花と心:母娘の距離を協働で縮める
去年の秋から冬にかけて、大阪の国立民族学博物館で行われた企画展「フォルモサ∞アート——台湾の原住民藝術の現在(いま)」に出ていた、タイヤル族とタロコ族にルーツを持つアーティスト、イダス・ロシン(宜德思•盧信)。彼女と、タイヤル族の織り手であるお母様ユヨ・ペリン(尤佑倍苓)さんの二人展「花と心」が、台北から電車で30分ほどの鶯歌(インガー)にある新北市美術館で、12月末から開催されている。

オープニングでは、アーティストたちの挨拶のほか、前(下掲)にも書いたアーティストでシャーマンのドンドン・ホーウェン(東冬•侯溫)たちによる短い(けれど心に響く)儀式/パフォーマンスや、前からイダスと仲良しだと聞いていた(こちらも前に長濱船団のポストで書いた)イリー・カオルー(以莉•高露)の歌も聴くことができた。なんという幸せ。

イリーが引っ張られるように前に出てから、「ちょっと私こんな服着てるの、笑えるわ」(豹柄のパンツに革ジャンでかっこいいのだが、確かに織物の展示とはやや異世界)と何度も気にして、みんなの笑いを誘い、ドンドンが遠くから「アミ族はこれだから」とツッコミを入れて、より大きな笑いが生まれたり。(どういう意味かな、なんでも笑いの種にすること?)ほんと愛に満ちた、良いオープニングだった。

私たちも応答部分を歌ったり🎶
その後、イリーとおしゃべりしていたら、「タロコの歌、素敵だったね〜!」と感動したように言った後、声を潜めて (でもどこか可笑しそうに)、「タロコ族とアミ族は敵対関係にあったから、初めて聴いたんだけどね」と付け加えていたのが印象深かった。なんだかとても大切な言葉を聞いたような気持ち。
その敵対関係というのは、日本の統治とも深い関係があったりするのだけど、今はこうやって、原住民族同士尊重しあい、仲良くしている。国家権力や差別に抗うなかで生まれた連帯という側面はあるにせよ、彼らのあいだにもいろんな努力と経過があるのだろうと想像する。

展示は、「花と心」というテーマに沿って、心臓の形が絵やインスタレーションに登場していた。心臓の形に伝統柄などが刺繍されたシリーズ「心臓」の完成度たるや。素晴らしい織り手であるユヨさんが育てた織物用のカラムシ(苧麻)と赤いテキスタイルを用いたインスタレーション《生命の花を織る》も、とてもパワフルだった。

「心臓」の一部


ややぼやけていて申し訳ない
ユヨさんの織物コレクションも素敵で、柄から見るに日本時代のものだろう、とおっしゃるものもあった。彼女や彼女の家族、集落の仲間たちにとっては、多くが奪われたつらい時代だと思うが、それでもこの時代のものを大切に残してくれていて、この展示には畳さえ出現する。複雑な気持ちになりながらも、植民の歴史を見つめることでしか乗り越えられないものがあることを思う。(もちろんそれは私たちにとってもだ)


イダスは、母のような秀でた織り手になれなかったことをずっと後ろめたく思っているのだという。国際展に招かれるような素晴らしいアーティストになったのだからそれでいいじゃないかというのは、外野の勝手な言い分なのだろうな。今回のコラボレーションは、彼女たちにとって、距離を縮める格好の機会になったそうで、オープニングでのユヨさんの晴れやかな顔が心に残った。
3月までやっているので、お近くの方はぜひ見て欲しい。同じ美術館で2月から始まる展覧会「綿糸と石ころ」もとても面白そうだし、これから春までに台北ビエンナーレのために来られる方も、どうぞお見逃しなく!
💎展覧会情報
花と心ーーイダス・ロシン+ユヨ・ペリン二人展
花心——宜德思・盧信+尤佑倍苓創作展
Flower n Heart: Idas Losin and Yuyoh Peilin Duo Exhibition
会期:2025-12-27 — 2026-03-15
会場:新北市美術館 – 探索基地 L3
