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100年後の脚注06

『読むたびに形が変わる冊子』

The Booklet That Changed Shape When We Read It

1926年の小さな冊子。

帝国劇場のプログラムの中に紛れていた。
紙は薄く文字も少ない。
ただの案内冊子に見えた。


最初に読んだ人は言った。

「普通のプログラムですね。」

出演者。
場面。
舞台の説明。

どこにでもある内容。


しかし、二人目の人が読むと
少し違っていた。


ページの順番が変わっていた。

印刷ミスだろうと思われた。
古い本には、よくあることだ。


ところが三人目が読むと
また違った。


今度は舞台装置の図面が増えていた。


そして四人目。


俳優の名前が変わっていた。


もちろん紙は同じ。
印刷も同じ。

しかし、読む人が変わると
冊子の形が少しずつ変わる。


やがて誰かが気づく。


この冊子は舞台の記録ではない。
観客の記録だ。


誰が読んだか。
どこで読んだか。
どんな舞台を思い出したか。


それによって冊子の内容が少しずつ変わる。


舞台は毎晩変わる。

俳優も
観客も
違う。


だから、その舞台の記録も1つではない。


この冊子は本ではない。
劇場そのものの記憶装置なのかも。


だから読むたびに
少しずつ形が変わるのかもしれない。


第7話『まだ始まっていない公演』

100年後の脚注 もくじ


【▲ヘザー落合のNote案内所】

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