63歳の知性が最新詐欺を完全論破する【小説】『パンドラ・ファイル』(その4)虚構の箱舟(アーク) ~楽園を売る詐欺師たち~第3章:沈む箱舟
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天城の演説がクライマックスに達し、スクリーンに、
「ブラジル政府公認! エデン・シティ建設予定地」
・・・の美しいCG映像が映し出された時だった。
突然、映像が乱れ、ノイズが走った。
「なんだ? 機材トラブルか?」
天城がスタッフを怒鳴りつける。
だが次の瞬間、スクリーンに映し出されたのは、無機質なプログラムコードの羅列だった。
「な、なんだこれは……」
会場がざわめく中、剣崎が客席から声を上げた。
「それは君が売っている『夢』の正体だよ、天城恭弥!」
剣崎はスタッフの制止を振り切り、手元のマイク(Bitがハッキングして会場のスピーカーに接続済み)で語りかけた。
「田畑君! そして元エンジニアの方々、よく見てくれ。56行目のコードだ。
『Lock_Transfer(送金ロック)』
……これは何だ?」
田畑がハッとしてスクリーンを凝視する。
「……え? 『運営の許可がないと売却できない』?
それに『バックドア(裏口)』がある……?」
田畑の声が震えた。
「これじゃあ、僕たちはコインを売れない。
天城先生だけが持ち逃げできる仕組みじゃないか!」
会場に衝撃が走る。
天城は顔を引きつらせた。
「で、デタラメだ! それは高度なセキュリティのための……」
「黙りたまえ、お茶汲みのバイト君」
剣崎は冷たく言い放った。
スクリーンが切り替わる。今度は、当時の証券会社の勤務記録だ。
『アルバイト:天城恭弥(雑用係)』の文字。
さらに画面が変わる。海外の通販サイトの画面。
『大統領ゴールドメダル・記念品セット $49.99』。
「これが君の言う『超人』の実態か?
ニーチェが言いたかったのは、こんな詐欺師のことではない。
……君はただ、安っぽいメッキで自分を大きく見せているだけの、哀れな道化だ」
さらに、ブラジル政府からの
「アーク・コインとは無関係である」
・・・という公式否定声明が映し出される。
「嘘だ……」
最前列にいたシングルマザーが崩れ落ちた。
「私の子供のための貯金が……」
「退職金が……」
夢から覚めた人々は、自分が立っている場所が「楽園への箱舟」ではなく、「沈みゆく泥船」だったことに気づいた。
怒号が飛び交う。
「金返せ!」
「嘘つき!」
天城は後ずさり、マイクを落とした。
「ち、違う……私は選ばれた人間だ! 凡人どもが私を理解できるはずがない!」
叫びながら逃走を図る天城だが、出口には既に、アバカスが手配した警察と金融庁の捜査員が待ち構えていた。

