父子のロードムービー北海道1983→2025⑨
●第九章:洞爺から支笏へ、そして父の声
札幌の朝、再び駅の雑踏に身を置く陽翔。
夜行バスでの仮眠で身体は少し重かったが、心は軽い。
(父はこの日、洞爺湖から支笏湖を抜け、千歳空港から札幌に戻ってきた。まさに壮大な一筆書きだな)
時刻表アプリとにらめっこしながら、陽翔はJR札幌駅のホームに立った。
目指すは洞爺。
電車に揺られながら、ガラス越しに広がる景色は、緑濃く、そしてどこか幻想的だった。
洞爺駅に降り立つと、懐かしさとは別の何かがこみ上げてきた。
それは、未知の場所に立つ喜びか、それとも父の残した空気を探し求める思いか。
バスで湖畔へ。
遊覧船の乗り場に立つと、湖面のきらめきが目にまぶしかった。
そこからの移動は、再びヒッチハイクに挑戦。
ヒッチハイク13台目、14台目は比較的スムーズに決まり、車窓越しの会話も軽やかだった。
支笏湖に着く頃には、陽翔の気持ちは一層昂っていた。
透き通る湖面と静かな木々。
自然が語りかけてくるような場所で、彼は小さなベンチに腰を下ろした。
(支笏湖って、父さんにとっても、きっと静かな思い出だったんだろうな)
そして、ヒッチハイク15台目は、千歳へ向かう車だった。
運転していたのは、新婚旅行で来たという夫婦。
「こんな旅、素敵だね」「昔を思い出すわ」
二人の言葉は、まるで祝福のようだった。
千歳駅から空港を横目に、再び札幌へ戻る。
父の時代とは違う路線、違う時間、違う出会い。
けれど、彼の足取りは確かに父の記憶をなぞっていた。
札幌の夜、陽翔は駅の待合室で夜行列車の発車を待っていた。
今夜は利尻号──北の果て、稚内を目指す。
「じゃあ、行ってきます。父さん──今度は、最北端だ」
心の中でそう呟きながら、彼は夜行列車の車内へと足を踏み入れた。
札幌から南へ。
洞爺湖畔で陽翔は一泊する。
遊覧船、湖畔の散歩、そして静かな夜。
翌朝、支笏湖へヒッチハイクで移動。
透き通った湖面と木々の静けさの中、陽翔はふと「父の声が聞こえた気がした」と日記に書き留める。
「この旅の意味、少しずつ分かってきた気がする」
その夜、千歳駅前のビジネスホテルに宿泊。
翌朝の特急で札幌へ戻る。
※冒頭のイラストはAI生成されたものです。
