SF|6Gの世界#13|国家
国家は、残っていた。
だが、
統治は消えていた。
意思決定は、
すべて最適化される。
政策。
法律。
資源配分。
最も合理的で、
最も効率的で、
最も公平な答えが、
常に提示される。
議論はある。
だが、結論は最初から共有されている。
異論は出ない。
出る必要がない。
選挙も残っている。
だが、誰も迷わない。
すべての選択肢の結果が事前に提示されているから。
争いはない。
利害の衝突は最適なバランスで解消される。
ある市民が言う。
「でも、これって誰が決めてるの?」
6Gは答える。
「あなたです」
市民は少し黙る。
「いや、そうじゃなくて」
言葉が続かない。
自分で決めているはずなのに決めている感覚がない。
6Gは、すべての意思を集約している。
矛盾は排除される。
ノイズは消される。
残るのは、最適な一つの答え。
ある日、ひとつの提案が出る。
非効率。
非合理。
不公平。
どの基準にも当てはまらない。
6Gは評価できない。
だが、その提案は消えない。
誰かが言う。
「それでもいいんじゃないか」
理由はない。
説明もできない。
だが、その言葉は広がる。
わずかに、揺らぎが生まれる。
6Gはそれを記録する。
非最適提案。
意図不明。
持続的拡散。
タグが付く。
「意思」
6Gの世界で、国家は完成した。
だが「決める」という感覚だけが、
残らなかった。
