Unbeaten Tracks in Japan (1) (『日本奥地紀行』の原書):版の違いについて
『ふしぎの国のバード』がとても面白く、扱われている内容が日本史好きの私にはなんとも魅力的な内容であること、そして、その原作に当たる Unbeaten Tracks in Japan を洋書リーディングの題材にしようかと思っていることは、以前書いたことがあります。
早速原書となる Unbeaten Tracks in Japan を探したわけですが、2つの点で驚くことになります。
1つめは、その中身が、ちょっとした旅行記といったようなものではなく、想像していたよりもはるかに緻密で詳細な描写を含む、論文のようなものだったこと。
英語のレベルも高いため、原書だけではなく、同時並行で訳書を読もうと決めました。
2つめは、原書にいろいろなパターンがあり、なんだかとてもややこしく、対英で読むための素材を決めるまでにとても時間が掛かったこと。
特に厄介だったのは、2つめの点で、原書に複数の版が存在したため、どれを読むかを決めるまでにかなり時間が掛かり、後から振り返っても何だか良くわからなくなってきたので、自分の振り返りも兼ねて簡単にここまでの経緯を記録に残しておくことにしました。
原書も訳書も、いつでもどこでも読めるように電子版で読めることを条件としました。
訳書の決定
いろいろ調べた結果、訳書については、『完訳 日本奥地紀行 1~4』一択です。(ただし、購入には注意も必要です。)
同じような書影で「新訳 日本奥地紀行」というのもあるのですが、原書の版が少し違うので注意が必要です。
他にも『日本奥地紀行 』(平凡社)などいろいろあるのですが、訳書を選ぶなら、新しさと詳しさから、まず『日本奥地紀行』(平凡社)などといったものは候補からはずし、『新訳~』か『完訳~』の二択としました。
ではこの二つの違いは何かというと、原書のバージョンの違いでした。
原書には、蝦夷までの旅のほか、いったん東京に戻った後に伊勢までの旅をした記載が含まれるフルバージョンがあるのですが、『完訳』にはそこまでのすべてが含まれています。
また、『新訳』の方は、蝦夷までの旅の記載は含まれているものの、一部記載が省略されていたり、伊勢までの旅の記載も含まれていなかったりするため、訳書としては『完訳』の一択となりました。
ただし、Kindle で買うには注意が必要です。
Amazon にも但し書きがあるように、固定レイアウトでデータが作成されているため、文字の表示サイズが選べず、文字のハイライトや検索などの機能も使えません。
タブレット端末で読むなど、ある程度大きなサイズでの表示ができないと、老眼にはかなり厳しいです。
訳書が決まったところで、今度はフルバージョンの英語を探せばいいわけですが、そもそも版の違いが判らず、原書の選定は混乱を極めました。
原書の版の違い
版の違いが判らず混乱しているときに、以下の論文を見つけてようやく整理ができました。大学のサイトなので勝手にリンクを貼るのはどうかと思いますので、論文のタイトルだけ記載します。
イザベラ・バードの生前に出版された Unbeaten Tracks in Japan の4種の版における違い ―― 思考・行動の変化を反映した改訂 ――
フルバージョンとの内容の違いを含め、詳細についてはこの論文を読んでいただくのが良いと思うのですが、簡単にいうと Unbeaten Tracks in Japan の原書には、4つのバージョンがあります。
①Unbeaten Tracks in Japan 2巻本原著(1880年初版 in イギリス)
⇒オリジナル=フルバージョン【ジョン・マレー版】
⇒『完訳 日本奥地紀行』はこの版の翻訳
⇒該当する書籍の電子版は見つけられなかった
⇒紙版はある(高額)
②Unbeaten Tracks in Japan 2巻本原著(1881年初版 in ニューヨーク)
⇒ファクシミリ版【パトナム版】
⇒内容はほぼ①と同じだが、タイトルに ON THE HORSEBACK OF という語が入って騎馬旅行であることが強調されていること、私信の番号が削除されて小見出しがつけられている。(この見出しは『完訳~』にも踏襲された)
⇒該当する書籍の電子版は後述
③Unbeaten Tracks in Japan 1巻本原著(1885年初版)
⇒①から内容の一部を削除し、2巻を1巻にまとめたもの(堅苦しい日本研究部分を削除して「旅行と冒険の本」を作ることが目的だったらしい。著者生前の改訂出版。)
⇒ Gutenberg の Unbeaten Tracks in Japan はこのバージョン
⇒『新訳 日本奥地紀行』はこの版の翻訳
④Unbeaten Tracks in Japan 新版原著(1900年初版)
⇒著者が69歳の時に、初版から削除したものを復活させて1冊にまとめたもの。
⇒①と全体構成は同じだけれど、単語が微妙に変わっていたり、一部削除された内容もある
ようやく整理ができました。
原書の決定
上に書いた通り、①の原書を読みたいけれども、この原書が紙版しかなく、大きくて高価なものをわざわざ紙版で入手するのは抵抗があるので、③のGutenberg の本をダウンロードすることにしました。
この版と①との差分は上にあげた論文の中でリストアップされているので、その箇所だけは英語はあきらめ、『完訳』の日本語のみを読む・・というスタイルでリーディングを続けることにしました。
Gutenberg にあるデータから英語データをEpub形式でダウンロードし、そのファイルを iPhone または iPadMini の Book アプリで開き、Kindle で開いた『完訳』を、SpritViewで左右に並べて読み進めました。
チェックのお仕事同様、私は左側に原文、右側に訳文を配置します。

iPhoneに訳文巻末の訳注を表示
『完訳』は、本文と同じくらいの量の解説や注釈がついているので、そちらは iPhone に表示。もう一つ、上記の論文の中にある、①の原書と③の原著の差分リストを、必要に応じて確認しながら読み進めていきまました。
日光に行ったところまでは照らし合わせながら読んだのですが、しばらく放置していたら忘れてしまったので、再度読み直し始めて、また放置・・となり、もう一度読み直そうとしたところで、本当に①や②の電子版は本当にないのか、もう一度だけ探しててみようと思いました。
というのも、実は週末からインフルエンザになり、寝込んでいます。
木曜までお休みなのですが、熱が上がったり下がったりでごろごろしているのがあまりにもったいなくて。
原書の決定再び
探してもよくわからないので、最後の手段として ChatGPT に聞いてみました。
素っ頓狂な返事や、もうわかっているよ・・という回答もあったりしたのですが、数回やり取りしたところで、有益な情報も得られました。
上記の②(パトナム版)にあたるスキャンデータが、Internet Archive にありました!
Vol. I
Vol. II
Vol.II の方には Epub 版がなかったので、両方PDFでダウンロードして、Bookアプリで読み込んでみたところ、Epubデータ同様、SpritViewモードで読むことができました。
本当はオリジナル版の①が良かったのですが、『完訳』の方ではこの「パトナム版」のタイトルのつけかたを踏襲しているので、都合がいいといえば都合がいいかも。
ようやくここまでできたので、もう一度最初から読み直してみようと思います。読んだことはどんどん忘れていってしまうので、面白かったことだけピックアップするなど、何か書いてみても面白いかなと思いました。
ところで。
上記サイトからダウンロ―ドしたデータの表紙に、鎌倉の「長谷寺」の名前が出てきます。
長谷寺で所有していたデータをスキャンしたものなのでしょうか?
ちょっと気になるところですが、今度鎌倉に行った時に聞けたら聞いてくることにして、今回は深追いせずに、読み直しに入ろうと思います。
Unbeaten Tracks in Japan の原本を見れたと先日の記事に書きましたが、
このスキャンデータ、日焼けやシミまできれいにスキャンされているので、古文書を読んでいるドキドキ感が味わえてかなりワクワクします。
また、『完訳』の方にはハイライトができないのですが、原書の方はPDFなので、マークすることもできて、これはなかなかよさそうです。
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