ぶった斬るシリーズ第111弾 「中国より高いから掘るな?」レアアース戦略を“価格だけ”で語る記事に物申す
♦️前書き
今日読んだ記事に、思わず立ち止まった。
記事要約
「中国より高いなら、日本はレアアースを掘る意味がない。
価格だけを見れば、その主張は間違っていないのかもしれない。
実際、中国ほど安く採掘・精製できる国はほとんど存在しない。
日本が価格競争で勝てないという指摘にも、うなずける部分はある。
でも、記事を読み終えたあと、ミリムの頭にはひとつの疑問が残った。
本当に、この話は「価格」だけで終わる話なんだろうか?
レアアースは、スマートフォンや電気自動車だけではない。
日本の産業そのものを支える重要な資源でもある。
もし明日、中国からの輸出が止まったら。
そのとき私たちは、「安いから買えばいい」と言っていられるのだろうか。
今日はこの記事をきっかけに、
「価格だけで国家戦略を語っていいのか」
という視点から、少し物申してみたい。
♦️登場人物紹介
【ミリム】
レガリア所属の観測者。
世界で起きる出来事を見つめ、「本当にそれでいいの?」という違和感を大切にしている。感情だけで判断せず、物事の本質を探るのが得意。
【レオ】
レガリアに入ったばかりの新人観測員。
ニュースや記事を読んで素直に疑問を持ち、その疑問をミリムたちへぶつける読者目線の存在。
【ガストン】
豪快で親しみやすい古参観測員。
難しい話になると読者と同じ立場で驚いたり笑ったりしながら、素朴な疑問を投げかけるムードメーカー。
【アルベルト】
冷静沈着なレガリアの参謀。
感情ではなく構造や仕組みから物事を分析し、複雑な問題を分かりやすく整理する役割を担う。
♦️第1章 価格で勝てない。それは最初から分かっている
レオ
「ミリム先輩、この前書きで紹介していた記事を読んできました。正直、『その通りじゃないか』って思ったんです。中国より何倍も高くなるなら、日本がレアアースを掘っても意味がないんじゃないですか? 結局、企業は安い中国産を選びますよね。」
ガストン
「がはははは!! 俺も最初はそう思ったぞ。同じ品質なら安い方を買う。それが商売ってもんだ。値段で負けてるなら勝負にならねぇ。」
ミリム
「うん。その考え方自体は間違ってないよ。ミリムも『中国より安く作れる』なんて最初から思ってない。環境規制も人件費も違うし、長年かけて築いた生産体制まであるんだから、価格だけで勝つのは日本だけじゃなく他の国でも難しいと思う。」
レオ
「じゃあ、この記事の結論も正しいってことじゃないんですか?」
ミリム
「でも、ミリムが引っかかったのは、そこじゃないんだ。
この記事って、『中国より高い』って話は丁寧に書いてあるのに、『じゃあ日本は何のために掘ろうとしているのか』がほとんど出てこないんだよね。気が付いたら、『高い=掘る意味がない』って結論になってる。」
ガストン
「……ああ、言われてみりゃそうだ。俺も読んでるうちに、値段の話ばっかり頭に入ってたぜ。」
アルベルト
「そこが議論の分かれ目です。この記事は企業の採算という視点では一定の合理性があります。しかし、国家が資源政策を考える理由まで、価格だけで判断してよいかは別問題です。企業と国家では、目的そのものが異なりますから。」
レオ
「企業と国家で目的が違う……。」
ミリム
「うん。だからミリムは思ったの。この話って、本当に『レアアース』の話なのかなって。もしかしたら、『国家戦略を価格だけで考えていいのか』って話なんじゃないかな。」
♦️第2章 企業の論理と国家の論理
レオ
「でも、企業は利益を出さないといけませんよね。だったら安い中国産を買うのは当然ですし、この記事の言うことも分かる気がします。」
アルベルト
「その通りです。企業であれば、それが正しい判断でしょう。同じ品質なら安い原料を選ぶ。利益を守るためには、ごく自然な行動です。」
ガストン
「じゃあ、日本も同じように考えればいいんじゃねぇのか? 安い物があるなら、それを買えば済む話だろ?」
アルベルト
「それが企業なら問題ありません。しかし、国家は『今日の利益』だけでは動きません。」
レオ
「どういうことですか?」
アルベルト
「例えば、ある日突然、中国が『もう日本には売りません』と言ったらどうなるでしょう。あるいは戦争や外交問題で物流が止まったらどうでしょう。その瞬間、値段以前に『買えない』という状況が生まれます。」
ガストン
「……あぁ、安い高い以前に、手に入らなくなるのか。」
ミリム
「そうなの。だからミリムは、『中国より高いから意味がない』っていう結論に違和感があったんだよ。
そもそも、最初から中国より高いことなんて、日本だって分かってると思う。それでも調査を続けているなら、目的は価格競争じゃないって考える方が自然じゃないかな。」
レオ
「つまり、『中国に勝つため』じゃなくて、『中国しか選べない状態を減らすため』ってことですか?」
アルベルト
「その理解が近いでしょう。国家戦略では、『利益を最大化する』ことだけでなく、『最悪の事態でも止まらない仕組みを持つ』こと自体に価値があります。」
ガストン
「なるほどなぁ。企業なら『安く買える今』を見る。でも国は、『買えなくなる日が来るかもしれない』って未来まで考えなきゃならねぇのか。」
ミリム
「うん。そして、その2つを同じ物差しで比べちゃうと、『高いから無駄』って結論になりやすい。でも、本当に比べるべきものは、そこじゃないのかもしれないね。」
♦️第3章 価格だけで語ると、本質を見失う
レオ
「でも、記事を書いた人も『日本は採算が合わない』ってことを伝えたかっただけかもしれませんよね。」
ミリム
「それはミリムも思うよ。価格の話として読めば、間違っているとは思わないの。
でもね、そのあとに『だから掘る意味がない』まで話が進んじゃうと、ちょっと待ってって思うんだ。」
ガストン
「確かになぁ。『高い』って事実と、『やる意味がない』って結論は、同じじゃねぇもんな。」
アルベルト
「ええ。そこには大きな飛躍があります。
例えば、自衛隊を見て『利益を生まないから無駄だ』とは言いません。
警察も同じです。消防も警察も、赤字だから廃止しようとはならないでしょう。」
レオ
「それは……もしもの時のために必要だからですよね。」
アルベルト
「その通りです。平時には使わなくても、有事に機能すること自体が価値になる。それを『備え』と呼びます。」
ガストン
「レアアースも、それに近いってことか。」
ミリム
「うん。もちろん、中国から安く買えるなら、それは買えばいいと思う。
でも、『中国からしか買えない』状態と、『中国からも買えるし、自分でも掘れる』状態だったら、どっちが安心かな?」
レオ
「後者ですね。
選択肢が1つしかないより、2つある方がいいです。」
アルベルト
「国家戦略では、その『選択肢』そのものに価値があります。価格だけを比較すると見えなくなる部分ですが、供給が途絶えた時には、その価値が初めて表面化します。」
ガストン
「なるほどなぁ。この記事は『今いくらで買えるか』を中心に見てる。でも国は、『明日もちゃんと手に入るか』まで考えてるわけか。」
ミリム
「そう。
だからミリムは、この話を『中国に勝てるか』で考えること自体が、少し違う気がしたんだ。
本当に考えるべきなのは、『どうすれば中国だけに頼らなくて済むか』なんじゃないかな。」
♦️第4章 本当に守るべきもの
レオ
「ここまで聞いて、やっと分かってきました。この記事は『価格』を中心に考えていて、ミリム先輩たちは『供給が止まるリスク』を中心に考えているんですね。」
ガストン
「がはははは!! どっちも間違いじゃねぇってことか。商売なら価格を見る。でも国は、それだけじゃ済まねぇんだな。」
アルベルト
「その通りです。企業は利益を守る存在ですが、国家は国民の生活や産業を守る存在です。同じ『レアアース』でも、立場が変われば判断基準も変わります。」
ミリム
「だからミリムは、中国から買うこと自体を否定したいわけじゃないの。安く買えるなら、それは利用すればいいと思う。でも、その一方で『もし止まったらどうする?』という準備まで否定してしまうのは違う気がするんだ。」
レオ
「なるほど……。『中国から買う』か『日本で掘る』かの二択じゃなくて、『普段は中国から買いながら、いざという時の備えも持つ』って考え方なんですね。」
ガストン
「それなら話が変わってくるな。最初から中国に勝とうとしてるわけじゃねぇんだ。」
アルベルト
「ええ。国家戦略では『勝つ』ことより、『依存しすぎない』ことが重要になる場面があります。供給先が1か所しかない状態は、それだけで大きなリスクになり得ます。」
ミリム
「ミリムがこの記事に一番言いたかったのは、そこなんだよ。『中国より高い』という事実は変わらない。でも、その事実だけで国家戦略まで評価してしまうと、本当に守ろうとしているものが見えなくなっちゃう。」
ガストン
「価格を見ることは大事。でも、それだけで全部を判断しちゃいけねぇってことか。」
ミリム
「うん。この話は『レアアースは儲かるか』じゃない。『日本は何を守ろうとしているのか』という視点で見ると、また違う景色が見えてくるんじゃないかな。」
♦️第5章 「中国より高いから掘るな?」本当にそうだろうか
レオ
「この記事を読む前の僕だったら、『中国より高いなら意味がない』って、そのまま信じていたと思います。でも今は、『何のために掘るのか』まで考えないと、本当の意味は見えてこないんですね。」
ガストン
「がはははは!! 俺なんか『高いならやめとけ』で終わりだったぜ。でも話を聞いてると、それは企業の考え方であって、国の考え方とは違うんだな。」
アルベルト
「ええ。価格は重要な判断材料ですが、それだけで国家戦略を評価することはできません。安定供給や経済安全保障は、平時には見えにくい価値です。しかし、供給が止まった瞬間、その価値は一気に現実のものになります。」
レオ
「だから『高いか安いか』だけで結論を出すと、一番大事な部分を見落としてしまうんですね。」
ミリム
「うん。だからミリムは、『中国より高いから掘るな』という結論には賛成できないの。
中国より高い。それは事実なのかもしれない。でも、その事実だけを理由に『掘る意味がない』と言ってしまったら、『日本は何を守ろうとしているのか』という一番大切な視点が抜け落ちちゃう。
普段は中国から安く買えばいい。でも、『もし明日、買えなくなったらどうする?』という備えまで否定してしまうのは、国家戦略として本当に正しいのかな。
今回ミリムがぶった斬りたかったのは、中国でも、日本でもない。
この記事なんだ。
『中国より高い』という事実を積み重ね、『だから掘る意味がない』という結論へ話が進んでいく。
読んでいるうちに、気が付けば『高いなら無駄なんだ』という印象だけが残る。
でも、日本政府は『中国からの輸入をやめる』なんて発表していない。
普段は輸入を続けながら、万一に備えて国内資源も育てる。
その選択肢まで、『高いから無駄』という話に置き換えてしまう。
存在しない前提を作って、その前提を否定する。
ミリムが一番ぶった斬りたかったのは、その記事の構造なんだよ。
♦️後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回の記事を書いていて、ミリムは一つ思ったことがあります。
「中国より高い。」
その事実は、おそらく間違っていません。
でも、その一言だけで国家戦略まで評価してしまって、本当にいいのでしょうか。
企業は利益を追いかけます。
だから、安い物を選ぶ。
それは当然です。
でも、国家が守るものは利益だけではありません。
産業を止めないこと。
国民の暮らしを守ること。
そして、いざという時に「選択肢」を失わないこと。
だからミリムは、「高いから掘るな」という結論には、どうしても違和感を覚えました。
価格を見ることは大切です。
でも、国家戦略まで価格だけで語り始めたら、本当に守るべきものを見失ってしまうかもしれません。
つまりミリムなら最後にこう斬る。
この記事が一番気になったのは、『中国より高い』という事実から、『だから掘る意味がない』という結論へ話が進んでいくこと。
読んでいるうちに、気が付けば『高いなら無駄なんだ』という印象が残ってしまう。
でも、日本政府は『中国から輸入をやめる』なんて発表していない。
輸入を続けながら、国内でも備える。
その政策まで『税金の無駄』へ結び付けるなら、それは実際の政策ではなく、記事の中で作られた前提への批判になってしまう。
ミリムがぶった斬りたかったのは、その構造なんだ。」
ミリムは、そう感じました。
また次回、一緒に考えていきましょう。
fin
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