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連載2:はじめに〈青空告解〉ありき1-2

マークス神父と「また煌堂で」

1-2 はじめに〈青空告解〉ありき

 ジョー・マークスの爆発の発端は、教会の庭で行っていた告解が禁じられたことだった。

 四旬節(注:キリストの受難と十字架上の死を思い起こす、復活祭を迎えるための六週間)のこの季節、教会の信徒たちはゆるしの秘跡(注:キリストの代理者である司祭に罪を告白し、神からゆるしの恵みをいただくこと)を求めて教会にやって来る。

 教会聖堂内にある従来の小さな告解室は、しかし、密を避けるために使用不可となっていた。

 狭い部屋が危険だと言うのなら、大空の下で告解を聴くのは問題ないはずだ。
 ジョーはゆるしの秘跡を教会の庭で行おうと思いつき、教会の主任司祭の許可を得て、自ら実行に移した。

 信徒たちは芝生の上で、マークス神父の前に列を作った。
 もちろん一定の距離を取って。

 誰が言い出したか、ある時から「青空告解」と呼ばれるようになったそれは口伝てに広まり、人々は喜んで教会にやって来た。
 神の恵みに与るために。

 マークス神父は真心こめて、一人ひとりに仕えた。

 いつの時も、告解を終えた人たちは、誰もがたいがい安堵の表情を浮かべ、聖堂でゆっくり祈りの時間を持つ。
 静かに神に感謝を捧げ、それから家路に着く。

 「ほとんどの人は、来た時と帰る時とは別人ですよ」と、ジョーは微笑む。
 なぜならば、神の御手が一人ひとりに触れるから。

 自分がゆるされたと感じた時、その人の内側から光が輝き出る。
 本人は意識していないかもしれないけれど、光が煌めいている。

 「神様の愛の力を見るような気がします。神様は大きい」

 晴れやかに教会を出て行く人々を見送りながら、マークス神父は心の中で一人ひとりに祝福を与え、彼らのために祈った。
 「どうか主よ、彼らが守られますように、彼らが平和でありますように」と。

 けれどもその朝、ついにその青空告解も中止される旨が言い渡されたのである。

 「聖週間」(注:キリストの受難を記念する、教会にとって一年で最も重要な一週間)を翌週に控えているというのに、教会は封鎖を決定したのだった。

 なんということか! 
 教会施設が施錠されることになるとは!
 カトリック教会のこの決定は、ジョー・マークスをひどく苦悶させた。

 自分は日本に命を捧げる覚悟で来たわけで、死ぬことなんて全然怖くない。
 今、こんな状況だからこそ、日本の人たちのために何かをしたいのに。
 年老いた自分にも、何かできることがあるはずなのに。

 ああ、人々が教会から締め出されるなんて! 
 教会が封鎖されるなんて!

 タブレットの向こう側で、マークス神父は再び呻き、うな垂れた。

 長い沈黙があって、私は口を開いた。
 「ねえジョー、今はご自分が死ぬことではなく、生きることを考えていただけませんか」
 「・・・・・」

 「世界中で多くの人々が亡くなっている今、あなたまで逝こうとしないでくださいな。そうでなくても現代は、司祭の数が減ってきているのですから」

 「つい先日も、ご友人だったヨーロッパの司祭が感染して亡くなって、あなたは悲しんでおられたではありませんか」

 「ミカ、私たちは司祭ですよ。いつでも準備はできている。彼だって、きっとそうだったはずだ。もちろん寂しいけれど、死は終わりではないし、不幸でもない」

 「わかっています。でも、教会はまだあなたが必要です」

 「ジョー、今は神のために生きることを考えてくださいません?」

 「敵は目に見えない強力なウィルスです。もっと慎重にならないと、本当に殺されてしまいますよ。あなたは一途で無鉄砲な方ですから」

 「ミカゲ、あなたは庭での告解が間違っていたと言いたいの?」
 マークス神父は声を荒げた。



mikageです:

初めてのnoteにいろいろ戸惑っています。
あれ、書いたものはどこに消えた?
このボタンはナンデスカ?
さっぱりワカラン!

本作の主人公マークス神父(仮名)も超アナログ人間でありまして。
タブレットでメールを打つのも大騒ぎでした。
モタモタしている私を見て、上で笑っている気がする….(悔しいぞ…)

ともあれ。

コロナ禍中に、恩師と過ごしたバーチャル聖堂「煌堂」での祈りの日々を、連載で綴ってまいります。

更新は不定期です。
1話ごと、祈りの中で言葉を紡いでおります。
気長にお付き合いくださいませ。

なお、本作は実話録ではありますが、
主人公はじめ登場人物・組織名等は、
(少なくとも当面は)仮称を用います。

読者の皆様には、ジョー・マークスを、
世間的な「肩書き」や、修道会・教会という組織の名称とは切り離された、ただ「神の御前に何ものでもない、一人の無名の老人」として、受け取っていただきたいと望んでおります。

また、記事は事実をベースとしつつ、
一部の出来事や時系列などに、再構成や脚色を含みます。

続き(連載3)はこちら↓

連載の第1回はこちら↓

(↓たまに単発で短編を挟むことがあります)

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舞い上がって喜びます♪

引き続き、よろしくお願いいたします。

ジョーとの真剣勝負は次回に続きます。
愛と祈りをこめて
mikage

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