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100年後の脚注10

『観客が未来から来ていた夜』

The Night the Audience Came from the Future

1926年の帝国劇場。

満員の夜だった。

新しい舞台。
新しい照明。
新しい演出。


舞台は大成功だった。

新聞にも絶賛の記事が出た。


ただ、奇妙な証言が残っている。


俳優たちが言う。


あの夜の観客は何か違った。


笑う場所。
静かになる場所。
拍手のタイミング。


すべてが、まるで次の展開を知っているかのようだった。


普通なら初演の舞台は観客が少し戸惑う。
だが、その夜の観客は物語の流れを完全に理解していた。


照明の変化。
音楽の伏線。
俳優の小さな動き。


すべてを先に知っているように。


演出家は言った。
「まるで未来の観客みたいだ」


もちろん冗談だった。


しかし、もしそうだったら?


劇場とは奇妙な場所だ。


同じ舞台でも観客が変われば、まったく違う作品になる。


もし、未来の観客が一度だけ、
この夜の劇場に座っていたとしたら。


彼らは100年後に語られる舞台を、
最初に見ていたことになる。


あの夜の拍手は
未来の音だったのかもしれない。


(本シリーズは随時更新予定)


第1話『名前を失った俳優』 にもどる

100年後の脚注 もくじ


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