『サイバーSML戦争』第1話
〈変容するクロスオーバー地帯〉
― マックのドリンクサイズS、M、Lでケンカになる話ではない
本作は実在の人物・団体・作品とは一切の関係がありません。
登場人物は文化的アイコンを元にしたフィクションです。
出演:
S:スチュアート・ゴードン(1947-2020)映画監督
M:マイケル・ベイ(1965-)映画監督
L:ルー・リード(1942-2013)ミュージシャン
D:デヴィッド・ボウイ(1946-2017)ミュージシャン
(※ジギー・スターダストの"中の人")
J:ジェームズ・キャメロン(1954-)映画監督
映画学会の裏ホールで開かれた
「巨大ロボット表現の未来」国際パネル。
誰もが眠気と期待を半分ずつ抱いて座っていた——
開幕3秒後までは。
◆ ACT1:監督戦争
**S(スチュアート・ゴードン)**がマイクを引き寄せる。
「巨大ロボを“実在の質感”で撮ったのは私だ。
影も重力も、手で作り上げたんだ。」
**M(マイケル・ベイ)**はサングラス越しに笑う。
「いやいや、巨大ロボを“社会現象”にしたのはこっちでしょ。
爆発の数、観客動員、全部桁違いだよ?」
観客のざわめきは、いつもの学会の温度を超えていた。
しかし誰も予想しない方向に話は飛ぶ。
◆ ACT2:ロックが乱入する(説明はない)
会場後方の扉が荒々しく開き、
黒い革ジャンの影が歩み出る。
**L(ルー・リード)**だ。
「おい。トランスフォーマーってタイトル、
俺が先に使ってんだろ。30年以上前に。
無断使用じゃねえか。」
会場はざわつく。
“ロック vs 映画 vs 巨大ロボ”という、
現代文化を三枚に下ろすような対立軸が突然発生した。
S:
「……いや、でも、あなたの“トランスフォーマー”ってロボットは――」
L:
「出なくていいんだよ。俺が変えるのは精神の方だ。」
これで十分にカオスなのに、
舞台の暗転はまだ続く。
◆ ACT3:衛星からの声(比喩なのか物理現象なのか不明)
スピーカーがハウリングを起こし、
天井に紫のホログラムが浮かんだ。
語りかける声は、
地球の辞書で形容しにくいトーンだった。
D(ジギー・スターダスト):
「――で、君たち。
俺が地球で“衛星の孤独”を歌わせてもらったとき、
バックでハモった“あの人”の名前くらい
そっちの文化史にも残しておいてほしいんだよね。」
M:
「待って、あのコーラス……まさか……?」
D(肩をすくめる):
「そう、“あの声”だよ。
君たちが巨大ロボに夢中になってる頃、
俺は彼の横でハーモニーの軌道を回ってた。
名前は言わないけど、みんな知ってるでしょ?」
Lが急に誇らしげになる。
L:
「そういうことだ。変容ってのは、常に複数の声で起こる。」
S:
「……この学会、本当に巨大ロボの話だったよね?」
◆ ACT4:メタが境界を溶かす
その瞬間、会議室の空気が変わる。
誰かがつぶやく。
「ていうか、いま誰が“物語を語ってる”んだ……?」
観客のノートPCはなぜか自動で記録を始め、
スクリーンには字幕のようなテロップが浮かぶ。
“この物語は実在の人物・作品・音楽・映画を
無造作につなぎあわせながら、
文化がどのように相互変容するかを描いたものです。”
Mがぼそっと言う。
「……メタって怖いね。」
Dが微笑む。
「メタは重力だよ。
文化の層を引き寄せ、接続し、時々ロボットを落とす。」
◆ ACT5:そして誰かが怒鳴り込むのが様式美
会場に新しいメールが届く。
送り主:
ジェームズ・キャメロン
件名:
「巨大ロボは海から始めるべきだと思います。」
S:
「……もう全員来るね、これ。」
M:
「ていうか、この学会……規模が無限じゃない?」
L:
「気にすんな。文化ってのは、いつだって勝手に広がる。」
D(消えながら):
「じゃ、続きはまた別の衛星軌道で。」
光の粒が消え、再び静寂。
しかしその静寂すら、どこか音楽的だった。
◆ 結語:
巨大ロボは映画のものでもロックのものでも宇宙人のものでもない。
共有された“変容”の産物だ。
そして読んだあなたももう変容している。
知らないうちに、SML戦争に参加してしまったのだ。
