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誰もいない鍋冠山で、うまかっちゃん味のおにぎりを食べた

新戸町の方には、行ったことがなかった。それだけの理由で、女神大橋からそのまま足を伸ばし、鍋冠山まで歩いた。着いた展望台には、誰もいなかった。この暑さなら当然かもしれないけれど、いつもは誰かしらいる場所に誰もいないというのは、それだけで少し奇妙な景色になる。

月曜日、マラニックのつもりで出たけれど、暑くて結局、ほとんど走れなかった。

女神大橋まで来て、いつもならここで引き返す。でもその日は、新戸町の方に行ったことがなかった。最悪、道がわからなくなったら引き返せばいい。そう思ってから、あ、スマホがあるからマップが見られるんだった、と思い出す。それなら、鍋冠山まで行けるんじゃないか。そんな軽い思いつきで、足の向きが変わった。

途中のローソンに寄る。シンプルなおにぎりを買うつもりだったのに、目に入ったのは「うまかっちゃん味」の炒飯おにぎりだった。うまかっちゃんはラーメンで、これはおにぎりだ。中身とパッケージが一致していないのに、なぜか手が伸びた。プロテインドリンクも一緒にかごへ。

耳の中では『それでも旅に出るカフェ』が流れている。「自分がわからなくなったとき、旅に出るんです」というのが、この本の中の誰かのせりふらしい。私は旅というほどのことはしていない。ただ地図があるからと、少し遠くまで歩いただけだ。


鍋冠山の展望台に着く。誰もいない。ベンチにも、階段にも、駐車場にも、人の気配がまったくない。この暑さなら当然かもしれないけれど、いつもは誰かしらいる場所に誰もいないというのは、それだけで少し奇妙な景色になる。


そのベンチで、うまかっちゃん味のおにぎりを食べる。ラーメンの味がするおにぎり、というのを頭のどこかで期待していた気がするけれど、食べてみると普通に炒飯の味だった。当たり前だ。

耳の中では、カフェの客が誰かの事情を抱えたまま、スイーツを口に運んでいる。何のスイーツだったか、もう思い出せない。私が口に運んでいたのはプロテインドリンクで、記憶に残るタイプの食べ物ではなかったからかもしれない。

展望台から、日陰を求めて山の裾をぐるっと回る道に入る。木漏れ日が足元で揺れている。涼しさが目的で、緑がどうこうという情緒はあとから付いてきた感じがする。


歩き終えて、最後はセブンでアイスコーヒー。買ってから気づいた。前日も同じものを飲んで締めていた。店は違う、それでも結局セブンはセブンだ。そんなに毎回同じでいいのか、自分でも少し呆れる。でも結局、暑い日の終わりはこれが一番合う。


物語はまだ続きの途中で、私の方も鍋冠山の続きがまだ気になっている。次はどこまで足を伸ばすことになるのか、それは歩いてみないとわからない。

#エッセイ #耳の中の物語 #オーディブル #Audible #近藤史恵 #それでも旅に出るカフェ #マラニック

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