見出し画像

製造業向け|「前と言っていることが違う」と言われた時、管理職は何を説明できるか

「前と言っていることと、違いませんか」

現場でそう言われたことがある。

責めるような言い方ではなかった。
むしろ、確認するような静かな口調だった。

それだけに、ごまかしづらい。

確かに少し前、私は別のことを言っていた。

その時は、今のメンバーで仕事を回す方がよいと考えていた。慣れていない人を動かせば教育が必要になり、かえって負担が増えると思ったからだ。

ところが、その後に人員が変わり、仕事量も変わった。

同じ体制を守り続ける方が無理を増やす状態になり、私は別部署から応援を入れる話をした。

そこで出たのが、最初の一言だった。

「前と言っていることが違いませんか」

言われてみれば、その通りである。

管理する側には、途中の事情が見えている

私の中では、突然考えを変えたつもりはなかった。

以前の判断には、以前の条件があった。

その後に新しい話が入り、今まで見えていなかった負担も分かってきた。状況が変わった以上、答えも変える必要がある。

頭の中では、そこまでつながっている。

しかし、現場へ伝わるのが最後の答えだけなら、

「前はやらないと言っていたのに、今度はやると言っている」

という話になる。

管理職は会議や相談の中で、少しずつ情報を受け取っている。

現場の人は、その過程をすべて見ているわけではない。

こちらには連続した話でも、受け取る側には急な方向転換に見える。

その違いを忘れると、

「状況が変わったからです」

の一言で済ませたくなる。

「状況が変わった」は、便利すぎる

状況が変わった。

管理する側がよく使う言葉だと思う。

間違いではない。

ただ、何が変わったのかを言わなければ、ほとんど説明になっていない。

天気予報が晴れから雨へ変わった時、「状況が変わりました」とだけ言われても、傘を持つ側は少し困る。

雨雲が近づいたのか。
予報が外れただけなのか。
念のため持っておけという話なのか。

理由によって、受け取り方は違う。

職場も同じだった。

人が一人抜けることになった。
仕事量の偏りが以前より大きくなった。
今の体制では、特定の人へ負担が集まることが分かった。

そこまで話せば、以前と違う判断になった理由は伝わる。

「今はそうなったから」

だけで終わらせれば、管理職の気分で方針が変わったように見える。

前の判断が間違っていたこともある

すべてを環境の変化で説明できるわけでもない。

時には、以前の自分の見方が甘かったこともある。

問題なく回ると思っていた。
もう少し余裕があると思っていた。
担当者が吸収できる範囲だと思っていた。

実際に始めてみると違った。

こういう時まで、

「当時としては正しい判断でした」

と言い続けると、少し苦しくなる。

当時の条件では妥当だった判断と、単に見立てが甘かった判断は違う。

私自身、以前の考えが足りなかったと認めた方がよい場面もあった。

管理する立場になると、過去の発言を訂正することが負けのように感じる時がある。

一度言ったことを変えれば、信用を失うのではないか。

迷っている管理職に見えるのではないか。

しかし、説明もなく押し通す方が、現場は余計に不安になる。

間違ったことより、間違っていない顔を続けることの方が、あとに残る場合もある。

現場が気にしているのは、昔の言葉だけではない

「前と言っていることが違う」

この言葉は、過去の発言を責めているだけではないのだと思う。

今回の指示は、いつまで続くのか。

また急に変わるのではないか。

何を基準に決めているのか。

そこが分からないから、以前の話を持ち出して確認している。

管理職が説明すべきなのは、前と今の違いだけではない。

何を守ろうとして判断したのか。

今回の方法で、どの問題を減らしたいのか。

また条件が変わった時、何を見て見直すのか。

そこまで見えれば、現場も「また気分で変わった」とは感じにくい。

逆に、理由が毎回違い、判断の物差しも見えなければ、どれだけ丁寧に話しても納得は得にくい。

答えが変わっても、基準まで変わったとは限らない

以前は、今のメンバーを動かさない方が、現場の負担を抑えられると考えていた。

その後は、人を動かさないことの方が一部の担当者を苦しくすると分かった。

方法は変わった。

しかし、守ろうとしたものまで変えたわけではない。

現場が無理なく仕事を続けられる状態にしたい。

その基準は同じだった。

一貫性とは、いつまでも同じ答えを言い続けることではないのかもしれない。

同じものを守るために、条件が変われば方法も変える。

そして、その間に何が起きたのかを話す。

管理職が前と違うことを言う場面は、これからもあると思う。

仕事量も、人も、会社の方針も変わる。

変化を見ながら判断する以上、答えを一度も変えない方が不自然である。

ただし、変えるのであれば説明がいる。

何が変わったのか。
以前の考えのどこが足りなかったのか。
今も変わっていない基準は何なのか。

「前と言っていることが違う」と言われた時、私は以前の発言を守ることよりも、その三つを話せるかの方が大事だと感じている。

説明できなければ、方針変更も気分の変化も、現場からは同じように見えてしまうからだ。


おすすめ記事

製造業向け|現場リーダーは、上司の正論を“作業に変える”役目がある
https://note.com/millennium_bird/n/n49028e94e069

製造業向け|改善は、不満をゼロにすることではなく、どの不満を選ぶかだと思う
https://note.com/millennium_bird/n/n5572c062846e

製造業向け|決めた理由が残っていないルールは、守り方が人によって変わる
https://note.com/millennium_bird/n/nc06ee9dde03c


Kindle本のご案内

現場リーダーや管理職には、上から来た方針を伝えるだけでなく、判断が変わった理由や、現場で守るべき線を言葉にする役割があります。

責任だけを抱え込み、現場との間で疲弊しないための考え方を、こちらにまとめています。

『現場リーダーが疲弊しないための工場マネジメント入門』



自己紹介

自己紹介|現場で感じたことを、少しずつ言葉にしています


いいなと思ったら応援しよう!