製造業向け|黙って良い仕事をする人ほど、評価されにくい
現場では、何かが起きた時の方が目立つ。
納期が遅れた。
不良が出た。
材料が足りない。
寸法が違う。
客先から指摘が入った。
こうなると、誰が動いたのかが見えやすい。
急いで直した人。
原因を調べた人。
代替案を出した人。
周りに声をかけた人。
もちろん、それは大事な仕事だ。
ただ、少し不思議だと思うことがある。
問題になってから動いた人は目立つのに、問題になる前に止めた人は目立ちにくい。
本当は、その前に誰かが気づいていたかもしれない。
図面の違和感を拾っていた。
材料の不足に早めに気づいていた。
次の工程が困らないように、先に整えていた。
不良になりそうな部分を、黙って確認していた。
そのおかげで、何も起きなかった。
でも、何も起きなかった仕事は、会議で話題になりにくい。
「今日も普通に終わりました」
この一言の中に、誰かの確認や判断が入っていることは多い。
普通に見える仕事ほど、見落とされる
良い仕事は、意外と普通に見える。
予定通りに終わる。
寸法が合っている。
手戻りがない。
次の工程が止まらない。
出荷前に慌てない。
外から見れば、ただいつも通りだ。
でも、その「いつも通り」を保つのは簡単ではない。
図面を見落とさない。
材料を間違えない。
道具の状態を見る。
前の工程のズレに気づく。
後ろの工程が困らないように仕上げる。
そういう小さな確認が積み重なって、ようやく普通に見える。
ところが、普通に終わった仕事は評価されにくい。
トラブルがないからだ。
騒ぎにならない。
報告書にもならない。
誰かが怒られることもない。
急ぎの手直しも発生しない。
だから、そこにあった工夫や確認が流れてしまう。
何も起きなかったのではない。
何も起きないようにした人がいたのかもしれない。
黙っている人が、何も考えていないとは限らない
黙々と仕事をしている人を見ると、つい分かりにくく感じることがある。
何を考えているのか。
言われたことだけをやっているのか。
自分から動く気がないのか。
確かに、そういう場合もある。
指示がなければ動けない。
確認しない。
作業の意味を考えず、ただ手を動かしている。
それは課題だと思う。
ただ、黙っている人が全員そうとは限らない。
自分の中で段取りを組んでいる。
余計なことを言うより、まず形にした方が早いと思っている。
失敗しないように集中している。
周りに合わせるより、自分の精度を崩さないことを優先している。
こういう人もいる。
話すのが得意な人と、仕事が安定している人は同じではない。
会議で発言する人は目立つ。
改善案を出す人も分かりやすい。
周りを巻き込める人は、評価する側から見ても見つけやすい。
一方で、静かに仕事を整えている人は、近くで見ていないと分からない。
本人もあまり言わない。
「ここ、危なそうだったので見ておきました」
「次の工程が困りそうなので直しておきました」
「不良になりそうだったので止めました」
毎回そう言ってくれる人ばかりではない。
だから、見えないままになる。
声の大きさと、仕事の安定感は別のもの
現場では、声の大きい人が目立ちやすい。
困った時に声を出す。
人に頼む。
説明する。
自分のやったことを伝える。
それはそれで必要な力だ。
ただ、声が大きいことと、仕事が安定していることは別だと思う。
黙っている人の方が、毎日同じ品質で仕事を終えていることもある。
派手な改善はしなくても、不良を出さない人もいる。
問題が起きた時に目立たなくても、問題が起きないようにしている人もいる。
そういう人の仕事は、静かだ。
静かだからこそ、見落とされる。
そして、見落とされ続けると、本人もだんだん諦めていく。
どうせ見られていない。
騒いだ人の方が評価される。
問題を起こしてから直した人の方が目立つ。
黙って防いでも、誰も気づかない。
そう感じた時、良い仕事を続ける気持ちは少しずつ削られる。
これはかなりもったいない。
職場にとって本当に怖いのは、良い仕事をする人が急に怒ることではない。
静かに期待しなくなることだと思う。
見つける側にも力がいる
黙って良い仕事をする人を評価するには、管理する側が見つけに行くしかない。
誰がいつも手戻りを出していないのか。
誰の後ろの工程は安定しているのか。
誰が周りのミスを手前で止めているのか。
誰が道具や材料を整えているのか。
こういう仕事は、近くで見ていないと分からない。
本人は大きな声で言わない。
数字にも出にくい。
問題にもならない。
だから、放っておくと評価の場に出てこない。
目立つ人を見るのは簡単だ。
声を出す人。
会議で話す人。
大きなトラブルを直した人。
分かりやすい成果を出した人。
こういう人は、見ようとしなくても目に入る。
難しいのは、騒ぎにならない仕事を見ることだ。
不良を出さない人。
手戻りを減らしている人。
次の工程を止めない人。
毎日同じ品質で仕上げている人。
こういう人を見つけるには、管理する側にも力がいる。
何も起きなかった仕事にも、理由がある
何も起きなかった仕事を、ただの普通で終わらせない方がいい。
なぜ止まらなかったのか。
なぜ手戻りがなかったのか。
なぜ次の工程が困らなかったのか。
なぜいつも通りに終わったのか。
そこを見ていくと、静かに支えている人が見えてくることがある。
毎日、道具を整えている人。
図面の怪しいところを先に確認する人。
小さなズレをその場で直す人。
自分の作業だけでなく、次の人が困らない形にしている人。
それは派手ではない。
発表会向きでもない。
数字にもしにくい。
スローガンにもなりにくい。
でも、現場ではかなり大事だ。
大きな改善だけが改善ではない。
目立つファインプレーだけが貢献ではない。
毎日、問題を起こさずに仕事を渡していること。
それも十分に職場を支えている。
黙って良い仕事をする人を、埋もれさせない
前に出る人は必要だ。
人をまとめる人。
周りに声をかける人。
困った時に動ける人。
止まりそうな仕事を拾える人。
そういう人がいなければ、現場は回りにくい。
ただ、それだけで現場が成り立っているわけではない。
黙って品質を守る人がいる。
同じ作業を安定して続ける人がいる。
小さな違和感に気づいて、何も起きないようにしている人がいる。
その人たちの仕事は、静かすぎて見えにくい。
だからこそ、管理する側が見つけなければならない。
発言が少ないから、考えていない。
前に出ないから、主体性がない。
黙っているから、ただ作業しているだけ。
そう決めつける前に、その人が何を守っているのかを見た方がいい。
現場には、声にならない良い仕事がある。
それを見つけられる職場と、見つけられない職場では、静かに差が出る。
黙って良い仕事をする人ほど、評価されにくい。
だからこそ、その人たちを見落とさない目が、管理する側には必要なのだと思う。
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