顔は、思ったより横を向かない
深夜1時。
私はパソコンの前で、
横顔について考えていました。
原因は、AIです。
私は最近、ぬり絵長者を目指して、
せっせとぬり絵を作っています。
まだ長者にはなっていません。
長者どころか、ぬり絵の国の入口で、
三毛猫と一緒にうろうろしている
段階です。
それでも、気持ちだけは
大きくなっていました。
日本の風景。
三毛猫。
紅葉。
人力車。
これはもう、世界のどこかで
誰かがぬってくれるに
違いありません。
私は心の中で、すでに
ぬり絵長者の羽織を
肩にかけていました。
しかし、問題がありました。
人物の顔です。
AIに人物を描かせると、
なぜか顔が、どこかで
見たことのある顔になります。
しかも、私はすでに一度、
この問題で学んでいました。
正面の顔は危険です。
かわいくすると、
どこかで見たことがある。
既視感を消そうとすると、
今度は何かを召喚しそうになる。
つまり、顔は正面から
勝負してはいけない。
人類は歴史から学ぶ生き物です。
少なくとも、私は前回の自分から
学んだつもりでした。
そこで私は、Claude先生に
相談しました。
「人物は横顔の方が
自然じゃないですか?」
しかし、Claude先生は
落ち着いた声で言いました。
「顔を自然に見せない
構図にできます。
調整は可能です」
その言葉には、
自信がみなぎっていました。
私はちょっぴり警戒しました。
AIの「自然にできます」は、
ときどき危険です。
人間でいうところの
「ちょっとだけ寝る」
に近い。
それでも、Claude先生が
そこまで言うなら。
私は半信半疑で
お願いしてみました。
そして、絵が出ました。
人力車を引く人が
いました。
猫がいました。
紅葉がありました。
湖も山もありました。
とてもきれいです。

これは、どういう状況でしょうか?
これが、人力車界の後退なのか。
それとも、人力車の仕事中に、
急に人生の進路を見失ったのか。
横顔がいい。
私は、最初からそう言ったのに。
ブツクサ言いながら、
Claude先生に修正を
頼みました。
「やっぱり横顔の方が
自然だと思います」
すると、また絵が出ました。
今度は、たしかに横顔でした。
人力車を引く人の横顔です。

しかし、一人だけです。
そして、さっきは気づかなった
けど、人が乗っている。
人力車の背面に、後ろ向きに
座っている。
人力車とは、こういう
乗り物だったでしょうか。
これ、どうやって動くのか。
とても興味があります。
そこで、別のAIを使って
おまかせで動画に
してもらいました。

奥の車夫は、
過去へ向かっている。
手前の車夫は、
未来へ向かっている。
人力車に乗った乗客は、
過去に向かいたいのに
未来へ向かわされている。
猫だけは、悠々と現在を
歩いている。
じっと見ていると、
そんな風に見えてきました。
そう考えると、なんだか
壮大ではあります。
しかし、私は、ぬり絵を
作っていたはずでした。
それなのに、いつのまにか、
時空のゆがみを
監視していました。
でも、その瞬間。
私はまた一つ、
精神的無敵の人になりました。
私は学びました。
AIは、顔を隠すことはできます。
ただし、その代償として、
人力車の様子と進行方向が
犠牲になることがあります。
無敵だ。
最強だ。
これから職場で、誰かが
「大丈夫です、
うまく調整しておきます」と
言ったら、私は警戒するでしょう。
調整とは、案外あぶない言葉です。
そして横顔は、思ったより
前を向きません。
