げ下げ操作をしないこと。
誰かが重量物の下に手を入れて作業しているのに、気づかず下げてしまうと大怪我の原因になります。

指揮者の合図通り確実に操作する“機械”になったつもりでいましょう。

9) タップ

ねじ山の修正・再生に使います。

整備現場では地味に出番があり、タップを立てられるかどうかで作業の質が変わります。

ネジ山が斜めだったり、ゴミが噛んでいるのに無理やりねじ込めば、途中でタップが折れてにっちもさっちもいかなくなります。

まずはエア吹かし等でネジ穴を掃除して、潤滑油を塗りながら丁寧にねじ込んでいきましょう。

10) ダイス

ボルト側のねじ山修正に使います。

タップとセットで覚えると理解が早いです。

ネジの径だけで判断するのではなく、ピッチ(ネジ山とネジ山の間隔)も合っているものを使いましょう。

見た目で判断できなければ、ピッチゲージで計測もできるので活用しましょう。


新人が一番詰まるポイント

新人が詰まるのは、工具そのものより「運用」です。

まず、工具名や保管場所が分からない問題。
これは正直「覚えるしかない」部分もあります。

ただ、初めてで分からなくても怒る人はほとんどいません。
分からない場合は素直に「分からないので教えてください」と質問しましょう。

曖昧なまま、適当にそれっぽい物を持っていく方がはるかに怒られます。

次に、保管場所は分かっているのに、先輩の想定したサイズ感と合わない問題。
ここは一つだけコツがあります。

それは、異なるサイズのものを2〜3本持っていくこと。

例)
先輩:新人君、工作室からマイナスドライバー持ってきて
新人:わかりました
新人:(工具掛けまで取りに来たは良いけど、どのサイズが良いのか聞いてないな…)
新人:(大、中、小のマイナスドライバー3つを持って行こう)

このようにして、先輩に「どれを使いますか」と選ばせます。
片付け時に戻す本数は増えますが、サイズを間違えて作業場と工具置き場を何往復もするより、遥かに効率が良いです。


保管場所を覚えるコツ

初めて乗船したら、制御室・機関室・工作室の引き出しを一通り開けて、何がどこにあるかを把握します。

一度で全部覚えられるわけがないので、分からなければすぐに別の先輩に保管場所を聞く。
工具の話に限りませんが、新人は質問する事も仕事の内です。


工具を覚えるコツ

機関室や工作室には無数の工具が保管されていると思いますが、名前の知らない工具を見かけたら、使い方も含めて先輩に聞きましょう。

もし気軽に聞ける人がいないなら、とりあえず写真を撮って、あとでネットやAIで調べるのも有効です。

また、制御室には船用品(消耗部品や工具)の注文で参照する、オレンジブックやIMPAの本があるはずです。

流し読みするだけでも工具の正式名称が分かり、いずれ自分で船用品を注文する際の練習にもなります。


まとめ

新人が最初に伸びるコツは、難しい整備を覚えることよりも、現場の流れを止めないことです。

工具の名前、保管場所、サイズ感。

この3つが揃うだけで、作業のスピードも先輩からの信頼も一気に上がります。

まずは今回の10個から、確実に押さえていきましょう。


ディーゼル発電機のピストン抜き整備をもう少し実務寄りに整理した記事も書きました。
今回の記事で覚えた工具の知識を総動員しつつ、
取説だけでは埋まりにくい、準備・識別・段取り・分解時の詰まりどころを中心にまとめています。
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