入門講座#13:「コレステロールが高い」って言われたけど、何がどう悪いの?
📘 入門講座 #13
初めての方 → #1「糖尿病ってそもそも何?」
前回 → #12「血圧って何?── 糖尿病の人が知っておきたい基本と数字の読み方」
前回(#12)では、血圧の基本と最新のガイドライン(JSH2025)の話をしました。
今回は「脂質」の話です。
健康診断の結果を見ると、LDL、HDL、中性脂肪、いくつもの数字が並んでいて、どれを気にすればいいのかわからない。「コレステロール=悪い」というイメージだけが先行して、でも実は善玉もあるらしい。
脂質の検査値の「読み方」を整理します。糖尿病のある方にとって脂質の管理がなぜ特に大切なのか、最新のガイドラインの数字も含めて説明します。
そもそもコレステロールと中性脂肪って何?
「コレステロール=体に悪い」と思っている方が多いのですが、コレステロール自体は悪者ではありません。
コレステロールは、すべての細胞の膜を作る材料であり、ホルモンの原料でもあります。体にとってなくてはならない物質です。
中性脂肪(トリグリセライド、TG)は、エネルギーの貯金箱のようなもの。食事から取り入れたエネルギーのうち、すぐ使わない分を中性脂肪として蓄えておき、必要なときに引き出す。
どちらも「存在すること自体」が問題なのではなく、多すぎたり、バランスが崩れたりしたときに動脈硬化を進めてしまう。これが「脂質異常症」です。
健康診断の数字、何を見ればいい?
健康診断の脂質の欄を見ると、いくつも項目があって混乱しますよね。ここでは4つに絞って説明します。
LDLコレステロール(悪玉)
コレステロールを全身に運ぶトラック。多すぎると、荷物(コレステロール)が血管壁に溜まって動脈硬化を進める。だから「悪玉」。
基準:140mg/dL以上で「高LDLコレステロール血症」
HDLコレステロール(善玉)
血管壁にたまったコレステロールを回収して肝臓に戻すお掃除係。少なすぎると、掃除が追いつかない。
基準:40mg/dL未満で「低HDLコレステロール血症」
中性脂肪(トリグリセライド、TG)
エネルギーの貯金箱。多すぎると、善玉を壊し、悪玉の質を凶悪化させる。
基準:空腹時150mg/dL以上、または随時(食後でも)175mg/dL以上で「高トリグリセライド血症」
2022年のガイドライン改訂で、食後でも判定できる「随時175mg/dL以上」という基準が初めて設定されました。午後の外来で採血しても判断できるようになったのは、大きな進歩です。
Non-HDLコレステロール
「総コレステロール − HDL」で計算できる値。LDL以外の動脈硬化を進める脂質(レムナントなど)も含めた総合指標です。食事の影響を受けにくいので、空腹でなくても使えるのが利点。
基準:170mg/dL以上で脂質異常

糖尿病があると、なぜ脂質管理が特に大切なのか
糖尿病のある方は、そうでない方に比べて心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高いことがわかっています。そのため、脂質の管理目標も一般より厳しめに設定されています。
ガイドライン(2022年版)における糖尿病の方のLDL目標値
糖尿病あり(合併症なし・禁煙):120mg/dL未満
糖尿病あり+末梢動脈疾患、細小血管症(網膜症・腎症・神経障害)、または喫煙あり:100mg/dL未満
冠動脈疾患やアテローム血栓性脳梗塞の既往あり+糖尿病:70mg/dL未満
一般の方の一次予防目標(低リスク)が160mg/dL未満ですから、糖尿病があるだけでかなり厳しい目標になっていることがわかります。
ただし、糖尿病に伴う脂質異常は「LDLの数値だけ見ていれば安心」とは限りません。糖尿病では中性脂肪が高く、HDLが低く、LDLの質が変化するという独特のパターンがあります。
LDLが基準値内でも、中性脂肪が200以上、HDLが40未満というパターンがあれば、安心はできません。
もっと深く知りたい方へ: ⚠️ぜんぶ代謝のせい #3「コレステロールが高いのも、代謝のせいですか?」で、インスリン抵抗性が脂質バランスを崩すメカニズムとsmall dense LDLについて解説しています。

検査結果の「読み方」
検査結果を見るとき、ひとつの数字だけに注目しがちですが、脂質はセットで見るのが鉄則です。
実際に外来でよく見る例を挙げます。
ケースA: LDL 145、中性脂肪 90、HDL 60
→ LDLだけ高い。LDLを下げることに集中すればOK。
ケースB: LDL 115、中性脂肪 250、HDL 35
→ LDLは基準値内に見えるが、中性脂肪が高くHDLが低い「糖尿病型パターン」。LDLの質も悪くなっている可能性あり。むしろケースAより注意が必要。
ケースBのような方が、「LDLは大丈夫ですね」と言われて安心してしまう——これがいちばん怖いパターンです。
次の外来で検査結果を見るときは、LDL・中性脂肪・HDLの3つをセットで確認してください。
生活の中でできること
脂質異常症の治療は、まず生活習慣の改善が基本です。
① 中性脂肪を下げる食事のコツ
精製糖質(白いパン、菓子類、ジュース)と過剰なアルコールを減らすことが最も効果的。果糖を多く含む加工食品も控えめに。魚油(EPA・DHA)には中性脂肪を下げる効果があり、ガイドラインでも魚の摂取を増やすことが推奨されています。
② LDLを下げる食事のコツ
飽和脂肪酸(動物性脂肪)を減らすことが基本。バターや脂身の多い肉を控え、魚や植物性の油に置き換える。食物繊維(野菜・海藻・きのこ)を25g/日以上摂ることも効果が期待されています。
③ 運動はHDLを上げる最も確実な方法
有酸素運動(ウォーキングなど)はHDLを上げ、中性脂肪を下げます。これは薬ではなかなか難しいこと。運動にしかできない仕事です。
まとめ
コレステロールも中性脂肪も体に必要。問題は「多すぎ」と「バランスの崩れ」
見るべき数字は4つ:LDL・HDL・中性脂肪・Non-HDL
糖尿病があるとLDLの管理目標が一般より厳しい(120未満、合併症ありなら100未満)
糖尿病型の脂質異常はLDLの数値だけでは見えない。中性脂肪とHDLもセットで確認
中性脂肪は食事と運動への反応が大きい。HDLを上げるのは運動が最も確実
次の血液検査の結果を見るとき、LDLだけでなく、中性脂肪とHDLの欄にも目を通してみてください。3つセットで見ると、自分の脂質の「全体像」が見えてきます。
参考情報
・日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』
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※この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の治療については主治医にご相談ください。
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