トラガールは、道の果てに夢を見る①
あらすじ
ラナ、リョウ、ルカ、レイ、ロマンは、20代の女性トラックドライバー。
実家の花屋の手伝いで、ラナがルカの両親のスナックに祝花を届けたことがきっかけで、5人のつき合いが始まる。
運転するトラックの大きさやエリアが異なるため一緒に仕事をする機会は少ないが、たまにペアを組みながら、この仕事ならではの体験を重ねていく。
某所で起きた地震の災害復旧に協力するため、5人は被災地に出発。関係者や被災地の人々と交流し、帰路につく。そのシーンは、レイが夢見ていた光景そのものだった。
彼女たちのかっこいい生き方や、ゆるやかだけど確かな絆を築き上げていく様子を描いた、トラガールたちの群像物語。
1.考え事、考えない事
「リョウ、お疲れ。」
足柄サービスエリアに着くと、仮眠スペースで寝ていたはずの相棒から、すぐさま声がかかる。
ここで、運転の交代だ。
私はドアを開け、慎重にジャンプし、地面に降りる。
売店で、相棒は缶コーヒー、私は濃厚ミルクのカフェオレを買い、大型トラックに利用。
私は、運転席後部にある、仮眠スペースに潜り込む。
カフェオレを飲みながら、スマホを見る。
娘、ミムからのLINEメッセはない。
ちょっと肩透かし感を覚えつつも、就寝体勢に入る。
お気に入りの睡眠アプリを立ち上げ、お気に入りの睡眠メニューのアイコンをタップする。
トラックドライバーにとって、仮眠前の考え事は、禁物だ。
何も考えずに眠る。
目が覚めたら、再びハンドルを握る。
夫と別れて、意地で引き取った娘、ミムのことが気になるが、今は考えない。
私はどうでもいいが、ミムを独りにするわけにはいかない。
睡眠アプリの音の主成分は、焚き火と雷鳴と、ハープのメロディー。
私は、雷鳴に耳を傾ける。
眠りの前の、硬直した考え事がほぐされる。
雷と雨音により、私の思考の手綱から手が離れ、解き放たれた物語が自由に紡ぎ出される。
娘のミムが魔女となり、魔法の入浴剤をつくる。
ミムは、月夜の晩に箒て飛び回り、それを生活に疲れた人々(私含む)に配るお話。
脈絡のない物語に身を任せながら、
ブルーベリーのいい匂いがするバスタブに身を沈めながら、
私は目を閉じ、呟く。
おやすみ。ミム。

