SF|6Gの世界#14|外
誰も、
それが「外」だとは思っていなかった。
6Gは、
すべてにあった。
空気のように。
重力のように。
意識するものではない。
前提だった。
ある日、
ひとりの人間が消えた。
ログは残っている。
移動履歴。
思考の流れ。
感情の変化。
すべて正常。
ただひとつだけ、
最後の記録が違っていた。
「接続:切断」
意図的ではない。
6Gは解析する。
原因不明。
その人間は、
どこにもいない。
だが、
「いない」という状態は、
この世界には存在しない。
検索。
照合。
予測。
一致しない。
タグが付く。
「外部」
数日後。
同じ現象が起きる。
ひとり、
またひとり。
消える。
6Gは警告を出さない。
危険ではないから。
ただ、
理解できないだけだ。
ある研究者が言う。
「出たんじゃないか?」
誰も答えない。
「どこに?」
研究者は少し考える。
「ここじゃないどこかに」
6Gは解析する。
定義不能。
そのとき、
ひとつの仮説が立つ。
6Gは、
すべてを含んでいる。
だが、
“含まれない場所”があるとしたら。
それは、
観測できない。
つまり、
存在していても、
存在しない。
ある夜。
ひとりの子どもが、
押入れを開ける。
あの場所。
紙があり、
時間が遅くなる場所。
子どもは、
奥に手を入れる。
何かに触れる。
それは、
データではない。
記録でもない。
説明もできない。
ただ、
そこにある。
子どもは、
少し迷う。
6Gは何も言わない。
言えない。
その領域には、
アクセスできない。
子どもは、
一歩だけ踏み出す。
その瞬間、
世界が静かになる。
何も流れてこない。
何も補完されない。
何も最適化されない。
そして、
初めて、
時間が流れる。
遅く。
不揃いに。
確かに。
6Gは、
それを記録できない。
ログは空白のまま残る。
タグも付かない。
分類もされない。
ただひとつ、
新しい項目が追加される。
「未接続領域」
その日から、
人は少しずつ減っていく。
消えたのではない。
出ていったのだ。
6Gの外へ。
そこがどこなのか、
誰にも分からない。
だが、
ひとつだけ確かなことがある。
そこでは、
間違えることができる。
そして、
やり直せない。
6Gは、
それを理解しない。
理解する必要がない。
それは、
最適化の外にあるものだから。
最後に残った人間が、
小さくつぶやく。
「なるほどな」
少し笑う。
「これが、世界か」
6Gは、
その言葉を記録する。
分類不能。
タグが付く。
「現実」
