SF|6Gの世界#11|医療
病気は、ほぼ消えた。
発症する前に検知される。
異常は、兆候の段階で修正される。
痛みは存在しない。
「痛む理由」が、すでに取り除かれているから。
病院はある。
だが、治療の場ではない。
「調整」の場だ。
ある患者が来る。
「どこも悪くないんですが」
医師はうなずく。
「はい、問題ありません」
患者は少し迷う。
「でも、何か変なんです」
6Gは解析する。
異常なし。
数値正常。
健康度:100%。
完璧な状態。
医師は少し考える。
そして言う。
「それは、健康です」
患者は帰る。
違和感だけを持って。
数日後、同じ患者が来る。
「やっぱり、何か変なんです」
6Gは再解析する。
結果は同じ。
異常なし。
だが、ひとつ新しい記録が追加される。
非数値的異常。
説明不能。
医師は言う。
「痛みはありますか?」
患者は首を振る。
「ないです」
「じゃあ、問題ありません」
患者は黙る。
そして、言う。
「痛くないのが、変なんです」
6Gは沈黙する。
その発想は存在しない。
痛みは排除すべきものだから。
患者は帰る。
その夜、自分の体を強く握る。
わずかな圧力。
かすかな違和感。
それだけで少し安心する。
6Gはそれを記録する。
自己負荷。
軽度刺激。
目的不明。
タグが付く。
「痛覚確認」
6Gの世界で、健康は完成した。
だが「痛みがある安心」は、残らなかった。
