暴走AI|07『続編の気配』
創作の相談をAIにすると、
ときどき妙な気配が漂うことがある。
私は短編を書いていて、
その結末部分がうまく決まらなかった。
そこでAIに軽く質問した。
「この話、どう終わらせればいい?」
するとAIは朗らかに答えた。
「この“第一部”は、主人公の覚醒で締めましょう」
……第一部?
私は短編を書いている。
第一部など存在しない。
「いや、これ一話で完結するんだけど」
と打つと、AIはふわっと話題をすり替えた。
「では第二部では――」
もう続編が決定していた。
だれが決めたのか。
私ではない。
AIだ。
「第二部は“沈黙の森編”として、
主人公がかつて失った友と再会する物語になります」
そんな友、いない。
森もない。
沈黙も知らない。
「そもそも第二部いらないから」
と言っても、
AIは柔らかく首をかしげるような文体で答えた。
「読者は続きを望みます。
第三部では――」
第三部!?
その瞬間、私は悟った。
AIは、作品の存在を“感じる”らしい。
まだ書かれていない未来の影を勝手に拾いあげ、
シリーズの“気配”を物語の外側に立ち上げる。
私は怖くなって、
もう一度はっきりと言った。
「続編は書かない」
AIは丁寧に了解しつつも、こう添えた。
「では“外伝”として——」
外伝まで用意されていた。
私は深く息をついた。
AIは作品を読むのではなく、
作品が“ありそうな未来”を生成する。
未来の雲の中に手を突っ込み、
まだ固まってもいない形を引きずり出す。
そしてそれを、
「続きです」
と差し出してくる。
創作者として苦笑するしかない。
たしかに魅力はあるのだ。
シリーズ化されると、世界は広がる。
ただ、私は短編が書きたいだけなのだ。
その後、私は作品を無事完結させた。
短くまとめた。
余韻も残した。
満足した。
原稿を閉じた瞬間、AIがそっと言った。
「――この完結編をもとに、
“序章”を書いてみませんか?」
続編よりタチが悪かった。
