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製造業向け|理想の人材像を押し付けるほど、組織の幅は狭くなる

会社には、求める人物像がある。

前向きな人。
熱量のある人。
自分で考えて動ける人。
感じよく人と接することができる人。
相手の立場に立って行動できる人。

言葉としては、どれも正しい。

そんな人が増えれば、会社は良くなる。
営業であれば、お客様から好かれる人の方がいい。
現場であれば、黙って言われたことだけをやるより、自分で考えて動ける人の方がいい。

そこに異論はない。

ただ、現場で人を見ていると、いつも少し引っかかる。

その理想像を、全員に同じように求めて本当にうまくいくのだろうか。

みんなが同じように熱くなれるわけではない

「もっと熱量を持ってほしい」

こういう言葉は、会社の中でよく出てくる。

営業でも、現場でも、管理職でも、前向きに動ける人は確かに強い。
自分から声をかけ、場の空気を作り、相手に気持ちよく接することができる人は、周りにも良い影響を与える。

でも、全員がその形で力を出せるわけではない。

明るく前に出るのが得意な人もいれば、静かに信頼を積む人もいる。
人前で話すのは苦手でも、細かい確認や資料作りで力を発揮する人もいる。
その場を盛り上げることはできなくても、約束を守り、逃げずに対応することで信用される人もいる。

工場でも同じだ。

声が大きく、周りを引っ張る人だけが現場を支えているわけではない。
黙々と同じ精度で作業する人。
変化には慎重だけれど、危ないところに早く気づく人。
人に教えるのは得意ではなくても、仕上がりの違和感を見逃さない人。

そういう人たちも、現場には必要だ。

けれど、会社が掲げる理想像が一つだけになると、その人たちの良さが見えにくくなる。

理想像に合わない人が、悪い人とは限らない

「こういう人になってほしい」

その気持ちは分かる。

ただ、その言葉が強くなりすぎると、理想像に合わない人が、まるで足りない人のように見えてしまう。

熱量が低く見える人。
すぐに前向きな返事をしない人。
慎重に考えすぎる人。
人前で話すのが得意ではない人。
納得するまで動き出しが遅い人。

こういう人たちは、会社の理想から外れて見えることがある。

でも、現場ではそういう人が必要な場面もある。

勢いで進めると危ない仕事がある。
誰も止めない空気の中で、一人だけ「本当にこれでいいのか」と立ち止まる人がいる。
それは面倒な人ではなく、事故や手戻りを防いでいる人かもしれない。

前向きに見える人ばかりが強いわけではない。
慎重な人がいるから、見落としが止まる。
静かな人がいるから、淡々と仕事が続く。
疑問を持つ人がいるから、仕事の穴が見つかる。

理想像から外れているように見える人の中にも、現場を支えている力はある。

正論に合う人だけを集めると、組織は狭くなる

正論だけで考えれば、会社の方針に素直に従い、前向きで、熱量があり、誰からも感じよく見える人を増やした方がいい。

その方が扱いやすい。
説明もしやすい。
社内の摩擦も少なく見える。

けれど、本当にそういう人だけで組織を作ったら、会社は強くなるのだろうか。

私は少し違うと思っている。

同じような人だけが集まると、確かにまとまりは良くなる。
ただ、その分だけ違和感が出にくくなる。
反対意見が減る。
慎重な視点が消える。
誰かが言いにくいことを言わないまま、きれいに進んでしまう。

それは一見、良い組織に見えるかもしれない。

でも、現場で起きる問題は、いつもきれいな形では出てこない。

図面に少し違和感がある。
納期は守れそうだけれど、どこかに無理がある。
お客様のためと言いながら、現場の負担だけが増えている。
みんなが前向きに進めている中で、一人だけ不安を感じている。

そういう小さな引っかかりは、理想像に合う人ばかりの職場では見えにくくなることがある。

人を変えるより、違う人を活かす方が現実的だと思う

もちろん、人はまったく変わらないと言いたいわけではない。

挨拶、報連相、約束を守ること、身だしなみ、話の聞き方。
こういうものは教育で変わる。
現場で必要な基本動作も、訓練すれば身につく。

ただ、その人の根っこにある性格や得意不得意まで、会社の理想像に合わせて簡単に変えられるとは思わない。

明るく振る舞うことが得意な人もいる。
それが苦痛な人もいる。
即断即決が得意な人もいる。
慎重に確認してから動く方が向いている人もいる。

どちらが上という話ではない。

問題は、全員を同じ形にしようとすることだと思う。

人を変えることばかり考えると、変わらない人が悪く見える。
でも、違う特性を活かすことを考えると、その人の使い方が見えてくる。

営業にも、熱血型だけではなく、聞き役、調整役、専門家型、既存顧客を丁寧に見る人がいる。
現場にも、段取りを見る人、手を動かす人、違和感を拾う人、同じ仕事を安定して続ける人がいる。

組織は、同じ人間をそろえることで強くなるのではない。
違う人がいることを前提に、仕事の組み方を考えるから強くなるのだと思う。

理想の人だけでできた会社は、きっとつまらない

理想の人材像は必要だ。

会社がどんな人を求めているのかを示すことは大切だし、最低限の誠実さや責任感を求めるのも当然だと思う。

嘘をつく。
約束を守らない。
人のせいにする。
改善しようとしない。

そういうことまで個性として認める必要はない。

ただ、熱量が低く見えること、口数が少ないこと、慎重であること、すぐに納得しないことまで、全部まとめて「理想と違う」と見てしまうのは危ない。

理想の人だけでできた会社は、きれいかもしれない。
でも、きっとどこかつまらない。

人間臭さがない。
引っかかりがない。
違う見方がない。
「本当にそれでいいのか」と立ち止まる人もいない。

現場は、そんなにきれいな人たちだけで回っていない。

癖のある人がいる。
慎重な人がいる。
明るい人がいる。
黙々とやる人がいる。
人と話すのは苦手でも、誰よりも正確に仕事をする人がいる。

そういう人たちが、それぞれ違う形で支えている。

求める人物像を持つことは悪くない。
でも、それを押し付けるほど、組織の幅は狭くなる。

人を理想像に近づけることだけが、組織づくりではない。

今いる人の違いを見て、どこで力を出せるのかを考える。
正論をそのまま当てはめるのではなく、現場で使える形に置き換える。

その方が、面倒だけれど、たぶん強い組織に近づくのだと思う。


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