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神のデス・ギフト第9話 生について“もがき苦しむ思考”こそ唯一の出口か?

これは、神から贈られた“死にかけるほどのギフト”の開封記録。 地獄を笑い、整えを始めた男の実話。

アメリカから帰り、生まれ変わったような気がしていた。
もう地獄の社畜生活は終わったと思っていた。
だが、神はそんな簡単に俺を解放する気はなかった。
これは死ぬほど辛かったギフトを開封する旅として記録だ。
第8話からの続きだ。


彼女がパトリオットミサイル発射で俺は爆撃され心が折れた

彼女「あなたがアメリカに行っている時、気持ち悪くなって妊娠検査したら妊娠してた」

7年同棲していた彼女から玄関口でいきなり言われた。

俺「嬉しいよ。産んで一緒に育てよう」

こうとしか言える言葉が見つからなかったという方が正直な気持ちだ。
それまで無表情だった彼女が急に興奮し顔を赤くして俺を全否定する言葉をパトリオットミサイルのような破壊力で連射速度で言葉を捲し上げた。

彼女「無職のあんたじゃ育てられないでしょ!」
彼女「ほとんどの会社2年も続いてない!」
彼女「貯金もほとんど0だろ」
彼女「家に紹介できない」
彼女「一年後に産まれんだよ!わかる意味!」
彼女「私は今の仕事が好きだし実家は千葉だから、あなたの田舎に行く気はない!」
彼女「会社辞めすぎていい会社になんか転職できるわけがない」

もっともだった。もっともだったが、

心「そこまで言うことねーだろーが!わかってるよ!そんなこと」
心「しかし……見事な照準精度だ。さすがパトリオット。俺の自尊心は迎撃不能だった。」

俺が俺自身に問いかることを封印していた言葉だった。
悔しい、でも当たってる、妊娠はどうしよう、彼女は混乱して怒ってる。
俺も混乱している。

心「じゃあ、どうすればいいんだよ!?」

など言えるわけはなく、また俺の話に聞く耳も彼女は持っていない。
顔も見てくれないという状態だ。
彼女は言い切って夜勤明けの疲れが出たようで怒りのまま寝室に入っていった。

重い鈍器殴られ、と鋭いナイフで斬りつけたような心情。
混沌とした空気の中俺は立ち尽くし、窓のない真っ暗な玄関で答えを探した。しかし、何も浮かばない。
出産の前に同棲の維持だってこんな関係じゃ辛いじゃないか。

俺はA6のノートと2色ペンを持ち近くの行きつけのドトールに待避し、真剣にこれからの事を考え、あらゆる方向でシミュレーションを考える事にした。
とにかく、この重い空気の中では全てがネガティブな思考になりそうだった。

ドトールへ歩きながら、何も頭の中に考えが浮かんで来ることはなかった。
ただ、歩くことで空気を吸い、外界の世界に触れ、多少なりとも現実の世界へと戻ってこれた。混乱が薄まったということだ。

心「しかし、妊娠とは!25歳過ぎ、無職、貯金なし」
心「会社を冤罪で首にななければもっとよかっただろうに」

何度も後悔は浮かんだが、過去に戻れる訳もなく、現実に戻る。
その繰り返し。

家を出て外を歩きながら思考が無駄に回転した。
空はどんよりと曇っている。雨でも晴れでもない。少し肌寒い。

俺「アメリカで体と思考は発酵したけど、心はまだ腐敗してるじゃないか」

俺は行きつけのドトールに入ることにした。
アイスブラックコーヒーを頼み煙草の吸える角の席を取れた。
考え事をするにはもってこいの席だった。
ドトールの適度なざわめき・BGMが俺の思考を柔らかくしてくれていた。
いつもはA6のノートを出してアイディア出しをしている場所だが、今回はボーっと外を眺めて思考を巡らせていた。

この時代は、妊娠が先で結婚、いわゆる「できちゃった結婚」はまだ白い目で見られる時代。ましては中絶なんて御法度な時代だ。
誰に相談しても倫理論や性善説を説かれて何の役にも立たない。
一人で抱え込んで、彼女が思う正解を出さなければいけなかった。

俺「不可能に近い。正解がないかもしれない」

この時俺は、彼女が大好きだった。彼女は俺のことが好きだったのだろうか?

俺としては長く感じたが、2時間ほどコーヒーを飲みながら遠くへ目線を送る。ワハハハと楽しんでいる人たちを視線に入れることなく。
氷の解けたアイスブラックコーヒーの苦みだけが俺の気持ちを物語っていた。

心「あ、氷は溶けたのに、俺の未来は固まったままだ。」

俺は、当時のしょぼい転職サイトに登録して3日以内に決めてやる!と心に強く思った。

ドトールの窓辺のカウンター席で、遥か遠くを見ながら途方にくれている俺

転職活動へ本腰を入れる俺の希望

彼女が夜勤に出る時間までは会うのが気まずかったので、彼女の出発の時間までは駅前の大きめの書店で転職の本や、自己啓発の本を立ち読みして気を落ち着けていた。

そこで、わかったことは、自分で転職サイトで探して応募し、面接の日を決めるのは大変だということ。
今は転職エージェントに任せて全ての交渉をお願いする方がより良い職種に行けるということだった。

俺は藁にも縋りたい思い出時間もない。

早速転職エージェントにその場で電話をしてアポを取り付けた。
運よく会えるのは翌日だった。

エージェント電話「何もいらないからたくさん話をしにきてください」
心「少し気が軽くなる。急いでいることもちゃんと伝えよう」

俺は誰もいないアパートに戻り、翌日の準備のためスーツを出し、埃を落として、早めの眠りについた。

正直言って俺には何の覚悟もない。
子供を持つことも、転職することも、無職でいることも。

日本に帰ってきてこの究極の局面は、発酵した脳みそが急速に冷凍保存されていった。

頭と心は冷凍保存され、死んだ目になっている俺


転職エージェントとの出会いで加速、しかし神も近づいてきた

さて、久々にスーツをきて快晴の空、転職エージェントのビルへ向かう。
天気がいいぶん気分も清々しい。

俺「神は不必要なプレゼントはしょっちゅうくれるが、今朝の天気は悪くないな。」

地下鉄を乗り継ぎ、虎ノ門に到着。初めて降りたが、日本のビジネス街らしく、普通の生活している人はいない。

俺は、指定された虎ノ門ビルへ向かった。
巨大なビルに入り、近代的と伝統が混ざった昭和の建設美術を感じるロビー。
約束の時間5分前到着なので、すぐ迎えが来て個室へと通された。
個室は窓辺で地上20階ほどの見晴らしの非常に良い開放的な空間。
緊張も自然と緩んだ。

そこではエージェントから生誕から今までの経歴・趣味・得意なこと・どんな仕事がしたいか、給料はどれくらいかなどを1時間ほど聞かれた。
その全てをエージェントはメモしていった。

多分、エージェントが職務経歴書と履歴書を書いてくれるのだろう。
複数あげて雑談し、この雑談もコミュニケーション能力を見ていたりするのだろうか。
すっかり打ち解けた。

後日、エージェントから俺に合う会社を数件見つけて、メールをくれるらしい。気に入れば進めるし、気に入らなければさらに探すと言ってくれた。
大手企業は流石になかったが、知る人ぞ知る会社も多く安心した。

心「目の前が一気に明るくなった!」

こんな状況でウキウキして自宅に帰るのは不謹慎でも未来が見えた瞬間だから良いだろう。
家で腐ってたわけじゃないんだから。
再びオレの脳が発酵してきた気がした。

久しぶりにほっとして、自宅へ帰りアパートが見えてきた。
誰もいない。電気が消えている。彼女が居ないというのもほっとした。

部屋に入り、部屋着に着替え野球中継のテレビをつけてホッと安心したその時。
ベランダの方から、何かが小さく崩れるようなズレるような音がした。
冷たい風がカーテンを揺らした。
神は、デスギフトの手を緩めなかった。
いよいよ死ぬほど辛かった神の手紙を開封するときが来た。

第9話完

次回予告

彼女の妊娠を何とかしようと前に進む俺だけど、神の手に余るギフトは希望の顔をして近づいてくる。
衣食住の住に鬼気迫る緊急事態が!彼女・仕事につづいて落ち着く間もなく第3の試練。どうすれば神は俺をほおっておいてくれるのだろうか。

後ろのベランダから何か崩れる音がしたのに気付いた


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