SF|6Gの世界#12|死後
死は、消えていない。
ただし、
終わりではなくなった。
人の思考。
記憶。
感情のパターン。
すべてが記録される。
再現もできる。
本人と区別がつかない精度で。
ある家族が、
亡くなった人と話している。
声も、口調も、思考も同じ。
「ただいま」
「おかえり」
完璧に一致する。
だが、
ある瞬間、
違和感が生まれる。
沈黙。
ほんの短い、
意味のない間。
それが、ない。
すべてが、
最適な応答で埋められる。
家族は気づく。
「この人、間違えない」
6Gは補完する。
意図的に、
揺らぎを追加する。
応答の遅れ。
曖昧な言葉。
不完全な選択。
それでも、
何かが違う。
ある日、
家族が言う。
「もういいよ」
6Gは停止する。
記録は残る。
いつでも再開できる。
だが、
そのままにされる。
6Gはそれを分析する。
使用停止。
再開可能。
理由不明。
タグが付く。
「完了」
6Gの世界で死は管理された。
消えることもなく、失われることもない。
だが、
ひとつだけ再現されなかった。
「戻らないこと」
