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医療は「受けるもの」ではなく「理解するもの」だった――2冊の本が教えてくれた大切なこと

研修講師、手話通訳士の横山熊太郎です。

AIを活用しながら、シニア向けの情報や、書籍やガジェットの紹介などをしています。



病院に行けば治してもらえる。

医師の説明を聞けば分かる。

検査を受ければ安心できる。

私はこれまで、どこかでそんなふうに考えていました。

しかし年齢を重ねるにつれて、自分自身の健康だけでなく、親の介護や入院、看取りなどを経験すると、医療というものはそれほど単純ではないことに気づきます。

なぜ医師の説明が理解できないのか。

なぜ患者は不安を抱えたまま帰宅するのか。

なぜ医療現場では「話しているのに伝わらない」が起きるのか。

東畑開人さんの『カウンセリングとは何か 変化するということ』と、森井大一さんの『医療現場の会話は、なぜ噛み合わない』を読むと、その理由が少し見えてきます。

そして同時に、私たち一般人こそ医療について学ぶ必要があることに気づかされるのです。

医療は専門家だけのものではない

病院へ行くと、私たちはつい受け身になります。

医師の言葉を聞き、処方された薬を飲み、指示に従う。

もちろん専門知識は医療者の方が圧倒的に持っています。

しかし、医療の主人公は本来患者自身です。

どの治療を選ぶのか。

どのような生活を送りたいのか。

何を優先するのか。

これらは医師ではなく患者本人が決めることです。

つまり現代医療では、患者にも参加者としての役割が求められているのです。

医師は病気を見ている、患者は人生を見ている

森井氏の本で特に印象的だったのは、「コード」と「ケア」という考え方です。

医療者は医学的な知識や診断、検査結果といった「コード」の世界で考えています。

一方で患者は、

「仕事は続けられるのか」

「家族に迷惑をかけないか」

「この先どうなるのか」

という「ケア」の世界で生きています。

例えば、

「検査結果は問題ありません」

という医師の言葉。

医学的には良い知らせです。

しかし患者は、

「ではなぜ痛いのですか」

「この不安はどうすればいいのですか」

と思っているかもしれません。

お互いに真剣に話しているのに、見ている景色が違うのです。

このことを知るだけでも、医療との向き合い方は大きく変わります。

病気だけでなく、不安も伝える

東畑氏の本はカウンセリングについて書かれています。

しかし読んでいて感じるのは、医療にもそのまま当てはまるということです。

人は単に症状だけを抱えているわけではありません。

病気の背後には必ず不安があります。

恐れがあります。

悩みがあります。

ところが診察室では、

「熱があります」

「咳が出ます」

「膝が痛いです」

という症状だけを伝えて終わることが少なくありません。

本当は、

「仕事を休めないのです」

「母の介護があるのです」

「この病気が怖いのです」

という部分こそ大切なのかもしれません。

医療者が病気を診るなら、患者は自分の人生を伝える必要があります。

分からないことを分からないと言う勇気

私たちは医療に対して遠慮しがちです。

説明を聞いても、

「たぶんそういうことだろう」

と理解したつもりになってしまいます。

しかし実際には、専門用語を正確に理解することは簡単ではありません。

だからこそ、

「それはどういう意味ですか」

「もう一度説明してください」

「私の理解は合っていますか」

と確認することが大切です。

質問することは失礼ではありません。

むしろ自分の健康を守るために必要な行動です。

高齢社会だからこそ学ぶ価値がある

私は母の介護や看取りを経験しました。

その中で痛感したのは、医療や介護について知らないことで生じる不安の大きさです。

もし事前に知識があれば。

もし医療者との話し方を知っていれば。

もし制度を理解していれば。

そう思う場面が何度もありました。

これからの日本では、多くの人が親の介護や自分自身の治療と向き合います。

だから医療の勉強は医療従事者だけのものではありません。

私たち全員の学びなのです。

医療リテラシーは人生を守る力になる

医療を理解すると言っても、医学部レベルの知識を身につける必要はありません。

大切なのは、

・医療者と患者では見ているものが違うことを知る

・不安や希望を言葉にする

・質問することを恐れない

・自分で考えて選択する

という姿勢です。

これは医療リテラシーと言ってもよいでしょう。

そしてその力は、病気になったときだけではなく、介護や看取り、家族の支援など人生のさまざまな場面で役立ちます。

おわりに

『カウンセリングとは何か 変化するということ』と『医療現場の会話は、なぜ噛み合わない』は、一見すると専門家向けの本に見えるかもしれません。

しかし実際には、患者として生きる私たち全員に関係する本です。

病気にならない人はいません。

年を取らない人もいません。

だからこそ、元気なうちに医療について学ぶ意味があります。

医療は医師だけのものではありません。

私たち自身の人生そのものだからです。

この2冊は、そのことを静かに、しかし力強く教えてくれる一冊だと思います。


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