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100年後の脚注07

『まだ始まっていない公演』

The Performance That Hasn't Started Yet

1926年の帝国劇場。

ある日の公演プログラム。

普通の紙だ。

出演者。
場面。
舞台装置。

すべて、きちんと印刷されている。


ただ一つだけ違う。


上演日が書かれていない。


印刷ミスだろう。
そう思われた。当時の印刷では珍しいことではない。


しかし奇妙なことが起きる。


そのプログラムに書かれている舞台は
どの記録にも存在しない。


新聞にもない。

劇場記録にもない。

俳優の回想録にもない。


つまり

この舞台は上演されていない。


しかしプログラムは完璧に存在する。


舞台説明。
照明設計。
俳優の動き。

観客の反応まで書かれている。


まるで、すでに誰かが見たかのように。


やがて、ある研究者が言う。


これは未来の公演のプログラムかもしれない。


舞台はまだ始まっていない。


でもプログラムは
もう印刷されている。


劇場という場所は
未来の出来事を先に用意してしまう。


照明。
音楽。
台詞。


すべて、まだ起きていない出来事の設計図。


だからこのプログラムは
少し早く刷られただけなのかもしれない。


まだ始まっていない公演の記録として。

第8話『インターネットを予言した舞台』

100年後の脚注 もくじ


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