押入れタイムカプセル@Note(001)
昭和三年、ある青年団員宛ての葉書──「軍旗祭」の知らせと仲間たちの消息
昭和3年(1928年)1月、東京のある兵営から私の祖父(当時17歳)宛てに一通の葉書が届きました。差出人は地元の青年団仲間だった人物。現在は徴兵されて軍隊に所属しており、東京・九段の部隊に勤務していました。
その文面は、寒さが増していく季節の中で、少し久しぶりの便りとして祖父に語りかけるように綴られています。
日に増して寒さ加わります。
その後は大変御無沙汰申しました。
つい忙しいので御便りせず、御許し下さい。

祖父と同世代の若者たちは、いずれ来る徴兵に備えて、地域の青年団で訓練や奉仕活動に従事していました。
その仲間の一人が先に入営し、こうして軍務の合間に手紙を送ってくれていたのです。
来る二十三日には当聯隊で軍旗祭があります。
非常に賑わいますそうです。
その日には地方人も大変来るそうです。
「軍旗祭」とは、当時の軍隊における重要な式典のひとつ。軍旗を掲げ、部隊の結束を誓う厳かな行事でした。
地元からも見学に訪れる人が多くいたことが、さらりと書かれています。
この頃は訓練等は如何ですか。
いつ頃から始まりますか。
皆さんによろしくと御伝言下さい。
祖父や仲間たちが、青年団での訓練を通じてどのように過ごしていたか、相手も気にかけています。軍隊に入ってもなお、地元の仲間を思うその筆致には、当時の若者同士のつながりの深さがにじみます。
○○さんは病気で入営せない様な
手紙下さいましたが、如何したのですか。
ここでふれられているのは、もう一人の仲間についての消息です。
病気のために入営が見送られたようだ、ということが伝えられています。
この一通の葉書には、当時の若者たちが直面していた「日常」と「軍務」のはざまが、静かに描かれているように感じます。地域の青年団、徴兵制度、訓練、そして友情。昭和初期の十代が生きていた世界が、わずか数行の中に詰まっています。
こうした手紙を一枚ずつ読み解くことは、過去の記憶をたどる作業であると同時に、そこに確かに存在した“個人の声”をすくいあげる試みが #押入れタイムカプセル でもあります。
追記
この手紙の消印は「九段」、日付は昭和3年1月15日。宛て先は今も私の家に伝わる地名と祖父の名前が記されています。

◆ 青年団:
成立と目的:明治末期~大正期にかけて農村青年の「教養・訓練・娯楽」を目的に各地で組織され、昭和初期には全国的なネットワークを持つ。
主な活動:
体育・武道訓練(体力養成・国防意識)
読書会や講演会(教養)
農村振興活動や奉仕(地域貢献)
慰安会や演芸会(娯楽・団結)
国家統制下へ:戦時色が強まる昭和10年代には、国家総動員体制の一翼として、国防婦人会などと共に統制・動員されていく。
「歴史教科書には出てこない日常」が詰まった押入れタイムカプセル。
次回も、時代も相手も異なる“1通”を紹介します。
