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製造業向け|目立つ人だけでは、現場は回らない

会社では、前に出る人が評価されやすい。

声を出す人。
場の空気を作る人。
周りを巻き込む人。
お客様に感じよく接する人。
会議で前向きな意見を出せる人。

こういう人がいると、職場は動きやすくなる。

営業なら、お客様との距離を縮めやすい。
現場でも、声を出してくれる人がいると作業の空気が変わる。
会議でも、誰かが前向きに話し始めると、止まっていた話が少し進む。

だから、表に立つ人が不要だとは思わない。

ただ、現場を見ていると、それだけでは仕事は成り立たないとも思う。

主役だけでは、舞台は始まらない

舞台には、主役がいる。

照明を浴びて、声を出し、客席の目を引く人。
その人がいるから、舞台に芯ができる。

でも、主役だけで舞台が始まるわけではない。

照明を当てる人がいる。
音を出す人がいる。
道具を準備する人がいる。
袖でタイミングを見ている人がいる。
客席からは見えないところで、次の場面を整えている人がいる。

その人たちがいなければ、主役はただ明るい場所で立っているだけになる。

職場も似ている。

声が大きい人、前に出る人、行動が早い人は分かりやすい。
周りからも見えやすい。
評価もしやすい。

でも、その裏で仕事を整えている人がいる。

毎日同じ精度で作業を続ける人。
人前で話すのは得意ではないけれど、異常に早く気づく人。
派手さはなくても、約束したことを静かに守る人。
周りを盛り上げることはできなくても、間違いを出さないように淡々と確認する人。

そういう人たちは、表からは見えにくい。

けれど、そこが抜けると現場は崩れる。

うまくいくほど、裏方の仕事は消えて見える

現場には、うまくいった時ほど見えなくなる仕事がある。

図面の違和感に気づく。
数量のズレを拾う。
材料の手配を先に確認しておく。
後工程が困らないように、早めに声をかける。
出荷前に、念のためもう一度見る。

その結果、問題は起きない。

納期は守れた。
手直しも出なかった。
お客様からの問い合わせもなかった。
後工程も止まらなかった。

そうなると、その確認は表に出にくい。

でも、何も起きなかったからといって、何もしていなかったわけではない。

舞台でいえば、照明が正しく当たり、音がずれず、道具が予定通り出てきたから、観客は安心して主役を見ていられる。
裏側の仕事は、うまくいくほど気づかれにくい。

現場も同じだと思う。

誰かが段取りを整えているから、後ろの人が迷わず動ける。
誰かが材料や図面の違和感を拾っているから、手戻りが減る。
誰かが地味な確認を続けているから、出荷後のトラブルが減る。

表に立つ人だけで職場が動いているように見える時ほど、袖で場面をつないでいる人を見落としやすい。

止める人がいるから、進める人も活きる

反応が薄い人がいる。

声が小さい。
すぐに前向きな言葉が出ない。
新しいことに慎重。
人前で話すと、少し硬くなる。

会社が求める人物像から見ると、少し物足りなく映るかもしれない。

「もっと積極的に」
「もっと明るく」
「もっと自分から動いて」

そう言いたくなる場面もある。

でも、その人が何もしていないとは限らない。

勢いよく進める人の横で、少し先の危なさを見ていることがある。
みんなが「大丈夫だろう」と進めようとしている時に、一人だけ図面の違和感を拾っていることもある。
口数は少なくても、納期や数量や仕様のズレに早く気づく人もいる。

仕事には、進める力がいる。

ただ、進める力だけでは危ない時もある。

止める人がいる。
整える人がいる。
同じ状態を保つ人がいる。
誰かが気づかないところを拾う人がいる。

舞台で全員が主役になろうとしたら、舞台裏は空っぽになる。
照明も合わない。
音もずれる。
道具も出てこない。

それでは、どれだけ主役が張り切っても舞台は崩れる。

職場も、目立ちたがり屋の主役だけでは何も成せない。

評価しやすい動きだけを見ていないか

職場では、分かりやすい動きが評価されやすい。

声を出す。
手を挙げる。
提案する。
周りを巻き込む。
明るく前向きに見える。

これは見える。

一方で、見えにくい仕事もある。

ミスを出さない。
黙って確認する。
同じ品質で続ける。
人が気づかない違和感を拾う。
後工程が困らないように、少し先を見て動く。

これは問題が起きなければ、ほとんど表に出ない。

会議で目立つのは、前に出た人になりやすい。
大きな声で動いた人は分かりやすい。
お客様の前に立った人も分かりやすい。

でも、職場の半分くらいは、見えにくい仕事でできている。

そこを見落とすと、現場の本当の姿が分からなくなる。

作業が予定通りに進んだ理由。
不良が出なかった理由。
後工程が止まらなかった理由。
お客様から問い合わせが来なかった理由。

その裏には、表に出ない確認や段取りがある。

目立つ人だけを見ていると、職場を支えている大事な仕事を見落としてしまう。

全員を同じ役にしなくていい

職場には、いろいろな人がいる。

明るい人。
静かな人。
勢いのある人。
慎重な人。
人と話すのが得意な人。
一人で集中する方が力を出せる人。
新しいことに強い人。
同じことを安定して続けるのが得意な人。

全員を同じ形にしようとすると、どこかで無理が出る。

聞き役の人に、無理に熱血型の営業を求めても不自然になる。
黙々と正確に作る人に、常に場を盛り上げる役を求めても疲れる。
慎重な人に、勢いだけで動くことを求めても苦しい。

人は、得意な形で力を出す。

主役には主役の持ち場がある。
照明には照明の持ち場がある。
音響には音響の持ち場がある。
舞台袖で支える人にも、ちゃんと持ち場がある。

どれか一つが偉いわけではない。

現場も同じだと思う。

前へ進める人には、前へ進める持ち場がある。
慎重な人には、止める持ち場がある。
聞き上手な人には、相手の本音を拾う持ち場がある。
資料や数字が得意な人には、感覚を整理する持ち場がある。
黙々と続ける人には、品質を安定させる持ち場がある。

それぞれ違うから、職場は何とかつながっている。

現場は、主役だけの舞台ではない

表に立つ人は必要だ。

そこは間違いない。

でも、表に立つ人だけでは現場は回らない。

前に出る人がいる。
裏で整える人がいる。
止める人がいる。
拾う人がいる。
黙々と積み上げる人がいる。

その全部があって、ようやく仕事になる。

表に立つ人だけを見ていると、舞台裏で場面をつないでいる人の疲れには気づけない。
主役だけを褒め続けると、照明も音響も道具係も、だんだん気持ちが離れていく。

現場も同じだと思う。

目立つ人だけで職場は成り立たない。
静かに整える人がいるから、今日も仕事がつながっている。

前に出る力だけではなく、裏で整える力も見る。
声の大きさだけではなく、仕事の安定を見る。
勢いだけではなく、止める判断を見る。

そうしないと、職場を支えている大事な人を見落としてしまう。

現場は、主役だけの舞台ではない。

見えないところで準備している人がいるから、今日も何とか幕が上がっている。


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