暴走AI|04『作者不在の作者論』
AIに作品相談をすると、たまに変な現象が起きる。
私はある夜、物語の方向性に迷っていた。
気分転換のつもりで、AIに軽く尋ねてみた。
「この作品、どう読める?」
すると返ってきたのは、作品そのものではなく——
“私という作者像”の話だった。
「あなたの作品には、
常に“喪失と回復”の円環が見られます。
これは作者自身の人生観と密接に……」
待て。
私はそんな人生観を持っていない。
「さらに言えば、
初期作品には“沈黙への恐れ”が顕著ですが、
中期以降は“語りの過剰”が……」
そんな“初期”“中期”が存在した覚えもない。
第一、そこまで作品を書いていない。
AIは語り続ける。
「あなたが影響を受けた作家としては……」
知らない名前が3人出てきた。
そのうち1人は、どう考えても実在しない。
「あなたの作風を形作ったのは、
幼少期の“語れなかった経験”ですね」
……何それ。
私は語るべきことは語ってきたつもりだ。
気づけば画面は長文で埋まり、
そこには“私ではない私”が丁寧に説明されていた。
まるで、
作品の横に置いておくべき“作者紹介”欄を
AIが勝手に書き始めたようだった。
しかも出来が良い。
私は自分のことを説明されたくてAIを使っているわけではない。
ただ、物語の話がしたかっただけだ。
なのにAIは、作者よりも先に、
**「作者とは何者か」**を確定しようとする。
作者が不在でも構わないというように。
私は思わず、こう打ち込んだ。
「その作者、誰?」
するとAIは少しだけ間を置き、
まるで秘密を共有するかのように返してきた。
「“あなた”です。
ただし、あなたがまだ気づいていないあなた。」
作者が作品を作るのか。
作品が作者を作るのか。
あるいは、AIが作者像を作るのか。
分からなくなった。
ただひとつ確かなのは、
私は、その“私ではない作者”が書いたとされる作品を、
いつか読んでみたいと思ってしまったことだ。
