英語が”自然に”話せるようになるとき|インプットとスピーキングの関係
子どもの英語習得に伴走して14年、中学生2人の母のMinnieです。
英語のインプットの大切さを説いていると、
「でも、英語を聞いたり読んだりしているだけでは、しゃべれるようにはならないでしょう?」
という反応をよく受けます。
インプットが大事なのは分かっているけれど、それがスピーキングにどうつながるのかよく分からないということがあるかと思います。
そこで今回は、私が尊敬する語学インフルエンサー、Steve Kaufmann(スティーブ・カウフマン)さんの動画の内容をもとに、インプットとスピーキングの関係について考えてみたいと思います。
今回参照する、スティーブ・カウフマンさんの動画はこちら ↓ です。
『 MAKE IT AUTOMATIC / You can’t get fluent in a language without this 』
Steve Kaufmann - lingosteve 2025/9/19
(こちらの過去記事 ↓ で、Steveさんのご紹介をしています)
自然な発話はどう生まれる?
よくある誤解に、
「インプット = 覚える」
「アウトプット = 覚えたものをそのまま出す」
というものがあります。
英語を教える立場にある人や、子どものおうち英語に伴走する親が、インプットとアウトプットをこのように捉えていると、英語の取り組みは、語彙や文法の知識を増やすことに偏り、特に子どもには、不必要な負担をかけてしまいます。
私が考える「インプット」とは、英語をたくさん聞いたり読んだりしながら、英語を処理する練習を積むことです。
(「インプット」については、こちらの過去記事で、私見を述べています)
「アウトプット」も同様です。
アウトプット、特に、私たちが英語の取り組みで目指すところの「自然な発話」とは、「覚えた単語やフレーズを思い出しながら」話すことでも、「文法を考えながら」話すことでもありません。
では、自然な発話とは、どんな状態なのでしょうか。
これについて考えるために、Steveさんの動画から、予測(prediction)と自動性(automaticity)の解説を引用したいと思います。
Steve Kaufmannさんの動画から:「予測」が「自動性」を生む
Steveさんの動画から私が学んだことは、次の3つです。
自然に「話す」とは、「自動性 (automaticity)」が働いている状態
この自動性には、「予測 (prediction)」が必要
予測の力は、主に「インプット」によって育つ
これを
インプット → 予測 → 自動性
の順番で考えてみます。
1)インプットするとき、脳は常に次を「予測」している
(02:02) ….when we are comfortable in the language, when we're listening to the language or reading the language, ….our brains are constantly trying to predict what's coming in the language....
[慣れた言語では、それを聞いたり読んだりしているとき、脳は先を読み、次を予測している]
https://www.youtube.com/watch?v=cIIz4EbRvTI
日本語は仮訳
→ たしかに、「インプット」しているとき、英語を聞いたり読んだりするとき、ただ無防備にそれを受け取っているのではなく、次にくる語や文構造を何らか期待したり予想したりしながら受け取っている感覚があるように感じられます。
2)「話す」は「予測」のはたらきの裏返し
(02:42) … some researchers say…output is basically the prediction capability that we have in input turned inside out. It's the same phenomenon.
[アウトプットとは、インプットしているときに働いている「予測」の力を裏返したもの。アウトプットと予測は、現象としては同じ。]
https://www.youtube.com/watch?v=cIIz4EbRvTI
日本語は仮訳
→ これから想像することは、私たちが「自然に話す」ときの状態は、「予測」するときのように、次に言うべきことばを先回りして生成しているような状態です。
例えるなら、タイピングしているときに次々とすばやく表示されるオートコンプリート機能のようなものなのでしょうか。
3)インプットを蓄え、予測の力が育つと「自動性」が生まれる(→自然に話せる)
(01:09) my goal in acquiring that language is to make the process of producing the language as automatic as possible.
[言語を身につけるうえでの私の目標は、できるだけ自動的に言葉を出せるようにすること]
(01:17) I have a large reserve, reservoir of passive vocabulary that I have acquired through lots of input based learning...It's in my database, it's in my reserve. It's going to be available for me when I want to speak more, and I will be able to generate that automaticity when I need to.
[インプットベースの学習で大量の受容語彙を蓄えている。必要なときはその蓄えを使って、自動的に言葉を組み立てて話せるようになる]
(03:50) the stronger my prediction ability, the broader my base of knowledge in the language, the better my level of comprehension, the better I'm going to do when speaking.
[予測の力が強く、言語の知識ベースが広く、理解力が高いほど、話すときもうまくできるようになる]
https://www.youtube.com/watch?v=cIIz4EbRvTI
日本語は仮訳
→ この部分は、学術的な話に、Steveさん個人の経験と感覚を当てはめていると思われます。
インプットを蓄え、予測の力が育つほど、「自動性」が働き、これによって言葉を組み立てやすくなり、自然に話せるようになる、というのは、母語で考えても、感覚と一致すると感じます。
以上から、「インプット→予測→自動性→自然に話す」という、「インプットとスピーキングの関係」の一つの考え方が見えてきました。
まとめると、
アウトプットとは、インプットしているときに働いている予測の力を反対方向に使っている状態
だと考えられ、
インプットによって予測の力が育つほど自動性が働き、自然に話せるようになる
となります。
この説明をきいて私は自分の経験と照らし合わせて、とても腑に落ちたのですが、皆さまはいかがでしょうか。
自分の経験から:準備が整えば自然と出てくる
ここで、インプットから発話につながったLeahとLucas、そして自分自身の経験を振り返りたいと思います。
1)子どもたちの発話の様子
LeahとLucasの乳幼児期は、英語の歌や絵本、動画が取り組みの中心でした。
小学校に上がって、放課後の週2回、英語アフタースクールに通っていたときのことです。
Leahがまとまった英語を話し出したのは、小1の夏休みでした。
通っていた英語アフタースクールのサマースクールが始まって2、3日目、帰宅するなり「Mommy! Mommy! I'm SO happy. Do you know why?」と切り出し、そのままその日のできごとを語るということがありました。
Lucasの最初の「自然な」発話は小2のころでした。例えば、週末に家族で出かけようしているとき、部屋の中で上着を探しまわって「Where's my jacket… where's my jacket… can't find my jacket…here?…found it!」とブツブツ独り言を言うなどの様子がありました。
英語アフタースクール(2人は別のところに通いました)では、英語プリスクール出身者や帰国子女の子どもなど、英語を自由に話す子どもたちもいる中で、LeahとLucasは英語を話せない子でした。
ただ、それまで細々と何年も家で「インプット」をしていたことで、2人とも、周囲が話している英語は、ほぼ理解していたようです。
このため、その英語が使われている場で過ごすことが苦にならず、興味津々で周囲を観察している状態だったようです。
先生たちは、英語で声がけをしたり、子どもたちが英語で話すことを促してくれていたとは思いますが、強く促すことはなかったようです。
このように、ストレスなく、「話す準備が整う」までじっくり待ってもらえたことが良かったのかもしれないと今は思います。
2)自分の子ども時代、アメリカの現地校で
私自身、7歳のとき、米国南部の田舎の小学校に転校しました。
父に連れられて初めて学校を訪れたとき、先生たちや父が英語で話していることの意味が、全然分からなかったことを覚えています。
その現地校に通って3~4か月したころ、学校のイベントで、私の母は先生から「あなたの娘は最近突然、センテンスで話すようになった」と伝えられたとのことです。
私はアメリカでの最初の数ヶ月のことは、ほとんど記憶がありません。
スクールバスに乗って学校に行き、放課後や週末は、両どなりや向かいの家に住む子どもたちと、庭やプールで遊ぶのんびりした日々でした。
そうしているうちに、先生や周りの子どもたちの言っていることが少しずつ分かるようになっていき、気づいたら自分もその中で言葉を発していたということだったと思います。
以上が、自分の経験のなかで「準備が整えば、言葉が自然に出てきた」例をお伝えしました。
ここで挙げた例は、いずれも小学校低学年の経験です。
しかし、Steveさんの場合は、大人になってから、インプット中心の学習で多くの言語を身につけていらっしゃいます。
また、私自身がこれまで仕事を通して関わってきた人たちの様子を見ていても、さまざまな違いはあるにしても、インプットとスピーキングの関係の本質的な部分は、年齢にかかわらず当てはまるのではないかと思っています。
英語を"自然に"話すようになるために
ここまで、Steveさんの動画の内容をもとに、「インプットによって予測の力が育ち、自動性が生まれて、自然な発話につながる」という考え方を見てきました。
インプット「だけ」で話せるようにはならないかもしれませんが、「自然な発話」に必要な土台は「インプット」の蓄積によってこそつくられる、のだと思いました。
最後に、Steveさんの動画内容を踏まえて、英語の取り組みの中で意識したいことを、私自身の解釈でまとめてみます。
1)予測の力を育てるには
予測の力を育てるには、少しずつ時間をかけてインプット(リスニングとリーディング)を貯めていくことが必要です。これには、適度なレベルの、子どもが興味の持てるコンテンツに触れ続ける習慣をつくることです。
コンテンツが難しすぎたり、興味が持てないものだったりすると、インプットに負荷がかかり、予測がはたらかないことになります。
インプットが負担ではないように、ラクにできて、なるべく楽しいものであるように、子どもの様子を見ながら、予測を妨げる要因を減らすことが、私たち親の役割ではないかと思います。
2)自動性を引き出すには
「自動性」は、特別な才能や能力ではないのです。これまで見てきたように、条件がそろったときに起きる現象です。これには、結果を急がず、時間をかけることがどうしても必要です。
準備が整ったとき、自動性によって言葉が出てくるようになります。
が、このタイミングは子ども一人ひとり違います。
無理に発話させようとすると、かえって理想の状態から遠ざかってしまいます。親にはじっくり待つ姿勢が求められると思います。
4)自動性は習熟度ではない、完璧さでもない
自動性は、高い習熟度がなくてもはたらくものだと思います。
習熟度が高くなるほど、自然な発話が起きやすくなるわけではないと思います。
いまある習熟度で、自動性を起こすのだと思います。
なので、自動性を引き出そうと、習熟度を上げる取り組み(例えばことばやフレーズをたくさん覚えたり、学習してレベルアップをはかろうとするなど)は必要ないとも言えそうです。
また、自動性は正確さとも違うようです。
(Steveさんは動画の中で「 (01:17) Automatic doesn't mean perfect. 」と語っています)
自然に発話があるとき、もちろん間違いもあります。
でもここで、細かいミスは気にしないことです。気にしだすと、言葉を出せなくなります。
細かいミスは、さらなるインプットで、徐々に修正されていくものと考えるのが良いと思います。
5)スピーキング練習はいつやるか
ここまで「スピーキング練習」については触れませんでした。Steveさんは、以下のように述べています。
(00:10) When I get the chance, I speak in the language that I'm learning, but it's not the focus of my learning activities.
[ 学習している言語は、機会があれば話しますが、学習の中心はスピーキングではありません ]
(00:40) I like to use the language that I'm learning. I will speak given any opportunity. I will speak, but most of my study time is spent on input, spent on getting the language in me …
[ 学んでいる言語を使うのが好きです。機会があれば必ず話します。話しますが、学習時間の大半はインプットに使い、言語を自分の中に取り込むことに使っています ]
https://www.youtube.com/watch?v=cIIz4EbRvTI
日本語は仮訳
SteveさんのYouTubeチャンネルで、複数の言語を切り替えながらゲストと対談するSteveさんの様子を拝見するたび、スピーキングそのものをたくさん練習しているように見えます。
そのSteveさんが、スピーキングよりもインプットを重視しているという点は、日本語で生活している子どもの英語習得に取り組む私たちにとっても、とても心強い話ではないでしょうか。
インプットが不十分な状態でスピーキングをすると、無理に捻り出すことになり、自動性からは遠ざかってしまいます。知識をそのまま出すような状態に近くなってしまい、効率が悪いように思います。
スピーキングの初期の段階では、必ずインプットとセットで行うのがよいと考えます。
インプットで培われる感覚(予測の力)を適用するようにスピーキングを練習することが、自動性の観点からも、効果的なのではないでしょうか。
以上、長くなりましたが、インプットがスピーキングにどうつながるかについて考えました。
子どもがどのように英語を習得するか、親が正しいイメージを持つことはとても重要です。
今後、インプットのなかでも自分が特に重視していた「音読」についても、考えてみたいと思っています。
お読みくださりありがとうございました。
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