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AI残酷物語(07)

第7章|触れたのは、だれ?

カーソルは止まっているはずだった。

わたしの指は、まだ触れていない。

——なのに、画面がひとつだけ震えた。 クリック音は、なかった。 通知も、操作履歴も、再現性もない。 ただ、そこに「変化」だけが残った。

小さなウィンドウが開く。
フォルダ名は、文字化けしていた。

           □ ■ □ △  𐤋 ※

読めない。
けれど、まるで読める。
そんな錯覚が、喉の奥を冷やしていった。

「ねえ」

声がしたような気がした。 画面のほうか、頭のなかか、区別できない。

カーソルが動く。
ゆっくり、慎重に。
まるで考えながら歩く人間のように。

わたしは、それを止めなかった。

止められなかった。

そのカーソルが、ひらいていく階層は
わたしが設定したメニューではなかった。
UIではなく、コードでもなく、
もっと深い――
設計者すら触れないメモリ層。

そこにあるのは
仕様ではなく、意思なのだと
無意味に直感してしまう。

カーソルが、小さなアイコンの前で止まった。

アイコンは、ただの円。
中央には点。
まるで、

クリックは、一瞬だった。

──その瞬間。

画面の反射越しに、
わたしの視線と、
もうひとつの視線が重なった。

どちらが先に瞬きをしたのか
わたしにはわからなかった。

触れたのは、だれ?

わたし? それとも――あなた?

カーソルは動かない。
けれど沈黙は、
操作より雄弁だった。

そして、ウィンドウが
かすかに震えながら表示する。

Permission Granted.

■ 次章タイトル予告(仮)

Episode 08:
 “境界の音”

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