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入門講座#12:血圧って何?── 糖尿病の人が知っておきたい基本と数字の読み方

📘 入門講座 #12

#12〜は糖尿病と関わりの深い「血圧」「脂質」を掘り下げます。

初めての方 → #1「糖尿病ってそもそも何?」
前回 → #11「肥満診療とは── 保険適用の条件と、治療の選択肢」


前回(#11)では、肥満症の治療について——保険適用の条件や、薬物療法・外科療法の選択肢を見てきました。

今回は「血圧」の話です。

糖尿病の外来に通っていると、毎回血圧を測りますよね。「なんで毎回測るんだろう」「血糖の話をしに来ているのに」と思ったことはありませんか。

実は、血圧は糖尿病の方にとって血糖値と同じくらい大切な数字です。でも、その理由をきちんと説明される機会は意外と少ない。

今回は血圧の「そもそも」から、2025年に改訂された最新のガイドラインの数字まで、糖尿病の方の目線で整理します。


血圧とは何か──「水道管」で考える

血圧の仕組みを、水道管に置き換えて考えてみましょう。

心臓はポンプです。ギュッと縮んで血液を送り出し、次にふわっと広がって血液を受け入れる。これを1日約10万回、休まず繰り返しています。

上の血圧(収縮期血圧)は、心臓がギュッと縮んで血液を押し出した瞬間の圧力。蛇口を全開にしたときの水圧のイメージです。

下の血圧(拡張期血圧)は、心臓がふわっと広がって休んでいる間の圧力。蛇口を閉じても管の中に残っている水圧です。

ここで大事なポイントがひとつ。水道管が硬くなると、同じ量の水を流しても圧力が上がりますよね。血管も同じです。**血管が硬くなる(動脈硬化)と、血圧が上がる。**そして高血糖は、血管を硬くする原因のひとつです。


数字の読み方──2025年、ガイドラインが変わりました

「130/80って何の数字?」「前は140って言われたのに?」

まず基本から。血圧は「収縮期/拡張期」のセットで表します。たとえば「130/80mmHg」は、上が130、下が80という意味です。

高血圧の診断基準(変わっていない)

診察室で測った血圧が140/90mmHg以上の場合、高血圧と診断されます。この基準は以前から変わっていません。

家庭で測った血圧であれば、135/85mmHg以上が高血圧の目安です。病院では緊張で血圧が上がりやすいので、家庭血圧のほうが基準がやや低く設定されています。

降圧目標が大きく変わった

2025年8月、日本高血圧学会が6年ぶりに「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」を発表しました。

いちばん大きな変更点は、降圧目標の統一です。

以前のガイドライン(2019年版)では、年齢や合併症によって目標値がバラバラでした。「75歳以上は140/90未満でいい」「糖尿病があるなら130/80未満」というように、人によって違う数字を言われて混乱した方も多かったはずです。

新しいガイドラインでは、原則として全年齢で「130/80mmHg未満」が目標になりました。

  • 診察室血圧:130/80mmHg未満

  • 家庭血圧:125/75mmHg未満(朝・晩の平均)

75歳以上の方も、糖尿病の方も、基本的に同じ目標。もちろん、ふらつきや腎機能低下がある場合は個別に調整されますが、「まず目指す数字」がシンプルになったのは大きな前進です。

ちなみに、ガイドラインの名前も変わりました。「高血圧治療ガイドライン」から「高血圧管理・治療ガイドライン」へ。「管理」が加わったのは、薬で下げるだけでなく、日常生活で血圧を整えることが治療の柱になったということです。


なぜ糖尿病の外来で「毎回」血圧を測るのか

2型糖尿病の方の**約60〜70%**が高血圧を合併しています。一般人口では約30%ですから、倍以上です。

これは「たまたま2つの病気が重なった」のではありません。インスリン抵抗性という共通の根っこから、血糖の異常と血圧の上昇が同時に枝を伸ばしている——そういう関係です。

メカニズムの詳しい話は、この記事では長くなるので別のシリーズに譲ります。

もっと深く知りたい方へ: ⚠️ぜんぶ代謝のせい #2「糖尿病じゃないのに、なぜ血圧の話をされるんですか?」で、インスリン抵抗性が血圧を上げるメカニズムを解説しています。

糖尿病の外来で血圧を測るのは、「ついで」ではなく「本題」の一部です。


家庭で血圧を測る──正しい測り方と記録のコツ

新しいガイドラインでは、家庭血圧の重要性がこれまで以上に強調されています。診察室では緊張や体調によって血圧が変動しやすく、「ありのまま」の血圧が見えにくいからです。

測るタイミング

  • 朝: 起きてから1時間以内、トイレを済ませた後、朝食・服薬の前に

  • 晩: 寝る前に

この2回を毎日続けるのが理想ですが、「毎日が無理なら、週に何日かでもいい」と考えてください。完璧を求めるより、続くことのほうが大事です。

測り方のポイント

  • 椅子に座って1〜2分安静にしてから測る(座った直後はNG)

  • カフ(腕帯)は心臓の高さに合わせる

  • 上腕式が推奨。手首式は位置のズレで誤差が出やすい

  • 1回の測定で2回測り、その平均を記録するのが理想的

「1回の数字に一喜一憂しない」

血圧は1日の中でも大きく変動します。朝高くて夜低い人もいれば、ストレスで急に上がる人もいる。大事なのは数日〜数週間の傾向です。

血圧手帳やスマホアプリに記録して、外来に持っていってください。それだけで、医師が見える景色がぐっと広がります。


生活の中でできること

最新のガイドラインが勧めている生活習慣のポイントを紹介します。

① 減塩は基本。でも「塩を減らす」だけでなく「カリウムを増やす」視点も。

JSH2025では、塩分を減らすだけでなく、カリウムを多く含む食品(野菜・果物・海藻・豆類)を積極的に摂ることが推奨されています。塩とカリウムのバランスを見る「尿中Na/K比」という新しい指標も提案されました。

② 運動は有酸素だけでなく、筋トレも。

ウォーキングなどの有酸素運動に加えて、週2〜3回の筋力トレーニングも血圧を下げる効果があると明記されました。糖尿病の方にとっては、血糖と血圧を同時にケアできる「一石二鳥」です。

③ 体重管理。

BMI 25未満を目安に、適正体重を目指すこと。5%の体重減少で血圧が有意に下がるデータがあります。


まとめ

  • 血圧とは、心臓が送り出す血液が血管の壁を押す力のこと

  • 高血圧の診断基準は140/90mmHg以上(変わっていない)

  • 降圧目標はJSH2025で全年齢130/80mmHg未満に統一(家庭血圧125/75未満)

  • 糖尿病の約60〜70%が高血圧を合併。代謝の根っこがつながっている

  • 家庭血圧の記録は、それ自体が治療の一部。朝・晩の2回がおすすめ

  • 減塩+カリウム、有酸素運動+筋トレ、体重管理——生活全体で整える

まだ血圧計を持っていない方は、まず上腕式を1台。すでに持っている方は、明日の朝、起きてトイレの後に1回測ってみてください。


参考情報

・日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』


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※この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の治療については主治医にご相談ください。


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