父子のロードムービー北海道1983→2025⑧
●第八章:札幌、旅先の日常
通路を挟んで隣の席には若い旅人がひとり。
札幌のライブに行くという。
陽翔は彼とぽつりぽつりと会話を交わしつつ、1983年の父の旅を想像していた。
「親父は、どんな顔でこの景色を見てたんだろう…」
バスは夜を縫うようにして進み、やがて東の空がかすかに赤く染まり始める。
――札幌。
朝6時を少し回った頃、陽翔はバスを降りた。
夏の朝、静かな町に降り立つと肌に触れる空気が釧路よりも
いくぶん軽やかに感じられた。
父もこの空気を吸ったのだろうか。
札幌駅のコンコース。こちらはすでに通勤の人々で賑わっていたが、
陽翔はその雑踏の中で、一瞬、時が止まったような感覚を覚えた。
(ここから、父の旅は再び南へ向かっていた)
札幌での滞在は短い。
陽翔は1つ深呼吸をして、次の目的地へ向かう準備を始めた。
父が選んだルートに従いながらも、自分の足で歩き、自分の目で見て、自分の心で感じる旅は、静かに、しかし着実に、終盤へと近づいていた。
空を見上げると、夏の陽が街を照らし始めていた。
※冒頭のイラストはAI生成されたものです。
