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【結果発表】第30回人麿の里全国万葉短歌大会(一般の部)

本大会には、全国各地から一般の部は165首、ジュニア・ユースの部は130首のご応募をいただきました。
一般の部の選者、評者選による入選作品をご紹介します。
参加者の皆さま、選者・評者の皆さま誠にありがとうございました。
引き続き、本大会及び人麿の里石見・益田をよろしくお願いいたします。

(ジュニア・ユースの部はこちら↓)

一般の部 特選
選者 香川哲三先生


十年の病の癒えし子の電話柚子湯に浸り来し方想ふ
大畑房子(島根県)

わが子を思う親の心情がしみじみと詠じられている。「十年の病」というから、治癒に至るまでにはさまざまな事があったのであろう。こうした具体的な言葉に続いて下句が置かれており、作品全体に作者の塊面が滲んでいる。上旬と下句の関係性を考えると、構文上は改善の余地もありそうだが、そうしたことを凌ぐ説得力がこの作品にはある。

移植せし山葵の苗の漸くに根付きたるらし春近からむ
小田裕侯(島根県)

山葵栽培に取り組んでいる作者の姿や暮しを勢開とさせる一首である。第三句・四句に、 広い意味での主観が込められていて、作品全体を生動させている。また、初旬から四句に至るまでの言葉運びも順直で、それらを受け止めながら卒然と言い収めた結句が働いている。作者の生活を背景とした、心が明るむような時情が印象的な作品である。

風無きに庭の白梅散りそめて十四年めの東北思ふ
原田美枝(山口県)

一読して、平成二十三年三月十一日に発生した東日本大震災を想起して成された作品であろうことが理解される。上句の眼前の光景と、下句の言葉が不即不離に関係し合っていて、言い難い思いが一首に込められている。三月は「白梅散りそめて」に、大震災は「十四年めの東北」に託されているが、こうした蘭雷な表現が作品に奥行を与えてもいる。

六甲山より眼下にのぞむ瀬戸内の海たひらかに春日かがよふ
横山節子(東京都)

春の日の波静かな瀬戸内海の情景が味わい深く捉えられている。第一・二句で作者の位愛・視線を明確に述べているから、一首全体の構図が立体的となり、作者の見た実景が確かに、また穏やかな雰囲気をもって表象されている。初句の字余りも、この作品では効果的に働いており、固有名詞「六甲山」が一首全体を統べているような趣がある。

毎日の薬を届け声かける炬燵に眠る母は小さし
吉田篤志(島根県)

母親に対する細やかで優しい心遣いが一首全体に漂っている。何れの言葉も作者の思いを的確に反映しており、作者は母の近くに住んでいるだろうこと、その母は縮設などに居るのではなくて、自宅で慎ましやかに暮らしているだろうことなどが、自ずから伝わってくる。下旬の語順には工夫の余地も残されているように思うが、私は原作を尊重したい。

一般の部 評者選

寺井淳氏選
メイドインオキュパイドジャパンのスプーンみなユリゲラー真似て父は曲げたり
小山美保子(島根県)

オキュバイドジャパンとは、第二次世界大戦後の連合国占領下の日本。民間貿易が再開されたときに、輸出製品には、「Made in Occpied Japan」と記されてあったそうです。それを「曲げ」るという行為に、(戦後日本に対する)父の複雑な気持ちが反映されているようです。あるいは、「父」というのは、作者の上の世代全体を象徴しているのかもしれません。歌の作りとしては、曲げるというところから、ユリ・ゲラーというスプーン曲げで有名になった人物を配したのではないでしょうか。有名で、いささか胡散臭いという性質が、かつての「メイドインジャパン」のチープさ(安物感)と、うまく釣り合っているようです。

宮里勝子氏選
茶畑の防霜ファンがいっせいにまわりだす音ふとんに届く
村松建彦(静岡県)

作者の位置は茶畑と近い場所にとどくある気配を想像します。ふとんに届くという音の表現は省略を利かせた特長があり、作者の一瞬の心の動きと共にかすかな緊張感がよみとれる。三句の「いっせいに」は歌に広がりを生みました。

元田 裕代氏選
秋祭り夜店も子等も姿消し神楽を守る古老が焚き火す
田中香津子(大阪府)

子供たちも参加して、賑やかだった。秋祭りが終わり、その後の静かさ、寂しさが下の旬に表現されていて、しみじみとした想いになります。神楽を守る古老に歴史を感じ良い作品と思います。


一般の部 互選

青に透く母の形見のストールを早春の朝おだやかに巻く
世良田静江(福岡県)

ヒーローのマント演じた風呂敷がタンスの奥で昭和を語る
近藤 圭介(愛知県)

秋祭り夜店も子等も姿消し神楽を守る古老が焚き火す
田中香津子(大阪府)

母と娘が手話をしながら散歩するひとり頷きひとりは笑い
西元静香(山口県)

この夜も変わることなく傍らに寝息があって寝息が聞ける
三浦 秀和(島根県)