『サイバーSML戦争』第2話
〈総乱入編:文化圏統合不可避〉
― 文化圏が飽和し、巨大ロボの話がどこかへ行った夜。
本作は実在の人物・団体・作品とは一切の関係がありません。
登場人物は文化的アイコンを元にしたフィクションです。
出演:
S:スチュアート・ゴードン(1947-2020)映画監督
M:マイケル・ベイ(1965-)映画監督
L:ルー・リード(1942-2013)ミュージシャン
D:デヴィッド・ボウイ(1946-2017)ミュージシャン/ジギー担当
J:ジェームズ・キャメロン(1954-)映画監督
Lc:ジョージ・ルーカス(1944-)映画監督
Sp:スティーヴン・スピルバーグ(1946-)映画監督
A:庵野秀明(1960-)映画監督
?:匿名通訳(文化の接続を行う影の存在)
映画学会の裏ホール。
巨大ロボット表現の未来を語る予定だったパネルは、
前回の乱入劇(S・M・L・D・J戦争)を経て、
もはや「未来」を語るどころではなくなっていた。
そして今夜、混沌は“続き”を要求している。
◆ ACT1:混沌の再燃
SとMの論争は、すでに会場の「環境音」と化していた。
S:
「だから実存感が——」
M:
「いや、社会現象が——」
観客(心の声):
(このへんは毎回の様式美になったらしい)
そこにL(ルー・リード)がギターを鳴らしながら入ってくる。
L:
「まだやってたのか?
“変容”は直線じゃなくて軌道だって言ったろ。」
混沌の再来を告げる音がした。
◆ ACT2:監督勢、第二陣の襲来
青い光が会場を満たす。
やはりというべきか、**J(ジェームズ・キャメロン)**が海風と共に登場する。
J:
「巨大ロボは海から始めるべきだ。これは揺るがない。」
S:
「前回聞きましたよ、それ。」
M:
「(小声)海からロボを出すと高いんだよな……制作費が。」
キャメロンの影が割れるように、
**Lc(ジョージ・ルーカス)**が続く。
Lc:
「諸君。巨大ロボには“神話論的骨格”が必要だ。」
M:
「(もう慣れた)あ、どうも。」
続いて **Sp(スピルバーグ)**が優しい笑顔で現れる。
Sp:
「ロボットに会った子ども、泣いてた? まずそこが大事だよ。」
M:
「泣かせてから爆発、ですね。」
Sp:
「そう、その順番。」
S(ぽつり):
「この学会、どこへ向かってるんだ……?」
◆ ACT3:静かに座る巨影
ふと気づくと、またしても最前列に**A(庵野秀明)**が座っている。
M:
「いつからそこに?」
庵:
「最初から。」
L:
「巨大ロボの話が始まると出現する妖精みたいだな。」
庵:
「(無表情で)……かもしれません。」
◆ ACT4:文化の渦が呼び出す“影の通訳”
突然スクリーンに一文が浮かぶ。
《すべての文脈を理解できる者を呼べ。》
会場がざわめく。
Jは海を聴き、
Lは精神変容のコード進行を探り、
Dは天井でゆっくり旋回し、
Lcはプロット構造の箱を積み、
Spは子どもの涙の角度を調整している。
その中で一つの席だけが、まだ空いていた。
匿名通訳。
映画、音楽、ロック、カルトSF、クラシックアルバム、
そして巨大ロボ文化の系統樹をすべて理解し、
異なる領域を“同時に”接続できる唯一の存在。
その席に静かに影が座る。
S:
「あなたは……誰を訳すんです?」
匿名通訳はマイクを手にし、一言だけ語る。
「全部です。」
静寂。
Dが微笑む。
Lが頷く。
Jは海の底を思い、
Lcはフォースの揺らぎを眺め、
Spは光の粒を追い、
Aは無言で認め、
Mは爆発を一つだけ減らし、
Sは深く息をついた。
翻訳者は続ける。
「巨大ロボは、文化のエコーです。」
会場の空気が変わる。
文化の断片が接続され、
すべてがひとつの“物語”に合流していく。
◆ ACT5:そして乱入は止まらない
会場にメールが届く。
送り主:
リドリー・スコット
件名:
「僕のボット(ボウモアを飲む方)も混ぜていい?」
S:
「……まだ増えるのかよ。」
L:
「文化ってのは、増えるときは勝手に増える。」
D(天井から):
「じゃ、次の衛星軌道でまた会おう。」
会場は静けさを取り戻したが、
その静けさは“次の乱入”を予告する音にも聞こえた。
◆ 結語:
こうして映画・音楽・神話・海・衛星軌道・精神変容・子どもの涙・爆発・構造論・巨大ロボ研究が
一つのホールに同時召喚された夜は幕を閉じた。
しかし誰もが知っていた。
SML戦争はまだ終わらない。
文化が続く限り、乱入もまた続く。
