見出し画像

いとこ初対面・三部作【第1話】いとこに会いたい──82歳で初めていとこに会う

私には、父方と母方をあわせて、いとこが20人以上いる。
今もLINEでおしゃべりしたり、ランチしたりと、実兄以上に仲のいいいとこもいれば、顔も知らないいとこもいる。
そして、これは多くの人がそうだと思うけど、両親の「いとこ」は、ほぼ知らない。
年賀状で名前を知っている数人のみ。
そして実際、私が交流のある両親のいとこは、ひとりだけ。
父の従姉──東京で暮らす、102歳の伯母・八重子さん(仮名)だ。


この伯母・八重子さんは、長年、親戚づきあいを断って生きてきた。
実は資産家で、過去に複雑な経験をされたらしく、親族から距離を置いてこられた。
身寄りのない人生を強く、慎重に生きてきた。
その中で関わってきたのが、私の父と、もうひとりの従姉だけ。どちらも亡くなり、今、伯母とお付き合いがあるのは、私と、その従姉さんの次男だけらしい。


その八重子さんの、施設の身元引受人に、私とその次男さんがなった。
キーパーソンは私。
詳しい事情は伏せるが、100歳を超え、施設側から身元引受人を立ててるように要請があった。
終末期の医療方針、死後の事務手続き、住まいの明け渡しなど。
高齢のひとりの暮らしに、いつか来る「その日」の準備が必要。
幸い、私は伯母とはとても気が合う。だから、信頼してもらえたことが何よりうれしい。
きっと、天国の父や祖父(伯母の叔父)も喜んでいると思う。
それに、いつかもう一人の身元引受人さんーー私にとって「はとこ」に会えるのも、ちょっと楽しみだったりする。


そんな孤独に生きてきた伯母に、私の叔母が以前から会いたいと言っていた。
叔母・恵子(仮名)は父の妹、82歳。叔母にとっても、八重子さんは従姉にあたる。
けれど、これまで一度も会ったことがない。

数十年前、八重子さんが東京の高齢者専用マンションに転居したとき、恵子さんが「東京にいるなら、従姉に会いたい」と私の親を通じて申し出たことがあった。
でも、そのとき伯母は断った。「親戚づきあいは、これ以上広げたくない」と。


それから年月が経ち、私が伯母と関係を築き始めて、改めて聞いてみた。
「叔母の恵子が、八重子おばさんに会いたがってるんです」
八重子さんからは、少しやわらかい反応が返ってきた。
「そう……どんな方なの?」
「私と仲良しで、心配いらない人です」
そう伝えて、恵子さんと私、いとこたちと撮った写真を見せた。
八重子さんは、その写真を見て、
「この方も、従妹なのね。会ってみようかしら」
実は、82歳の恵子さんは、八重子さんの母親と顔立ちが似ているらしい。
やはり、血縁。おばと姪って、よく似るもんね。


伯母と叔母の対面に向けた準備を、私は少しずつ、重ねてきた。
そして──ようやく、先月、ふたりの初対面が実現した。

102歳の伯母と82歳の叔母、従姉妹どうしのはじめての出会い。
お互いの体調と気力がそろった、ほんのわずかなタイミングを逃さないように、大阪から茨城まで自家用車で走った。そして、茨城から東京へ。小さな大旅行。


「あんた東京なんて、車で走れるんか?」
そう心配する叔母・恵子を乗せて、 私は大阪ナンバーの軽自動車で、首都高を走る。足の悪い叔母には、公共交通機関は無理。
「大阪市内かって走るんやから、同じ♪」と言いながら、内心どきどき。
実際、阪神高速より首都高のほうが、…みな親切です。(笑)

その道中、恵子さんから驚きの話を聞いた。
なんと、恵子さん、「いとこ」という存在に会うこと自体、生まれて初めてらしい。
祖父は、叔母がまだ中学生のときに亡くなり、父方との親戚の縁が希薄に。
祖母は、ひとりっこで、いとこがいない。
いとこが20人以上いる私からしたら、本当に驚きの事実。
そりゃ、会ってみたいよね。


102歳の伯母・八重子さんが暮らしているのは、都内の超高級・高齢者専用マンション。
フェラーリやポルシェが出入りする駐車場に、チン♪ と、私の赤い軽自動車が入る。
立体駐車場でよかった。入れてしまえば、見えないもん。
出庫中のお金持ちそうなご夫婦が、こちらをじっと見ていた。

ふふ、大阪ナンバーが珍しいですか?
私の赤い車、小さくてかわいいでしょー♪
…と、軽自動車であることを、心から消していく。
その気品あふれるご夫婦は、ベンツで出て行った。


そしていよいよ館内へ。
いとこ同士、102歳と82歳の初のご対面は、第2話にて。 
めっちゃ大変だったよ!


※このエッセイは三部作です


#いとこ初対面 #家族のかたち #親戚づきあい #102歳の伯母 #エッセイ #ユーモアエッセイ #高齢の親族との関係 #はじめての出会い

いいなと思ったら応援しよう!