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いとこ初対面・三部作【第2話】いとこに会えた──82歳と102歳で「はじめまして」

※このエッセイは3部作です。


初めて会う従姉に、82歳の叔母・恵子(仮名)は、驚くほど緊張していた。
その相手は、東京の超高級・高齢者専用マンションで暮らす102歳の伯母・八重子さん(仮名)。
場所は、ホテルのような内装の高級マンション。
「こんなとこに、親戚がいるなんて」と言いながら、恵子さんは自分の服装を何度も気にしている。

駐車場の裏口から、エレベーターホールに向かうだけで、怖気づいてしまった。
エレベーター前の椅子に待たせて、フロントでの手続きはひとりで行った。フロントやロビーを見たら、きっと泡を吹いてカニになる。


一方の伯母・八重子さんは、102歳という年齢もあり、その日はいつもと違って、やや不機嫌だった。
あとから思えば、体調がすぐれなかったのと、翌日の医師からの呼び出しが心配だったのだろう。

恵子さんは、手土産として私が用意した高級スイーツを持参していた。
ピンクのかわいい風呂敷を丁寧にほどき、伯母に手渡す…と思ったら風呂敷に包んだまま渡してしまった。
「風呂敷は外して渡すねん!」と心の中で叫ぶ。
しかも、ちゃっかり風呂敷を返してもらっている(笑)。
昔はきちんとした叔母だったのに、年をとったなぁと思う。もしくは緊張のしすぎ。


今回の訪問の前に、恵子さんにお願いしていたことがあった。
① 室内のトイレは借りない
② 介助をしない
③ 血液型の話はしない
 
高齢の八重子さんにとって、好きではなさそうな話題や、逆効果になりかねない気遣いを避けたかった。
「よっしゃ、わかった!」と言ってた恵子さんだが、…そうだった。
軽度認知症で、覚えられないんだった(笑)。


① 室内のトイレは借りない
会話の中で、叔母・恵子がひとこと。
「トイレをお借りしても?」
いやだからあかんて!
伯母は困った顔をした。清掃が行き届いていないのが、恥ずかしいらしく、私はいつも、ロビーなどの公共トイレを使うようにしている。
恵子さんにも、それを伝えてたんだけどな。
「ちょっと行ってきますね♪」と叔母を部屋から連れ出す。
恵子さんに「ごめん!」と謝られた。
部屋に戻ったあとも、八重子さんも「ごめんなさいね」を続ける。
うん、微妙な空気。
高齢者を相手にしてるんだから、どちらも、ま、仕方ないよね。


② 介助をしない
食事に行くとき、足元がおぼつかない八重子さんに、恵子さんが自然に手を差し出してしまう。素人が下手に手を出すのは、逆に危険。
恵子さんがドアを全開にしてしまったので、八重子さんが持とうとした取っ手に手が届かず、ふらつく。
「ドアから、手を放して!」
「え?お姉さん、通るんやろ?」
だから、介助しなくていいって…。
経験上、人の手を借りることに慣れていない八重子さんにとって、 介助はプライドを傷つけることも知っている。
「自分でできるのよ」と言われる。
叔母の親切を踏みにじるようで、こっちも心がチクチクする。


③ 血液型の話はしない
血液型の話をしなかったことだけは、よかった。
恵子さんはすぐに、血液型を聞く。これって人によっては、地雷になりかねない。
ただ、別の地雷は踏んだ。
八重子さんが、「まるこちゃんて、気が利くのよね」と言ってくれたときのこと。
恵子さんは笑顔で返す。
「〇〇義姉さん(私の母)のおかげです」
そう、叔母は、なんでも長所は「親譲り」にしてしまう。
八重子さんは、きょとんとした顔をしていた。
父の従姉なんだから、せめて父の名前を出してくれてたら、よかったのに。

私にとっても、恵子さんがすべてを母親譲りに「帰属」してしまうのは、モヤモヤする。それぞれの立場と長年の思いがあるから、仕方ないかもしれない。分かっていても、「なんでいま…」って思っちゃう。

その日、耳が遠い二人の通訳をし、私はどんどんHPが削られていった。
声がかすれる。
ふたりとも、すこし緊張している。


でも、最高にHPを削ったのは、自分自身の行動。
実は、暑くてサンダルで訪問していた。
靴下をバッグに忍ばせ、伯母の部屋にあがるときに、すっと履こうと思っていたけど、めんどくさくなって素足。
館内レストランに行くときに、伯母に見られて、怒られた。
「ここのレストラン、ドレスコードあるのよ。ホテルだって、サンダルじゃ入れないでしょ」
いや、ここのレストランも、サンダル普通にいるよ? 

伯母もドレスコードが、ゆるんでいるのは知っている。
でも、そのゆるみを身内が出すのは、許せない。
露出もほぼない、踵紐も太いサンダルだったけど、NGらしい。
「すみません、車においてるので、取りにいってきます」と言うと、
「もういいわよ。他にも守ってない人もいるから」と、がっかりさせちゃった。
本当は、車にあったのは、サンダル以下の汚れたスリッポン(笑)。
近くの商店街まで走るつもりだった。


なんだか、ちょっとだけピリピリした一日目。
私がニコニコしておかなければ、どうしようもない。
だれか、チョコラBB持ってきてくれ。

夕食のレストラン(ホテルの雰囲気)で、82歳の叔母の緊張マックス。
私は、素足をもじもじさせながら、おいしい夕食をいただいたのであった。
(サンダル族は、他にもいました。高級サンダルだったけど)


第3話は、翌日のほのぼの風景をお送りします!
ご年配の前では、やはり靴下は、履きましょう!


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