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夏なので、死にそうなほど切なく、美しい音楽を聴きたい。(後編)


さて、後編である。

前編を未読の方は、こちらをどうぞ。

(でもこの記事だけ読んでも問題ないよ)


さて、改めておさらいすると、

「夏といってもはしゃぐような歳でもないし、ならいっそ死ぬほど切ない音楽を聴いてやりきれない気持ちになろうぜ!!」

というのがこの記事の趣旨である。

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さて皆さん。周りに人はいませんか?
切なくなる覚悟はできましたか?

それでは、参りましょう。


3.真夏の夜の事 - 初恋の嵐


突然だが、「大切すぎて語れない楽曲」ってないだろうか。

ずっと自分の中にあって、時折思い出したように聞いて。誰かと語りたいけれども大切すぎてなんだか気軽には語れない。そんな曲。

僕にとって、この曲がそうだ。

「初恋の嵐」の、「真夏の夜の事」


とにかくまず聞いて欲しい。

この曲の良さを、僕はうまく説明できない。


ここが良い、そこが良いと説明することすら憚られるような。何だか分析すると逆に何かが損なわれるような。それくらい繊細で、狙っても捉えられない「何か」で構成された曲だと思う。

サビの一節をのせる。

これは想像のストーリー
意味などない
想像のストーリー

真夏の夜の事 - 初恋の嵐


この曲をご存知ない方は、歌詞だけでもざっと読んで欲しい。


なんか、わからないんだ。
マジで何が言いたいかわからない。


なのに、すごい突き刺さってくる。


切なさとか、やりきれなさとか、夏特有のじわっと肌を湿らせる空気感まで、一気にぶわっっと押し寄せてくる。


…しかもこの歌詞、最後の一節で全てをひっくり返してしまう。


これは想像のストーリー
などではない
真夏の夜の事

真夏の夜の事 - 初恋の嵐

なんなんだこの曲……


あまりに唐突。
あまりに衝撃。

何度も繰返し聴いたはずなのに、聴き終えた後はいつも打ちのめされ、呆然としてしまう。


…さてここで、「初恋の嵐」というバンドについて少し書きたい。


この「真夏の夜の事」は、初恋の嵐にとって2ndシングルであり、同時に最後のシングルだった。なぜかというと、ボーカルであり中心的ソングライターの西山達郎氏が、この後すぐに亡くなったからだ。


シングル、「真夏の夜の事」が発売したのが2002年7月。その8ヶ月後の3月に、西山達郎は急逝した。急逝心不全だったらしい。これにより、デビューしてわずか1年で「初恋の嵐」は実質的な解散を余儀なくされた。


誰が見てもとてつもない可能性を秘めたバンドが、とんでもない曲を発表した後間も無く、フロントマンの訃報を知らせることになってしまったのだ。当時の音楽業界、特に彼らを知る者に与えた衝撃は計り知れない。


…それでも、残されたメンバーは今でも音楽を続けている。


特にベースの隅倉弘至さんは椿屋四重奏のサポートメンバーも務めており、なんと昨年行われたツアーにも参加している。この発表、両バンドともファンの僕としては密かに胸熱だった。



20年以上経った今も尚、節目にはしばしばイベントが企画される。また、スピッツスガシカオといった名だたるアーティストが、「初恋の嵐」の音楽に対するリスペクトを表明し、様々な形でエールを送っている。多くのミュージシャンに愛されたバンドなのである。


…しかし結局のところ、これらは関係のない事だ。
この楽曲の素晴らしさとは。


先に紹介したフジファブリックの例でもそうだが、我々は「死」という事件を受けると、以降その曲を特別なフィルターを介して聞いてしまう。

でも、それはそれ。

もし運命がすれ違い、このやるせない事件が起こらなかったとしても、それでも尚、この曲は素晴らしい。


きっと西山達郎はこの曲に魔法をかけた。

時が経過しても、この魔法が色褪せることはない。


この曲は「夏」を閉じ込め、永久に封印することに成功している。
青くて、蒸し暑くて、やるせない夏を。


4.八月の夢 - 福耳


…なんだか重めの話が続いてしまったので、最後は軽い曲を。


たくさんの才能あるソングライター擁するオフィスオーガスタのアーティストユニット、「福耳」による楽曲である。タイトルが「8月の夢」


オーガスタといえば、毎年恒例なのが事務所主催の夏フェス、オーガスタキャンプ。そんなイメージも相まって、福耳には夏が似合う爽やかな楽曲が多い。


…しかしこの曲は少し異色で、どこか夏の気だるさを感じさせる。
でも、このダウナー具合が心地よい。

気怠く物憂げな午後 転寝で微睡んだ
夢と現の間を 何度も行ったり来たり

八月の夢 - 福耳



ソングライティングはCOILの岡本定義さんである。

大橋さん&岡本さん


オーガスタの中ではサポートにまわることも多く、目立つ存在ではないが、実は彼のソングライティングは相当レベルが高い。自身で歌う事はもとより、楽曲提供を行うことも多い岡本さんだが、断言できるが、彼の手がけた音楽が格好良くなかったことは一度たりとも無い。音の取り扱いを知り尽くした熟練の職人といったイメージである。


そしてサウンドプロデュースは、みんな大好きスキマスイッチ

こういうほろ苦ポップスは、彼らのお得意芸。「惑星タイマー」の頃はまだ初々しかった彼らも、もはやオーガスタの大黒柱。貫禄すら感じさせる。

歌い出しは大橋さん。安心する声。


曲中、特に好きな一節がある。

秦基博さんが歌う、以下のフレーズである。


どうしようもないことは
どうしようもないんだよ
どうにかしようとしたけど
どうにもならなかったんだ

八月の夢 - 福耳


「どうしようもないこと」が、世の中には溢れている。特に我々大人にとっての「どうしようもないこと」は、1つや2つでは到底足りない。


それを否定も肯定もせず、ただ
「どうにもならなかったんだ」と認めてくれること。



それらを秦さんの優しい声で歌われると、泣きそうになる。


アイコンタクトが優しい


メロは一人一節ずつ歌い繋ぎ、サビで全員が合唱する。
素晴らしい個性を持った歌声が、鮮やかな絵の具のように混ざる。


ラストのサビは、こんな歌詞で締めくくられる。

あたりまえみたいに夏が何度も訪れるけれど
君はいない 永遠じゃ無い

雨上がりの空に星のかけらを探してたことを
決して忘れない

それは夢ではない

八月の夢 - 福耳

学生時代、あたりまえのように毎年オーガスタキャンプに行っていたけれど、社会人になってからはそうもいかなくなった。行けても数年に一度。今思い返すと「当たり前じゃなかったんだな」って、やけに楽しい記憶として残っている。


あの頃「あたりまえ」に思えて、でも実はそうじゃなかったものって、きっといっぱいあるんだろう。


隣にいる人も、来年はいないかもしれない。
永遠に続くものなんてない。


だから、今年の夏もそばにいてくれる人を大切にして過ごそう。ずっと忘れないでいよう。月並みだがそんなことを思うのである。


福耳の「八月の夢」。


まだ暑さの残る晩夏に、遠くに聞こえる蝉しぐれのような心地よさを運んでくれる楽曲だ。


(2023年のオーキャンverも素晴らしい)



総括


…ということで、今回ご紹介した曲は、

1.若者のすべて / フジファブリック
2.真夏の通り雨 / 宇多田ヒカル
3.真夏の夜の事 / 初恋の嵐
4.八月の夢 / 福耳

の4曲でした。

うん、それぞれ大好きな曲なんだけど…なんというか、これらの曲を続けて聴くと何かしらメンタルに影響が出そうだ。それくらいパワーを秘めた曲たちなので、ご視聴の際はチェイサーにオレンジレンジか湘南乃風を準備しておくと良いだろう。


…でも、こうやって感傷に浸る夏も悪くない。


あなたにとって、「切なくて美しい夏の歌」は、なんですか?

良ければこっそり教えてください。


…といったところで、今日はこの辺で。


それでは!


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