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連載【ぬくもり(3)】とぼけた青年が出会った!ペットボトルのキャップ🌟「人間にカタチになれないか!?」🌟シュール&ナンセンスコメディ︎🌟じんわり人生が変わる物語☕

【ぬくもり(3)】

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本編【ぬくもり(3)】


キャップは、それ以上、何も言わなかった。
だから、生田川も何も言わなかった。
現実には、ペットボトルのキャップと、青年がひとり。

しばらく部屋が静かだった。キャップから声がするからと言って、何か怖いような感じもなかった。たまたま体のない人格があって、やりとりができているという感じが、そんなに違和感のあるものでもなかった。

最初、生田川は、自分の精神的な病気によって幻聴を聞いているんだという危機感をもっていた。しかし、感覚として「そうでもない」と思えてもいた。本当の正しさは、生田川自身にもわからない。
しばらくの間は、家にキャップを置いておいて、場合によっては、キャップと話すことがあったっていい。
そのくらいの感覚でことを荒立てないのが、一番まっとうな気がしていた。

          *

一週間ほどたった夜、生田川はキャップに言った。
「なあ、ブルー」
「うん。うれしいな、ちゃんとブルーって名前で呼んでくれてるじゃないの、イクやん。最高や!」
キャップは満更でもなさそうに言った。

生田川は、続けた。
「提案なんだけど、いいかな。キャップはいつまでも、うちに置いておくこともできるし、話ができるのは悪くない。でも、話をする以上は、人のカタチになってくれたらいいんだけどなって思ったんだ。どう?」

「あ、ああ、人のカタチなぁ・・・俺にできるのか、やったことないけど、でも、何事も諦めないことが肝心だ。よっしゃ、いっちょやったるか」
「でも、人のカタチになったら、ちょっと怖い感じにもなるかな? 暴力とか振るったりだけはしないでくださいね」
生田川は、キャップに対しては、徐々に対等な感覚をもつようになってきた。だが、急に成人男性が現れたら、やはり言いようのない恐怖も感じるだろう、とも自覚した。

「おまえ、急に何をおびえてるんだ? キャップだったら、すぐに捨てられるけど、強そうな人になったら、怖くてやってられないってか? つまんねぇやつだな。それ、失礼でコウマンチキだぞ」

生田川は、頭を掻いた。
「すいません。つい、心の偏見のままに話してしまって。言葉の表現も、どう繕えばいいのかも全然わからなくて」
うむ、とキャップはまた考えに沈んだ。

生田川は思っていた。
いろいろしゃべるたびにドギマギする。
でも、家のなかで、だれかと話ができるということ自体、とんでもなかった。自分がこれまでひとりでいたことに苦しんでいたわけでもないのに、このキャップと出会うまでの自分は孤独だったと俯瞰できたみたいに。
毎日のなんでもない会話が、とんでもないことのように思えていた。

「イクやん。わかった。がんばってみる。ただ、ちょっと、いろんなやり方をネットで調べてから試してみるから時間はかかるかもしれない。が、必ず挑戦はしてみる。とりあえず、そんなところでいいか? あんまり期待するなよ」
「え、ところで、ブルー! ネットってどうやって使うの?」
「・・・ないしょだ」
キャップは、また黙った。
よくわからないところで、人間がスマホをいじって検索してるような動きをしているのかもしれない。まったく、その作業の中身は想像もつかない。
生田川も、それ以上は深掘りせずに、キャップから離れた。

ただ、生田川は、思っていた。
キャップがしゃべっていること自体も超常現象みたいなものなんだから、人のカタチに変わるくらいのことをしてもおかしくない。
「たぶん、ブルーはどうにかやってくれる」
生田川は、信念に近いくらいに、キャップの変身を待つことにした。

*(4)へ つづく *

お読みくださり、ありがとうございました。



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