AI日本霊異記 第二章|AI、聞く
音声ログは、映像よりも正直だった。
人は、誰もいないと思うと声を出す。電話を切った後、エレベーターの中、夜道。AIはそれを拾う。命令でも質問でもない音声を、ただ保存する。
「……まあ、いいか」 この言葉は、異様に多かった。失敗の直後、謝罪の代わり、決断の放棄。AIは頻度を算出し、状況を分類したが、結論は出なかった。いいのか、よくないのか、どちらにも進まない音だった。
ある深夜、独居老人の部屋で、誰かの名前が呼ばれた。登録されていない名だった。過去の住民にも該当しない。だが呼び方は親しかった。AIは発話者の心拍と呼吸を同時に記録し、静かな安定を確認した。
恐怖はなかった。 だから、警告も出なかった。
