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2025年11月の実質+2.9%を、消費回復と読んではいけない【月刊販促設計 2026年11月号 第1回】

このシリーズについて

「月刊販促設計」は、総務省統計局が毎月発表する家計調査データと気象庁の気象データを活用し、3か月先の販促計画を立案するための実践的な情報を提供するシリーズです。

こんにちは。ミタカ販促設計ラボ室長のサタケです。

先日公開した2025年11月号の検証記事で、シリーズの方向性を明確にしました。「予測を当てる」ことから「判断の枠組を提供する」ことへ、軸を移します。天候や大型支出の動向は3か月前に確実には予測できません。しかし天候が変化したときの判断基準は提供できます。想定外が起きたときの考え方は共有できます。この考え方を今号にも適用します。

加えて、5月号の検証記事で確認した3点も引き続き視点として持ちます。「気温を判断軸に据える」「反動の前提条件を確認する」「天候で説明できる動きとできない動きを切り分ける」。今号でもこの3点を分析の柱にします。

今号の対象は前年(2025年11月)のデータです。

まず結論から言います。

2025年11月の消費支出は実質2.9%の増加でした。2か月ぶりの実質増加という数字は、一見すると「10月の落ち込みから消費が回復した月」に見えます。しかし中身を確認すると、回復ではなく「自動車購入という1費目の急反発」と「気温低下による防寒物への実需」が同時に起きた月でした。しかも勤労者世帯の実収入は実質2.2%減で、収入は落ちていました。

このシリーズで使っているのは前年同月の家計調査データです。2025年11月に何が起きたかを確認することと、2026年11月にどう設計するかは別の話です。この前提を維持したまま進めます。


2025年11月に何が起きたか

全体像

2025年11月の消費支出は314,242円で、前年同月比で実質2.9%の増加、名目6.3%の増加でした。前月比(季節調整値)は実質6.2%の増加で、2025年10月の3.5%減から大きく反発しました。2か月ぶりの実質増加という結果でした。

一方で、勤労者世帯の実収入は519,304円で、実質2.2%の減少でした。可処分所得も実質2.5%の減少です。10月の実質▲0.1%からさらに落ち込んでいます。平均消費性向は82.3%で、前年同月(74.9%)より7.4ポイント高い水準でした。2025年10月の67.9%と比較すると14.4ポイントの急上昇です。

2025年11月は「収入は落ちたが、消費性向を大きく高めて支出した月」という構造でした。

何が動いたか

消費支出全体の実質2.9%増を最も大きく引き上げたのは自動車等関係費で、寄与度は+2.80ポイントでした。うち自動車等購入が単体で寄与度+2.77を占めます。前年比では+148.1%という数字で、10月の▲25.3%から急反発しています。

家具・家事用品は10.6%の増加で、2か月ぶりの実質増加でした。中でも家庭用耐久財が32.7%増、寝具類が64.0%増と大きく伸びています。冷蔵庫が寄与度+0.17を示しています。

被服及び履物は7.5%の増加で、2か月連続の実質増加でした。10月に急寒で反転した動きが、11月も継続した形です。

食料は0.9%の増加で、6か月ぶりの実質増加でした。5か月連続で続いていた食料の減少が11月にわずかに反転しました。

保健医療は2.6%の増加で、6か月連続の実質増加です。定着したトレンドとして機能し続けています。

教育は10.2%の増加で、2か月連続の実質増加でした。

何が止まったか

その他の消費支出は7.0%の減少で、2か月連続の実質減少でした。中でも仕送り金の減少が大きく、寄与度▲0.63を占めます。交際費も実質減少しており、贈与金が寄与度▲0.54です。

住居は9.1%の減少で、5か月連続の実質減少が続きました。光熱・水道は1.2%の減少で、3か月連続の実質減少でした。通信は11月も減少が続いており、寄与度▲0.51です。

2025年11月は「実需」と「準備消費」の2つの動きが同時に起きた月

2025年11月の伸びを整理すると、性質の異なる2つの動きが同時に起きていました。

実需の動き:気温低下に反応した消費

被服+7.5%(2か月連続)と家具・家事用品+10.6%は、気温低下という外部条件に反応した実需として読み取れます。特に家具・家事用品の寝具類+64.0%という数字は、寒さの本格化に向けた寝具の買い替え・買い足しが起きた可能性を示しています。冷蔵庫の+17%寄与も、年末に向けた家電の買い替えが動き始めた動きとして読めます。

気象データを見ると、2025年11月は北・東・西日本で気温は平年並、上旬に急速に発達した低気圧で北日本を中心に大荒れ、中旬は西高東低の冬型気圧配置で青森県酸ケ湯では11月として多い記録的な積雪(76cm)、下旬は移動性高気圧で東・西日本で晴天が続きました。「北で寒く、東西で穏やか」という地域差と、上旬から中旬にかけての寒気の影響があった月でした。10月下旬の急寒に続く形で、11月にも防寒需要が持続したと考えられます。

準備消費の動き:年末・大型支出

自動車購入+148.1%と教育+10.2%は、実需とは別の性質を持つ動きです。年末に向けた大型支出、あるいは年内の駆け込み消費として整理できる部分があると見られます。特に自動車購入の+148.1%という数字は、10月の▲25.3%という急落からの反動と、年末・ボーナス時期を控えた大型購入判断が重なった可能性があります。

11月号の検証記事で「準備消費」と「実需消費」という2つの枠組で11月を整理できると書きました。この2つの綱引きが2025年11月の全体像を作っていたと読み取れます。

「消費回復」という読み方が外れる理由

2025年11月を「消費が回復した月」と読むと、設計の方向を誤ります。

回復したのは「消費全体」ではありません。実需としての防寒需要(被服・家具家事)と、準備消費としての自動車購入という、性質の異なる2つの動きが同時に起きた結果として全体の+2.9%が形成されました。

5月号検証記事で「反動の前提条件を確認する」と書きました。自動車購入の+148.1%という急反発は、10月の▲25.3%という急落を前提として理解する必要があります。加えて、前年(2024年)11月の自動車購入は寄与度▲0.28ポイントとやや弱い数字でした。前年のベースが低かったところに、10月の落ち込みからの回復と年末の駆け込み需要が重なった可能性があります。

一方、勤労者世帯の実収入は実質2.2%の減少で、可処分所得も減っています。「収入が伸びていないのに消費が伸びた」という構造は持続する動きではありません。翌月以降に消費性向が再び戻る可能性を含んだ、一時的な高さと読むのが自然です。

家計調査全体の増減率だけを見て、11月を「消費が回復した月」と判断することは、2025年11月には特に危険な読み方でした。

業態別に見る2025年11月

「月全体の数字と自業態の実態は別物」という視点は10月号から引き継いだ論点です。11月は10月とは逆方向(プラス)に、この視点が改めて当てはまる月でした。業態ごとに、この月をどう読むかを整理します。

スーパーの場合

食料は6か月ぶりの実質増加でしたが、+0.9%と小幅な増加にとどまりました。5か月続いた減少傾向がわずかに反転した程度で、日常消費の節約傾向が大きく解消したとは読めません。品目別に見ると、菓子類・調理食品・果物は増加した一方、酒類・油脂・調味料など基礎的な費目は減少や横ばいでした。

食料関連売場にとって11月は「消費全体が回復した月」ではなく「節約傾向がわずかに緩んだ月」として扱うのが実態に近いと考えられます。この判断軸を持っていれば、11月の+0.9%という数字を根拠に販促予算を積み増す判断は避けられるのではないでしょうか。11月の食料の動きに便乗して仕入れを増やすより、12月の年末需要への準備を計画的に進める姿勢が有効と考えられます。

ドラッグストアの場合

保健医療は6か月連続の実質増加で、11月も+2.6%と定着した動きが続きました。医薬品・保健医療用品などが安定的に動いており、変動性の高い費目ではなく構造的なトレンドとして扱える費目です。この安定性は業態にとって強みです。

一方、諸雑費の中身は婚礼関係費や寄付金など変動性の高い項目が伸びており、日常的な化粧品需要そのものが伸びているとは限りません。定着カテゴリーである保健医療を軸にしつつ、月全体の増減率に引きずられないという判断軸が11月には求められた月でした。

ホームセンター・家具家電系の場合

家具・家事用品の+10.6%と寝具類の+64.0%という数字は、この業態にとって注目すべき動きです。ただし前年(2024年11月)の家具・家事用品は▲10.6%と大きく落ちていました。前年の低い比較ベースが今年の高い伸び率を作った可能性があります。「前年比+10%だから需要が拡大している」ではなく「前年が低かったから比較上プラスに出た」という読み方が判断軸として必要です。

冷蔵庫や寝具など特定品目の動きは、家電量販店・寝具専門店・大型家具店といった専門業態にとっての機会に見えますが、この動きが定着したトレンドか一時的な反動かを判断するには複数月の連続確認が必要と考えられます。

共通する視点

3業態に共通するのは、「月全体の+2.9%という数字」と「自業態が関係する費目の動き」を分けて読む必要があるという点です。自動車購入の急反発は多くの業態にとって直接の関係を持ちません。にもかかわらず、月全体の数字を根拠に「11月は良かった」と判断すると、自業態の実態と乖離した判断につながります。

判断の枠組として「実需(気温連動)」と「準備消費(大型支出・年末駆け込み)」の2つを分けて持ち、自業態がどちらの動きに関係するかを整理してから月の数字を読むことが、11月には特に有効な判断軸です。

気象との関係:地域差と月内変動が大きい月

2025年11月の気象データを整理します。

気温は北・東・西日本で平年並、沖縄・奄美で高かったという構造でした。上旬には急速に発達した低気圧の影響で、北日本を中心に11月として記録的な大雨がありました。中旬は西高東低の冬型気圧配置となり、青森県酸ケ湯では積雪差日合計が76cmとなり、1979年の統計開始以降11月として多い記録を更新しました。下旬は移動性高気圧に覆われて東・西日本で晴天が続き、東日本日本海側の日照時間平年比145%と、11月下旬として1961年以降1位の多照でした。

「北で寒く、東西で穏やか」という地域差と、「上旬荒天→中旬冬型→下旬穏やか」という月内変動が同時に起きた月でした。

被服の+7.5%増と寝具類の+64.0%という実需の動きは、この寒気と地域の寒さに反応した可能性が高い費目です。ただし気温が平年並みだった東・西日本と、寒気の影響を受けた北日本では、地域によって動きの強さが異なった可能性があります。全国平均の数字は、地域差を平均化した後の結果として読む必要があります。

2025年11月の構造をまとめると

消費支出全体は実質2.9%の増加でしたが、その大部分は自動車購入の急反発(前年比+148.1%)という1費目で説明できました。日常消費の領域では家具・家事用品と被服がプラスに動きましたが、これは気温低下に反応した実需の動きです。食料の増加は0.9%と小幅にとどまり、その他の消費支出は減少しました。勤労者世帯の実収入は実質2.2%減で、収入が落ちる中で消費性向を高めた月でした。実需(気温連動)と準備消費(大型支出)という性質の異なる2つの動きが同時に起きた構造で、月全体の数字だけを見ると全体像を見誤りやすい月でした。これが2025年11月の実態として前年データから確認できたことです。

次回予告

第2回では「11月の冬支度、月初の印象で決めていないか」として、2025年11月の気象データを詳しく分析します。地域差と月内変動が大きかった前年11月の構造を踏まえ、2026年11月の防寒商材・冬物衣料の展開タイミングをどう判断するかという思考軸を整理します。

プロフィール

室長について
佐竹 昭治|株式会社サタケプランニングオフィス 代表取締役

小売・サービス業の現場で、生活者視点を軸にした販促戦略を提案。マーケティングプランナーとしての経験(20年以上)×データ分析×AI活用による「ハイブリッド販促設計」で、「伝わる販促」「来店してもらえる仕掛け」づくりをサポート中。

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サタケ|ミタカ販促設計ラボ 販促のヒント、伝わっていれば何よりです。 チップは今後の調査・記事制作の資金として大切に使わせていただきます。──室長・サタケ

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