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立替精算、8割が紙のまま──“承認待ち”が会社のスピードを奪う

領収書を出して、上司に承認をもらって、経理に回して、口座に振り込まれるのを待つ。この「立替精算(社員が自腹で払った経費を、あとで会社が払い戻す手続き)」、いまだにほとんどの会社が紙でやっている、という調査が出ました。
決済サービスのインフキュリオンが2025年10月に全国の事業者1,236名へ行った「ビジネス決済総合調査2025」では、立替精算が発生する事業者は79%。そのうち従業員1〜20人の小さな会社では、なんと89%が「紙ベース」か「紙ベースだが一部だけデジタル化」と答えています(出典:インフキュリオン、2025年11月27日公表)。私自身、一人で会社をやっていて経理の地味な大変さは身にしみているので、この数字はとても納得感があるんですよね。
なぜ「紙の精算」は止まると効くのか
今回の調査から、立替精算まわりの数字を並べてみます。
・立替精算が発生する事業者:79%
・従業員1〜20人の小企業:89%が紙ベース、または紙ベースだが一部デジタル化
・個人事業主:75%が同じく紙中心
・紙とデジタルを併用している事業者:73%が「効率化の必要を強く感じる/関心がある」
・出典:インフキュリオン「ビジネス決済総合調査2025」(2025年10月実施・全国の事業者1,236名)
面白いのは、同じ調査で「請求書の受け取りから支払いまでで、いちばん改善が必要な非効率なステップ」として最も多く挙がったのが、入力でも振込でもなく「内容確認や承認」で21%だったことです。つまり詰まりの正体は、作業そのものより「誰かのチェック待ち・ハンコ待ち」なんですよね。
紙の精算は、申請者が書く→上司が原本を見て承認する→経理が確認する→不備があれば差し戻す、と人の手を何度も渡ります。上司が出張中なら、その間ずっと止まる。経理は一枚ずつ目で確かめる。記入漏れや計算違いがあれば差し戻し(出典:マネーフォワード クラウド)。そして立て替えた社員のお金は、流れが止まっている間ずっと戻ってきません。地味ですが、これは社員の不満が静かにたまる場所でもあります。
支払う側も、まだまだアナログです。同じ調査では、デジタル決済が当たり前になった今でも、小企業の23%がATMや金融機関の窓口での振り込みを使っていました(出典:インフキュリオン)。請求書の受け取りから振込まで、紙と足を使う工程がいくつも残っているわけです。
紙をやめた会社は、何が変わったか
実際に紙をやめた会社の事例を見てみます。いずれも会計ソフト会社が公開している導入事例です。
・株式会社クリアーツ:業務委託やフリーランスとの精算を個別に対応していたが、アプリで申請できる仕組みを入れて、経費精算の業務負荷が従来の10分の1以下に(出典:マネーフォワード クラウド 導入事例)
・サンラリー株式会社:紙の回覧のため、海外出張など長期不在があると承認が止まっていたが、ペーパーレス化で精算の所要時間を3分の1に短縮(出典:同)
しかも、追い風もあります。電子帳簿保存法(帳簿や領収書を電子データで保存するルールを定めた法律)では、メールなどで電子的に受け取った領収書は電子データのまま保存することが義務になりました。どのみち書類の扱いを見直さざるを得ないなら、今が立替精算の流れを整理する良いタイミングなんですよね。
ただ、ここで私がいちばん伝えたいのは「だからすぐシステムを入れましょう」ではありません。順番です。ツール選びの前に、立替精算の流れを一度「書き出す」ことをおすすめしたいんですよね。
・誰が申請して、誰が承認して、誰が最終確認しているか
・どの書類(領収書・申請書・利用明細)が、紙で何枚動いているか
・月に何件・だいたい何時間かかっているか
・どこで止まりやすいか(承認待ち? 差し戻し?)
この1枚があるだけで、「全部いっぺんにデジタル化」ではなく、「承認だけスマホで完結させる」「領収書のデータ化という定型作業だけ外に出す」というふうに、効くところから順に手をつけられます。逆にこれをやらずにシステムだけ入れても、結局これまでの紙の流れをそのまま画面に移しただけ、ということになりがちです。
立替精算は、会社全体の縮図
私は、立替精算の話は会社全体の縮図だと思っています。紙が89%も残っているのは、現場が怠けているからではありません。「業務の流れを作り直す」「社内のルールを整える」という手間が、目の前の仕事に追われてずっと後回しになっているだけ。インフキュリオンも、業務フローの構築や社内ルールの整備が負担になって、全体のデジタル化まで進みきらない、と同じ指摘をしています。
少し手を動かして考えてみます。たとえば月に20件の精算があり、申請・承認・確認・差し戻しで1件あたり合計15分かかっているとすると、月に約5時間。年間では約60時間です。これは誰でも検算できる単純なかけ算ですが、社長や経理が「ついで」でこなしている時間ほど、表に出てこないまま積み上がっていきます。
そして、紙のままでいちばん削られているのは「スピード」です。承認待ちで止まる数日は、伝票一枚なら小さく見えます。でも、会社じゅうの申請や承認が同じ速度で動いているとしたら、それは経営判断のスピードそのものなんですよね。
ひとつ問いかけです。社長が一週間出張に出たあいだ、御社で止まっている承認は何件あるでしょうか。立替精算だけでなく、見積もりの決裁、発注の確認、請求書の承認――。建設業の現場でも、現場監督の確認待ち・社長のハンコ待ちで止まっている書類は、立替精算だけではないはずです。
まとめ:紙をやめるより、「止まらない流れ」をつくる
「紙をやめる」はゴールではなく、「止まらない流れをつくる」のが目的です。そのために、まずは自社の精算フローを1枚に書き出してみる。どの作業を自社でやり、どれを外に出し、どれは要らないのかを分けてみる。ツール選びや外注の検討は、その後で十分に間に合います。
人を増やす前に、まず仕事の流れを見える化する。これは立替精算にかぎらず、どの業務にも通じる順番だと思っています。御社のいちばん「止まりやすい承認」は、どこにありますか。
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