100年後の脚注02
『都市を予言した舞台プログラム』
A Theatre Program That Predicted a City
1926年の帝国劇場。
その日の舞台のプログラムが一冊残っていた。
普通の冊子だった。
出演者。
舞台装置。
場面転換。
どこにでもある劇場の案内。
ただ、一つだけ奇妙なページがあった。
舞台の配置図。
俳優の動線。
照明の位置。
観客席の視線。
それらを示す小さな線と記号。
ある日、都市計画を研究している学生が
その図面を見て言った。
「これ、街の図面に見えますね。」
中心には広場。
そこから放射状に伸びる道。
人が集まり
人が流れ
また分散していく。
劇場の舞台は人の流れを設計する場所。
都市もまた人の流れを設計する場所。
舞台美術家は未来の都市を予言していたわけではない。
ただ、人が集まる場所の形を考えていただけだった。
しかし、その形は
広場。
通り。
視線。
すべて都市と同じだった。
都市とは巨大な舞台なのかもしれない。
私たちは毎日そこに立ち、決まっていない脚本を演じている。
1926年の舞台図面は都市の未来を描いていたのではない。
ただ、人間の動きを正直に描いていただけだった。
だから100年後の街にも同じ形が現れたのかもしれない。
