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入門講座#10:脂肪と血糖の意外な関係── なぜ太ると、血糖が上がるのか?

📘 入門講座#10
#10〜は肥満と血糖の関係を掘り下げます。
2型の方で#6〜9(1型シリーズ)を飛ばした方は、ここから再開できます。
初めての方 → #1「糖尿病ってそもそも何?」
前回 → #9「1型糖尿病でも明るく生きられる(後編)」



はじめに

3月4日は「世界肥満デー」でした。

世界中で肥満が増え続けていることへの関心を高めようと、毎年この日が設けられています。日本でもここ数十年で、肥満の人の割合はじわじわと増えています。

でも、この記事で最初に言いたいことは、啓発でも警告でもありません。

「太っているのは、あなたのせいじゃない」

ということです。

肥満は意志の問題ではなく、遺伝・環境・体の仕組みが複雑に絡み合った「体のトラブル」です。今日はその仕組みを、できるだけわかりやすく一緒に見ていきましょう。


そもそも「肥満」って何?

→ 結論:BMIだけでは見えない「内臓脂肪」が、体に悪さをする本体です。

医学ではBMI(体格指数)という数値を使います。

BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
日本ではBMI 25以上を肥満と定義。身長165cmなら体重68kg超が目安。

ただし、BMIだけでは見えないことがあります。それが内臓脂肪の問題です。

・皮下脂肪:皮膚のすぐ下につく脂肪。つまめる、あのお肉です。
・内臓脂肪:お腹の中、臓器のまわりにつく脂肪。外から見えにくい。

実は体に悪さをするのは、主に内臓脂肪のほうです。BMIが正常でも内臓脂肪が多い「隠れ肥満」の方もいます。健診で腹囲を測るのはそのためです(男性85cm・女性90cm以上が目安)。


脂肪が増えると、体の中で何が起きるのか

→ 結論:内臓脂肪が増えると「鍵穴が歪み」、インスリンが効かなくなる。さらに炎症物質が全身に悪さをします。

インスリンが「効きにくく」なる

#1で「インスリン=鍵」というたとえを紹介しました。内臓脂肪が増えると、この鍵穴の形が歪んでしまうイメージです。鍵(インスリン)はちゃんと出ているのに、うまく刺さらない。だから血糖が下がりにくくなる。

これをインスリン抵抗性といいます。

脂肪細胞が「厄介な物質」を放出し始める

脂肪細胞はただの「貯蔵庫」ではありません。実は様々な物質を分泌する、ある種の臓器です。内臓脂肪が過剰になると、アディポカインと呼ばれる炎症性の物質を大量に放出するようになります。

① 血管の慢性炎症 → 動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中のリスクが上がる
② インスリン抵抗性をさらに悪化 → 2型糖尿病が進行しやすくなる
③ 細胞の異常増殖を促進 → 大腸がん・乳がん等のリスクが上昇
④ 血圧・脂質への悪影響 → 高血圧・脂質異常症・メタボにつながる

肥満が怖いのは「見た目」や「体重」だけの問題ではなく、こうした体の内側で起きている静かな炎症と連鎖にあります。


膵臓が疲れていく流れ

→ 結論:糖尿病は「急に発症する病気」ではなく、長い時間をかけて進む変化の結果です。

インスリン抵抗性が続くと、膵臓が「もっと鍵を作ろう」と頑張ります。最初のうちは、たくさんインスリンを出すことで血糖を何とか正常に保てます(代償期)。健診の血糖値はまだ正常、でも体の中では膵臓が無理をしている状態です。

やがて、膵臓が疲弊して十分なインスリンを分泌できなくなります。ここで初めて血糖値が上がり、糖尿病と診断される流れになります。


じゃあ、痩せれば治るの?

→ 結論:「治る可能性がある」。体重の5〜10%を落とすだけでインスリン抵抗性は改善します。

正確には「治る」より「寛解」という言葉を使います。「完治」は病気の原因が消えて再発リスクがゼロになること。「寛解」は薬を使わなくても血糖が正常範囲に保たれている状態です。

研究では、体重の5〜10%を落とすだけでインスリン抵抗性が明らかに改善することがわかっています。体重80kgの人なら、4〜8kgの減量です。「全部落とさないと意味がない」わけではありません。

もちろん全員がそうなるわけではありませんし、寛解後も油断は禁物です。でも「一度なったら終わり」ではないことは、知っておいてほしいのです。


今日のまとめ

・内臓脂肪が増える → インスリンが効きにくくなる
・過剰な脂肪細胞 → 炎症物質を放出 → 動脈硬化・がんリスクも上昇
・膵臓が代償しきれなくなると → 糖尿病に
・でも、少しの体重減少でも体は応えてくれる。寛解という出口がある

肥満は「だらしないから」でも「食い意地が張っているから」でもありません。体の仕組みと、環境と、積み重なってきた生活の結果です。

責めるより、仕組みを知って、小さな一歩を踏み出す。それがこの学校のやり方です。

👣 今日の一歩:自分のBMIと腹囲を1回だけ測ってみてください。知ることが出発点です。


参考情報
・日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2022』
・日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』


📘 次の入門講座 → #11「肥満診療とは── 保険適用の条件と、治療の選択肢」
📗 すぐ動きたい方 → 実践ゼミ#1「食後10分ウォーク」
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※この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の治療については主治医にご相談ください。

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